表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
264/793

第260話 獅子心中の虫、八闇家

260


 西暦二〇X二年七月一二日夜。

 焔学園二年一組の研修生、出雲いずも桃太とうたは、勇者パーティ〝N・A・G・Aニュー・アカデミック・グローリー・エイジ〟の代表、五馬いつま碩志ひろしから、残る八大勇者パーティのうち、〝SAINTS(セインツ)〟と〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟が恐るべきクーデター計画を練っていたことを聞かされた。


「乂兄さんが奪取したクーデター計画書によれば、今年の八月前半に六辻ろくつじ家と〝SAINTS(セインツ)〟が異界迷宮カクリヨ内部から日本政府に宣戦布告し、冒険者組合の討伐軍をひきつけた後、七罪ななつみ家と〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟が地上で蜂起。両軍による挟み撃ちを想定していました」

「……」


 桃太は、浅葱色あさぎいろの浴衣から手を伸ばし、額に刻まれた十字傷に触れた。驚きのあまり舌が張り付いて、うまく言葉を紡げなかったのだ。


「もしも、乂兄さんが砦に潜入して情報を得てくれなければ、この卑劣な挟撃きょうげきが成功し、日本政府はともかく、冒険者組合は今度こそ陥落していたでしょう」

「待ってくれ、碩志君。冒険者組合にも戦力はあるはずだ。そうそう一方的にやられるなんておかしいじゃないか?」


 碩志のいささか極端すぎる暴論に、ようやく口が動いたため反論したが――。


「桃太さん。現在の冒険者組合を支える戦力は、五馬いつま家と〝N・A・G・Aニュー・アカデミック・グローリー・エイジ〟、八闇はちくら家と〝TOKAI(トーカイ)〟です。しかし、ここだけの話、代表の八闇はちくら越斗えつとは信用なりません。最悪の場合、防戦中に後ろから刺される心配がありました。ただでさえ二倍の戦力に挟まれている最中に、内部から喰い破られてはなすすべがない」


 桃太は、碩志に断言されて思わず息を呑んだ。


「相棒。八闇はちくら家を信じるのは、やめておけ。一〇年前も、越斗えつとは味方の振りをして二河にかわ家と五馬いつま家に近づいて、横腹をぶすりと刺してきやがった」

「勇者パーティ〝TOKAI(トーカイ)〟は、昔クマ国に大迷惑をかけたって、ジイチャンが怒っていたサメエ」

「越斗さんのリーダーとしての振る舞いは極めて独裁的で、風評も良いとは言えません。根拠のない噂話ですが、政敵を暗殺して回っているとすら、まことしやかにささやかれています」


 桃太の相棒である黄色い浴衣を着た金髪少年、五馬いつまがいも――。

 クマ国代表の養女であるジンベエザメの着ぐるみをかぶった銀髪ぎんぱつ碧眼へきがんの少女、少女、建速たけはや紗雨さあめも――。

 元ベテラン冒険者で、栗色の髪を赤いリボンで結び、桜色の浴衣を着た担任教師の矢上やがみ遥花はるかも――。

 大なり小なり八闇はちくら越斗えつとの人となりを知る者は、揃って彼を警戒していた。


「矢上先生の仰る通り、八闇家の周囲で不審な他殺事件が相次いでいるのは事実です。八闇家は、六辻、七罪との内戦中に、孝恵たかよし代表やボクを手にかけて、冒険者組合をのっとろうとはかっている恐れすらあります。乂兄さんにも気をつけるよう、忠告したかったのです」

「碩志、大丈夫だ。八闇の危険性は身にしみているぜ」

八闇はちくら家と〝TOKAI(トーカイ)〟は、いつ裏切ってもおかしくない危険なパーティ、冒険者組合に巣食う獅子身中しししんちゅうの虫、ってことなのか……」


 桃太は、じっとりと冷たい汗が流れるのを感じた。だが、このまま流されるわけにはいかない。


「碩志君、日本が危機にひんしていることはよくわかった。だから俺は、勇者パーティ〝SAINTS(セインツ)〟と〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟のクーデターを止めたい」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >八闇家の周囲で不審な他殺事件が相次いでいる ホームズさんか、金田一少年、コナン君はいませんか!?
[一言] 冒険者組合を支える戦力が八大勇者パーティとは言いますが、もう半壊してるので期待できるのかは(^_^; 物語的にも味方は五馬家だけのようにも思えます。 獅子央孝恵が独自の冒険者パーティとかを見…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ