第285話 G・C・H・Oの初陣
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西暦二〇X二年八月一〇日の明け方。
冒険者パーティ〝|G・C・H・O《グレート・カオティック・ヒーローズ・オリジン》〟は、日本政府へのクーデターを起こした元勇者パーティ、六辻家と〝SAINTS〟、七罪家と〝K・A・N〟討伐のため、異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火の洞窟〟にある巨大軍事要塞、〝三連蛇城へ向かった。
(オウモさんから、トータも新しい冒険者パーティを作ると聞いた。その時間を稼ぐ為にも、初戦は勝ってみせる!)
呉陸喜が扮する黒騎士は、〝|G・C・H・O《グレート・カオティック・ヒーローズ・オリジン》〟のスポンサーである異世界クマ国の過激派団体、〝前進同盟〟から譲り受けた巨大車両ホバーベース……。
鬼の角を連想させる一対の巨大煙突がついた、幅二メートル、車高四メートル、長さ一五メートルに達する巨大車両の天井に座り、新造された兵装である大型の盾を構えて、数百メートルの高さと幅がある巨大な洞窟……炎に照らされた岩と土の狭間を走る団員達を見守っていた。
「ヒャッハァ、俺様達の初陣だあ」
総大将である鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒を先頭に、〝G・C・H・O〟の四文字が刻まれた旗を差した、五〇台の蒸気バイク軍団が、ガスと火柱が揺れる灼熱の洞窟をホバーベースを誘導するように走ってゆく。
「よ、よ、よっしゃあああっ……」
「や、や、やるぞお……」
しかしながら、蒸気鎧を着た黒騎士が、兜に付いた隻眼の視覚素子で見渡す限り、冒険者達の大半は顔色が青く、怯えているように見えた。
(初めての実戦だから、やはり思うようには体も心も動かないか)
黒騎士は、〝C・H・O〟の新人時代に空回った自身の経験も踏まえて、二輪で土煙をあげる新人冒険者達が心配になった。
満勒の肩に乗った〝鬼神具〟、日本人形めいた幼子に化けた妖刀ムラサマも、同様の不安を抱いたらしい。
「みんな。あたち達はこの洞窟を出たあと、テロリスト団体〝SAINTS〟のキョテン、〝三連蛇城〟のひとつ、〝禁虎館〟を落とすでち」
「「ういいいっす……」」
〝G・C・H・O〟が目指す、〝三連蛇城〟とは、
本城〝獰蛇城〟
北の支城、〝豹威館〟
南の支城、〝禁虎館〟
という三つの城塞を中心に、無数の見張り台と小砦が配置された城塞群だ。
「あたち達はこの少ない人数で……
見張り台が張り巡らされた丘陵〝弓兵地獄〟。
岩壁に挟まれた砦がならぶ〝要塞地獄〟。
空飛ぶ軍団が待つ〝堕天使の楽園〟。
この三つの難所を突破して、〝禁虎館〟に辿り着かないといけないでち。その為には、生き残るのがサイユーセン。決して命をソマツにしてはいけないでち。生き残れば、あとはあたちと満勒にまかせるでちよっ」
「いいえ、おれたちもがんばります」
「自分で志願したんだ。六辻なんかに負けるものか」
「伝説の妖刀、露払いは任せてください!」
幼い容姿のムラサマが忠告することで、〝G・C・H・O〟の冒険者達の緊張を解くことができたらしい。青ざめていた団員達の顔に生気が戻った。
「野郎どもっ。伝説を創ろうじゃないか。俺様についてこい!」
「「いやっほうううう!」」
満勒と彼が率いるバイク隊は洞窟を出て、日本政府と冒険者組合へ宣戦布告した〝SAINTS〟が誇る鉄壁の防衛陣に対し、真っ直ぐに切り込んだ。
あとがき
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