第268話 重なる手
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「さすがに研修生だけで新パーティ結成は法律上、難しいので、〝N・A・G・A〟所属の冒険者から、志願者を募りましょう」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太が新しい冒険者パーティ設立を決めるや――。
勇者パーティ〝N・A・G・Aの代表、五馬碩志は率先して助力を申し出た。
「先の戦いで焔学園二年一組と共闘した幸保商二さん――。
桃太さんと縁のある呉陸羽さん――。
彼女の親戚である呉栄彦さん――。
ら、多くのメンバーが名乗り出ることでしょう。一か月後には連絡員を送るので、御学友の説得をお願いします」
「ありがとう。助かるよ」
桃太と碩志は、がっちり握手を交わした。
「シャシャシャ。オレも六辻家と〝SAINTS〟、七罪家と〝K・A・N〟には、一〇年前に殺されかけた恨みがあるからな。一泡吹かせたいから、相棒に力を貸すぜ。とはいえ、孝恵のおっちゃんはギリギリ信頼できるが、バックには日本政府がいるから気をつけろよ。八大勇者パーティを解体した後、返す刀で背後から斬られちゃ、たまったものじゃない」
桃太の相棒であり、碩志の兄たる金髪少年、五馬乂は冷静に忠告しつつも、握手の上に手のひらをかぶせる。
「乂の言う通りね。黒山犬斗ほど酷くなくても、日本国と日本国民の為でなく、私利私欲の為にのみ動く政治家や官僚だって存在するわ。ワタシは、〝鬼の力〟で歪んでゆくこの国を糺したかった。桃太君ならきっと、ワタシにはできなかった未来が作れるはず。協力するわ」
かつて日本国に対してクーデターを引き起こした、三縞家と〝C・H・O 〟の元当主であり、〝鬼の力〟の影響で、猫耳と猫目に変化した少女、三縞凛音も、更に手をのせた。
「確かに利権をむさぼる者もいますが、〝日本国を維持したい〟政府や官僚と、〝日本国を破壊して欲望を満たそうとする〟勇者パーティなら、まだ前者の方が交渉できる分マシでしょう。
桃太くん、お姉さんも貴方と一緒に頑張ります。まずは、レジスタンスの元メンバーに秘密裏に連絡しましょうか」
更に、幼い頃から天才冒険者として知られ、桃太と共にレジスタンスを率いて戦った焔学園二年一組の担任教師、矢上遥花が赤いリボンで束ねた栗色の髪をゆらしながら参加を表明し、手を重ねる。
「サメー、紗雨は桃太おにーさんに着いていくって決めたから、もちろん新パーティにも参加するサメエ」
最後に、白いジンベエザメの着ぐるみを被った銀髪碧眼の少女、建速紗雨が小さな手を一番上にちょこんとのせた。
「祖平ちゃんや、柳ちゃん、林魚君、関中君、羅生君、……六辻詠さんもきっと協力してくれるサメー」
「みんな、ありがとう。これなら新しい冒険者パーティだって作れそうだ」
桃太がぶちあげた新冒険者パーティ設立計画は、まだ朧げながらも現実になろうとしていた。
あとがき
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