第290話 逆襲、復讐、下剋上!
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「いでえ、いでえよおっ。こうなったら、必殺の爪技で……」
「読めているといった。お前は〝鬼神具〟を使うのではなく、〝鬼神具〟に使われている。必殺技とはこういうものだっ。いくぞ、ロケット拳骨!」
呉陸喜が扮する黒騎士は、孟利蛾超の爪を左手で払いながら、機械仕掛けの右腕――〝鬼神具・茨木童子の腕――を分離して飛ばし、腐れ外道の胸元で赤く輝く黒い書物をパンチでビリビリに引き裂いて破壊した。
「てめえ、よくもっ。おれの〝黒き魔術書〟を壊したな。ぶっころしてやるっ。ギョ、ギョエエエっ!?」
蛾鳥は吠え猛るも、すでにコウモリの翼も、〝鬼神具・黒き魔術書〟もない。
黒騎士のロケット拳骨が直撃した悪漢は、戦場だった車両の屋根から真っ逆さまに転落……。しかも、地面に叩きつけられたところに、〝SAINTS〟の弓兵がホバーベースを狙った火矢の雨が突き刺さり、火だるまになってしまう。
「こ、この孟利蛾超様が、こんなところで死ぬのかっ。ギョエエエっ……」
「冒険者ならば、あの高さで転落したくらいでは死なないが、運がなかったな。いや、味方にすら恨まれていたのか? 悪いがお前の場合、可哀想だとは思わない」
黒騎士にとって、冒険者パーティ〝G・O〟大切な、故郷のようなものだ。家族のような思い入れのある団員達から財貨と自由を奪った悪鬼を許すつもりは、毛頭なかった。
(私たち兄妹の後見人だった栄彦さんが、三縞家の勇者パーティ〝C・H・O〟にパーティを乗り換えたのは、私とリウを守るためだったのか……。いや過去に思い馳せるのはまた今度だ。四散した団員達を救い出すためにも、今は未来へ、前へ進むとき!)
黒騎士は再度索敵したが、もう空を飛ぶイレギュラーはいない。
そして戦いは、〝G・C・H・O〟が圧倒的に優勢だ。
「おのれ、奴隷が、雑草が、おれたちは勇者パーティだぞ!? お前達は土に這いつくばっているのがお似合いなのにっ!!」
「……踏みにじられた犠牲者であればこそ、私も含めた〝G・C・H・O〟の参加者は、腐敗した冒険者組合や八大勇者パーティを許せないのだ。テロリストに堕落したといえ、自分達を見下していた怨敵に報復できるのだから、団員のモチベーションも上がるというものか!」
改めて黒騎士の操る大盾と、〝SAINTS〟の精鋭、天翼隊が放つ矢が、空中で熾烈な激突を繰り広げる下で――。
「うおおおっ、ジャンプからのインメルマンターン!」
「よくやったでち、特訓の甲斐があったでち」
「「バイクで空中回転移動するなんて、さすがです大将!!」」
(凄いけど、あの縦回転からの反転空中移動は、もはやバイクの機動ではないのでは?)
超絶的なバイク? テクニックを披露する総大将の石貫満勒を先頭に、〝G・C・H・O〟の団員達は、蒸気バイクのフロントガードについたブレードで、弓兵達がこもる見張り台の足場を削り取ってゆく。
「俺様達は一蓮托生、やってやろうぜ」
「「そうだ。オレ達は大将と共に、お前達にやられた分、きっちり返してやる!」」
かくして、復讐は完遂される。
バイク部隊は、丘陵に何十と並ぶ見張り台を積み木細工のように破壊――。
「「おいバカやめろ、ぐわあああっ」」
柿色のユニフォームと翼を描かれた腕章をみにつけた〝天翼隊〟の隊員達を、石や岩の荒地へと叩きつけ、六辻家と〝SAINTS〟に虐げられていた冒険者達の憤怒を思い知らせた。
「第一の難所〝弓兵地獄〟、突破成功でち!」
あとがき
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