第266話 桃太、新パーティ結成を志す
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「なあ、みんな。俺が焔学園二年一組をもとに、新しい冒険者パーティを設立するというのはどうかな?」
西暦二〇X二年七月一二日の夜。
額に十字傷を刻まれた少年、出雲」いずも)桃太が出した提案は、混沌とした盤面を揺るがす、驚天動地の一手だった。
(俺達の未来は、俺達の手で掴む!)
桃太は、四鳴啓介が率いた〝S・E・I 〟との戦いを乗り越えて、学んだことがあった。
他の誰かに望まぬ未来を強いられるのならば、自らの手で切り開くしかない。
「俺達が、これまで八大勇者パーティに振り回されてきたのは、ただの研修生だったからだ。元勇者パーティ〝C・H・O 〟と戦った時のレジスタンスみたいに、対抗できる組織を作れば良い」
そして桃太の決意表明は、「その手があったか」と、その場にいる全員に、目の玉が飛び出るほどの衝撃を与えていた。
「その発想はなかったんだな、素晴らしい!」
冒険者組合代表である獅子央孝恵は、桃太の決意を聞いて、携帯端末から天幕の中に響きわたるほどの声で快哉をあげた。
「ま、待ってください、孝恵代表。六辻家と〝SAINTS〟、七罪家と〝K・A・N〟は、たとえ日本政府への反乱、クーデターを目論んでいるとしても、五〇年分の歴史をもつ八大勇者パーティであることに変わりありません。桃太さんが新しい冒険者パーティを作ったとしても、対抗する為には莫大な功績と、優秀な人材が必要ですよっ」
「碩志君。桃太君には、それだけの功績があるんじゃないかな? 彼の周囲には既に傑物が揃っているし、日本中に鳴り響くほどの知名度があれば、多くの味方を増やせるだろう」
「……ええ、功績も知名度も、十分にありますね! 乂兄さんをはじめ元勇者パーティの代表当主が複数人いますし、焔学園二年一組には〝S・E・I 〟の精鋭部隊と互角に戦った実績がありました!」
黒い癖毛の少年、五馬碩志は面食らって上司の孝恵に異議を申し立てるも、すぐに撤回した。
「三縞家と〝C・H・O 〟のクーデターを鎮めて、空間干渉兵器〝千曳の岩〟の空爆を終わらせたのも――。
四鳴家と〝S・E・I 〟が、〝神鳴鬼ケラウノス〟で引き起こした電気異常による大規模事故を解決したのも――。
他の誰でもない桃太くんです。お姉さんは全面的に協力しますよ!」
栗色の髪を赤いリボンで結んだ女教師、矢上遥花もとびあがり、桜色の浴衣に包まれた豊満な胸の中へ再び桃太を抱き寄せた。
「おい、リボン女、と、調子乗り弟……。いや、遥花先生も碩志も、早まるんじゃないぜ。相棒、わかっているのか? さっき碩志が焔学園二年一組について色々言っていたが、地上へ戻った時、クラスメイトが人質にとられることだって考えられるんだぞ?」
桃太は遥花の柔らかな感触にうっとりと溺れつつも、このままでは窒息しかねないので、名残を惜しみながら離れ、元勇者パーティ代表の五馬乂に向き直った。
「ぷはぁっ。逆だよ、乂。二年一組の仲間達に八大勇者パーティから手出しをされないよう、クラスメイトはパーティメンバーになってもらうのさ」
「アメイジング! 研修生がバラバラなら狙えたとしても、全員が所属する集団が相手となれば、連中も簡単に手出しできなくなるってことか、色ボケているようで、ちゃんと考えているじゃねえか」
あとがき
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