第287話 黒騎士の新武装、登場!
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(石貫満勒には破壊力があり、強靭性もあったが、機動性が足りなかった。その欠点を蒸気バイクが補っているのか。それに我が友、トータがレジスタンスを率いた時もそうだったと聞くが、総大将が敢えて――特別な武器を、〝鬼神具〟を使わずに――先陣を切ることで一体感を刺激できるのか!)
呉陸喜が扮する黒騎士は、冒険者パーティ〝G・C・H・O〟を束ねる石貫満勒が得た新たな力に感心したが……。
攻略目的である要塞、〝三連蛇城〟に続く見張り台を守る〝SAINTS〟の冒険者達もまた、満勒のことを脅威と認識したらしい。
「〝G・C・H・O〟の代表は、石貫満勒だって?」
「聞いたことがあるぞ。幹部の六辻久蔵に買われた奴隷風情が、ちょっと力を得たからと偉そうに。あんな無茶な運転をする奴は無理でも、無駄に飾った取り巻きのバイクや、デカいバスならやれる。殺せええ!」
〝天翼隊〟の冒険者達は、満勒に罵声を浴びせながら矢をつがえ、後続の映画や漫画を参考にデザインを改造した蒸気バイク隊と、巨大なバスに似たホバーベースを狙って矢を斉射した。
「ヒャハ? みんな、避けられるかっ」
「「総大将じゃないんですから、あんな運転は無理ですよーっ。うわあああ、やられる!?」」
超絶テクニックで先頭を走る満勒はともかく、他のバイク隊員は揃って悲鳴をあげたものの……。
「心配無用、ここは任せろ。満勒大将、もらった新装備を使うぞ」
黒騎士はホバーベースの屋根上で、高さ約三メートル、幅約八〇センチメートルの巨大盾で矢を払いつつ、下部にとりつけられた花火筒に似たパーツに火をつけた。
「この盾に使われた素材の半分は強化プラスチックだが、もう半分は柳心紺に託された〝砂丘〟と同じ日緋色金を改良した素材でできている。だから、こういうこともできる。〝飛行大盾〟発射!」
黒騎士は、満勒の要請でオウモが作った新兵器――空飛ぶ盾を発射し、迫り来る矢を迎撃した。
「「空飛ぶ盾だと? こんなもので我らの必勝の策が破られるのか?」」
異界迷宮カクリヨの第八階層、〝残火の洞窟〟で踊る火柱を裂いて飛ぶ巨大な盾は、桃太の戦友である柳に託された試作品から更に発展させた飛行型自律兵装だ。
黒騎士の念ずるままに大柄な鉄板は高速で飛翔し、大量の見張り台から放たれた膨大な矢と衝突し、友軍に当たる前に空中で蹴散らした。
「トータとゲームセンターで遊んだ、シューティングゲームを思い出すな!」
「ありがとうよ、黒騎士」
「頼りになるでち!」
「さすがは謎のエース、格好いい!」
黒騎士の活躍を見て、満勒や〝G・C・H・O〟の面々が歓声をあげるが、見張り台にいる柿色のユニフォームを着て、翼の描かれた腕章をつけた敵軍、天翼隊の兵士達は気に食わないらしい。
「どこから買ったのか知らないが、武器に頼ってイキがるとはっ」
「珍走団みたいなバイクに乗っている連中、ヘルメットで隠しているが、鬼術で透視してみればどいつもこいつも借金で身売りした奴隷どもじゃないか」
「SAINTS〟に救われた恩も忘れ、身の丈に合わない玩具を得てのぼせたか!?」
更なる暴言を吐いて、バイク隊の怒りという火種に油を注いだ。
「何が恩だクソッタレ!」
「自分自身で味わったから、知っているぞ。一〇年前、英雄、獅子央焔が亡くなった後、六辻家と〝SAINTS〟、七罪家と〝K・A・N〟が、児童救済、社会福祉の看板を掲げて何をやったか!」
「冒険者の遺族、子供に支給される国からの手当をかすめとり、代わりに暴利で借金を背負わせた腐れ外道ども。お前達に恨みはあっても恩はない!」
あとがき
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