第261話 携帯型〝通神器〟と、隠れていた参加者
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「碩志君、日本が危機に瀕していることはよくわかった。だから俺は、勇者パーティ〝SAINTS〟と〝K・A・N〟のクーデターを止めたい」
出雲桃太は、左手で額に刻まれた十字傷に触れながら、右手を固く拳を握りしめた。
(まずい流れだ。でもここで見過ごしちゃあ、リッキーを失った三縞家と〝C・H・O〟との戦いや、リウちゃんが傷つけられた四鳴家と〝S・E・I 〟との戦いと、何も変わらないじゃないか)
桃太はもう受身にはならないと、決めたのだ。
血が流れる前にやれることをやる、と。
「わかりました。乂兄さんが計画書を押さえたことで、警察に捜査をお願いできます。勇者パーティ〝SAINTS〟と〝K・A・N〟も叩けばほこりが出るはず、先手をとることも可能でしょう。そして、桃太さんがそこまで覚悟を決められているなら、もう隠す必要はないでしょう……」
〝SAINTS〟と〝K・A・N〟以外に現存する、もう一つの勇者パーティ〝N・A・G・A〟の代表、五馬碩志は、桃太の表情を見て口元を引き締めると……、黒い浴衣の帯紐に結わえた巾着袋から、黄金色に輝くビー玉大のボールというストラップがくっついた携帯端末を取り出した。
「サメっ? その携帯ストラップは、ジイチャンがサメ映画を上映するために、あちこちの村へ配った宝珠サメー!?」
「オーマイガッ、碩志。カムロが作った〝神通力バッテリー〟なんてどこから手に入れたんだ。それはクマ国内でしか手に入らないはずだぜ?」
金色のボール付きストラップに覚えがあったのか、桃太の隣に座っていたジンベエザメの着ぐるみをかぶる銀髪碧眼の少女、建速紗雨と、碩志の正面であぐらをかいていた黄色い浴衣を着た金髪少年、五馬乂は顔色を変えて飛び上がる。
(え、サメ映画上映の為に配る宝珠とか、神通力のバッテリーって、なに?)
桃太は耳慣れない単語に首を傾げ、まるで事態を把握できなかったものの……。
「ふうん、そう。この会議には、隠れていた参加者がいたんだ」
白い花柄をあしらった浴衣に、青い帯を巻いた少女、三縞凛音は、白い毛に包まれた獣耳をぴんとたて、赤い猫目を細めて、携帯端末をにらみつけていた。
「異界の中で機械を動かすための、クマ国由来の宝珠を惜しげもなく使い、勇者パーティ〝N・A・G・A〟の代表である五馬碩志くんに命令できる者がすれはただ一人だけ。……孝恵校長、いえ、冒険者組合代表の獅子央孝恵様、これはいったいどういうことでしょうか?」
栗色の髪を赤いリボンで結び、桜色の浴衣に袖を通した女教師、矢上遥花までが冷え冷えとした声で問いかける。
「……そ、その、恥ずかしかったんだな」
携帯端末は一瞬沈黙したが、やがて焔学園の講堂で何度か耳にした校長の声が聞こえてきた。
(なんで孝恵校長の声が聞こえてくるんだ)
桃太は意味がわからずポカンとしたものの、牛仮面を被った師匠と飄々とした外交官が、〝本来なら使えないはずの〟一〇〇インチ大型テレビを通じて丁々発止と軽口を叩き合っていた光景を思い出し、携帯端末の仕組みに気がついた。
「ああ、そういうことかあ。カムロさんと奥羽以遠さんがやっていた、〝異世界間〟オンライン会議と同じ理屈か!」
あとがき
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