第286話 第一の難所〝弓兵地獄〟
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「野郎どもっ。伝説を創ろうじゃないか。俺様についてこい!」
「「いやっほうううう!」」
鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒と彼が率いる冒険者パーティ〝|G・C・H・O《グレート・カオティック・ヒーローズ・オリジン》〟のバイク隊は、日本政府と冒険者組合へ宣戦布告した〝SAINTS〟が誇る鉄壁の防衛陣に対し、真っ直ぐに切り込んだ。
(満勒、お前の力を見せてみろ。もうすぐ丘陵、最初の見張り台と接触するぞ)
出雲桃太の親友、呉陸喜が扮する黒騎士は、バイク隊の後方を走る巨大車両、ホバーベースの天井屋根で巨大な盾を構え、遠視機能の仕込まれた視覚素子で、洞窟から出てきた獲物を待ち受けるように、なだらかな丘陵のふもとに鈴なりに立つ塔のごとき見張り台をにらんだ。
「侵入者発見、これより迎撃する。雑魚パーティめ、この装備と腕章が目に入らないか?」
「そうだ、我々こそは天翼隊。日本国の支配者となるべき偉大な勇者パーティ〝SAINTS〟の精鋭部隊だぞ!」
黒騎士が見つけた見張り台では、当主代行を務める六辻剛浚の親衛隊である身分を示す、柿色のユニフォームと、翼が描かれた腕章を巻いた〝斥候〟二人が立っていて、罵声と共に火炎や氷結、電撃を帯びた矢を射た。
「「うおおお、死ね死ね死ね!」」
そして、見張り台はひとつではない。後方に並ぶ、ハリネズミのごとき塔から次々と矢が放たれる。
「黙れ! 銀行強盗に警察署襲撃だなんて、ただの犯罪者だろうがっ。こんなもの、それ、ほっ、やっ」
されど、満勒はバイクのアクセルとブレーキ、ハンドルを巧みに操って……。三六〇度回転するようなUターンで火矢を回避、鋭角的なジグザグ走行で氷矢をすり抜け、最後に後輪を使ったウィリー走行からのジャンプで雷矢を飛び越えた。
「ヒャッハァッ。お前達みたいな悪党が、勇者パーティを名乗るんじゃない。ブレード展開!」
満勒が巧みなバイクアクションで矢の雨を回避しつつ、胴体部に設置されたレバーを蹴ると、大ぶりの刃二枚が前方のフロントガードを包み込むように出現した。
「出雲桃太が使った杭打ち器もカッコいいでちが、やはり刃物。おっきな刃はよりチャーミングなのでち!」
満勒とムラサマの駆る蒸気バイクは、テロリスト団体〝SAINTS〟の〝斥候〟が射た矢を置き去りに、最も近い見張り台を足場ごと破壊する。
「「うわああ、バカなああ」」
見張り台にのっていた〝斥候〟二人は、悲鳴をあげながら残骸に埋もれて逝った。
「〝|G・C・H・O《グレート・カオティック・ヒーローズ・オリジン》〟の皆! 俺様と共に、テロリスト団体〝SAINTS〟をボコボコにしてやろうぜ!」
「うおおおっ、我らが大将がやってみせたぞ!」
「ここから先の丘は〝三連蛇城〟を守る第一の難所、〝弓兵地獄〟でち。腹をくくるでちよ!」
「ムラサマちゃんかわいいよー」
満勒とムラサマは、火柱が踊る異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火の洞窟〟に轟けとばかりに高らかに叫び、共鳴する仲間達とともに鬨の声をあげる。
(石貫満勒には破壊力があり、強靭性もあったが、機動性が足りなかった。その欠点を蒸気バイクが補っているのか。そして我が友、トータがレジスタンスを率いた時もそうだったと聞くが、総大将が敢えて特別な武器――〝鬼神具〟――を使わずに先陣を切ることで、一体感を刺激できるのか!)
あとがき
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