第267話 桃太が生み出した希望
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「八大勇者パーティが二年一組の仲間達に手出しをさせないよう、クラスメイトはパーティメンバーになってもらうのさ」
「アメイジング! 研修生がバラバラなら狙えたとしても、全員が所属する集団が相手となれば、簡単に手出しできなくなるってことか、色ボケているようで、ちゃんと考えているじゃねえか」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太が説明すると、彼の相棒たる金髪の少年、五馬乂も、メリットとデメリットを天秤にかけて納得した。
「ぼくも乂くんと同じことを心配していたんだな。だからこそ、四鳴家と〝S・E・I 〟との決戦の後、桃太君と焔学園二年一組には、異界迷宮カクリヨへ留まって貰ったんだけど……。桃太君が冒険者パーティを作るというならば、話は変わるんだな。冒険者組合を代表して、キミ達に出来る限りの助力を惜しまないんだな」
「そう。冒険者組合が後ろ盾になってくれるのなら、政治的なあれこれも、お金と資材の問題も解決ね。元冒険者パーティ代表として口を挟むつもりだったけど、桃太君も意外に将来のことを考えていたのね」
冒険者組合代表の獅子央孝恵はもちろん、桃太と一度は刃を交えた勇者パーティ〝C・H・O 〟の代表であった、猫耳の生えた和服少女、三縞凛音も太鼓判を押した。
「サメエ。新しい冒険者パーティを作るなんてびっくりサメエ。でも、桃太おにーさんは、本当に前から考えていたサメエ?」
白いジンベエザメの着ぐるみから顔を出した銀髪碧眼の少女、建速紗雨だけは首を傾げていたが、桃太はポーカーフェイスで誤魔化した。
「おーい、相棒。目が泳いでいるぞ」
乂がめざとくツッコミを入れたが、桃太は親指ひとつ立ててニヤリと笑った。道が開けそうで、胸のすく気分だったからだ。
「俺は、新しい冒険者パーティをつくる。だから、みんなどうか協力して欲しい」
桃太が改めて新冒険者パーティの設立を宣言すると――。
「いやあ、ぼくの方からお願いしたいくらいなんだな。ありがとう! 日本国を二度も救った桃太君が新パーティをつくり、冒険者組合に味方してしてくれるという情報だけで、日和見を決め込んでいた他の冒険者パーティも態度を変えるだろう。多くの戦力参加が見込めるんだ、な」
孝恵校長は、携帯端末から歓喜と感謝の声を響かせた。
「機械が使えないはずの異界迷宮で、いかなる手段で撮影されたかは不明ですが、〝神鳴鬼ケラウノス〟や〝八岐大蛇・第四の首〟と戦った時の映像が拡散さたことで、焔学園二年一組の生徒達は凄腕として評判になっています。
桃太さんが彼らを率いて、孝恵代表と共に戦ってくださるのなら、クーデターに瀕した日本国を照らす希望の光となるでしょう。ボク自身も百万の援軍を得た心地だ。五馬家は全面的に協力します」
また乂の弟で、八大勇者パーティのひとつ、〝N・A・G・A〟の代表である、五馬碩志もガッツポーズした。
「とはいえ、さすがに研修生だけで新パーティ結成は法律上、難しいので、〝N・A・G・A〟所属の冒険者から、志願者を募りましょう」
あとがき
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