第284話 石貫満勒、G・C・H・Oを組織する
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「なるほどカムロさん出張ってくると、私達はその瞬間に逃亡が必須となるのだから、随時移動できるホバーベースは必要不可欠だな」
出雲桃太の親友、呉陸喜の扮する黒騎士が口添えすると、新パーティ代表が内定した鉛色髪の巨漢青年、石貫満勒は味方ができたとばかりに喜んだ。
「さすが、黒騎士。我が心の友よ! わかってくれるかっ」
(いや、私にとって心の友はトータだけなので、そう言われても困る)
黒騎士は、「なにが欲しい?」という問いかけは――オウモからのテストではないか――と、身振り手振りで伝えようとしたが、満勒とムラサマは振ってわいたプレゼントに夢中で伝わらなかった。
「ヒャハっ……。蒸気バイク、格好いいから、あれで部隊をつくりたい。五〇台くらい貰えないか?」
「いいとも。蒸気バイクに乗った機動部隊、新冒険者パーティのいい宣伝になるネ。遠慮は無用ヨ。テロリストになった挙句、滅亡した〝S・E・I〟の販路をごっそりいただいたから、吾輩達〝前進同盟〟は日本で一番金持ちなのネ!」
スポンサーである髭メガネをかけ紫色の作務衣を着た女性、オウモの言葉に気をよくしたのか、満勒は黒騎士の方を見て、ぐっと親指を立てた。
「つ、次は、命を助けられた黒騎士にお礼をしたいから、あいつに新装備を用意してくれ」
「いいとも。ギュインギュインに手を入れた傑作をプレゼントしよう」
「満勒大将、ありがとう」
黒騎士は、満勒の要望が意外にも適切だったことと、返礼に気をきかせてくれたことに、実はたいした男かも知れないと見直した。
いずれ親友であり、好敵手である出雲桃太と競り合う以上、新装備はありがたかった。
「ヒャッハァ! 良いってことよ。よーし、ガンガン頼むぞ。オウモさん、セグンダ師匠に、水着鎧を着る時は、上着も羽織るよう言ってくれ。落ち着かないからな!」
が、調子に乗りすぎた満勒がうっかり失言した途端、般若めいた表情のセグンダに殺気を飛ばされて、場の空気が凍りついた。
「……おい、バカ弟子。なにか言ったか?」
「満勒のアホー。言っていいことと悪いことがあるでち」
「すまん。その願いは、吾輩の力を超えている」
黒騎士も唐突な雰囲気の変化に肝を冷やした。
さすがに、どんな願いでも叶うわけではないようだ。
「じ、じゃあ、オウモさん、最後に新パーティの名前、いや、略称を決めさせてくれてもいいかっ」
「何か妙案でもあるのかい?」
「ヒャッハァ! 出雲桃太を倒すなら〝C・H・O〟がいい。いや、それだけじゃつまらねえ。グレートのGをつけたい!」
(略称といえ、〝C・H・O〟を名乗るのか。まあ、これも試練か)
黒騎士は満勒の最後の願いに、若干複雑な感慨を覚えたが、むしろ過去を乗り越えるチャンスと受け入れた。
(トータ。私たちは先に行く。すぐに追いついてくるだろうが、今は私達の活躍を見ていてくれ)
月は明けて、西暦二〇X二年八月。
六辻剛浚が当主代行を務める勇者パーティ〝SAINTS〟と、七罪業夢が支配する、〝K・A・N〟は、警察の捜査により軍事クーデターを目論んでいることが明らかになり――。
羽田空港の襲撃未遂、青函トンネルの爆破未遂、東京スカイタワーへのテロ未遂などの容疑で、大量の逮捕者を出した。
「日本政府ごときが、生意気じゃあ」
「我々こそがこの国の支配者ぞ!」
八月七日。
既に計画が漏れているにも関わらず、勇者パーティ〝SAINTS〟と〝K・A・N〟は、日本政府と冒険者組合に対し宣戦を布告し、クーデターを強行。逆恨みをはらさんとばかりに全国の警察署を襲撃し、資金不足を解消しようと銀行や信用金庫に強盗に入る。
再び日本国を震撼させた八大勇者パーティの暴挙に対し、日本国を守るために真っ先に防戦に務め、名をあげた新規パーティがあった。
代表者の名は石貫満勒。新パーティの名を、〝|G・C・H・O《グレート・カオティック・ヒーローズ・オリジン》〟 という。
あとがき
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