第279話 嗚呼、孺子ハ共ニ謀ルニ足ラズ
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桃太の親友、呉陸喜こと黒騎士は、もしも自分が最初から戦場に参加できたなら、出雲桃太とどう戦っただろうかと埒もないことを考えて、胸がワクワクと高鳴っていることに勘づいた。
(そうか。私は、トータと共に戦うのも、敵として刃を交えるのも、どちらも楽しんでいるのか)
黒騎士が己が願いを自覚した時、不意にオウモの懐から、カシャンという乾いた音が響いた。
「北方にあった軍事独裁国家が、新型兵器実験の失敗で〝異界迷宮カクリヨ〟へ続く扉を開いて半世紀以上。地球は八岐大蛇が振りまく〝鬼の力〟の悪影響で、政治腐敗や悪政、暴政が蔓延している。
日本でいえば、一〇年前、偽の遺言状で首相に上り詰めた弘農楊駿と、悪徳官僚の黒山犬斗があやつる〝勇者党〟が記憶に新しいだろう。
吾輩たち、〝前進同盟〟は、地球で亡びた国の民と、クマ国の反政府活動家が集まった組織であるがゆえ、そういった政権に抗う勢力を積極的に支援してきた」
オウモはホワイトボードの前で黒い墨で書き込みながら、紫色の作務衣の内側から、ガラスプレートに入った新しい写真をとりだした。
「そして、これまでは南アメリカ大陸やアフリカ大陸で、おおいに歓迎されてきた。だから、日本においても、革命を志す六辻家と七罪家に助力することで、腰の据わらない日本政府と冒険者組合を打倒し、より望ましい政権を創れるのではないか――そう期待した」
黒騎士達、ホバーベースの会議室に集まった面々は、オウモに賛同を示して頷いた。
彼らもまた、「日本政府と冒険者組合では、今後の危機を乗り越えられない」と確信していたからだ。
「しかし、いざ協力関係になって詳細を掴んでみれば、クーデター勢力には失望しかなかった。皆、これらの写真をみてくれ」
オウモは異界迷宮第八階層〝残火の洞窟〟で収穫される、花火模様の西瓜と、灰色の土瓶に入ったトウモロコシ茶が並ぶテーブルに、写真の入ったガラスプレートを投げ出した。
「六辻剛浚は、自分の思うままになる影武者を立てていることをいいことに、〝SAINTS〟を己が派閥で牛耳って、殺人に誘拐、強盗とやりたい放題だ。
そして、吾輩たちと協力関係にある、一葉朱蘭と奥羽亜大からもタレコミがあったが、七罪業夢もまた、クーデター資金を集めるために大規模な薬物密売や、人身売買を繰り返してきたらしい。反政府活動だから、多少のヤンチャは目を瞑るが、これでは民意など得られるものか」
黒騎士達が身を乗り出して覗き込むと、地上で警察が撮影したらしい天然色の写真と、異界迷宮カクリヨ内で銀板を用いたモノクロ写真が混ざっていたものの、いずれも六辻家、七罪家の非道な犯罪が明白に写っていた。
「すでに官憲の捜査も入った以上、隠し通すのも無理だろう。
改めて宣言しよう。吾輩達、〝前進同盟〟の目的は、協力してくれる地球避難民の国を再興することと、クマ国にとっても怨敵たる八岐大蛇を討伐すること、この二つだ。
『嗚呼、孺子ハ共ニ謀ルニ足ラズ』――とは、古代、ユーラシア大陸の東部で覇王と呼ばれた男、項羽の短慮に失望した彼の参謀、范増が言い残した言葉と聞くが――、
吾輩達にとっての六辻家と〝SAINTS〟、七罪家と〝K・A・N〟がまさにそれだ。彼らはあまりに無思慮で組むに値しない。
これは順番の問題だ。日本政府と冒険者組合を倒すのに変わりはないが、先に偽りだらけの自称〝革命家〟どもをぶっ潰す!」
あとがき
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