第258話 脅威、三連蛇城!?
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「六辻家と勇者パーティ〝SAINTS〟は、〝前進同盟〟の支援を受けて、異界迷宮カクリヨの第八階層、〝残火の洞窟〟に日本政府へクーデターを起こすための拠点を築いています。こちらは、乂兄さんが銀板形式カメラで撮影した現場写真です」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、乂の弟、五馬碩志からA五サイズのガラスプレートに入れられた写真を三枚、見せられて、ごくりと生唾を飲み込んだ。
モノクロの銀板には、〝残火の洞窟〟と名付けられた異界に相応しい火柱が立ち、ガスが踊り、溶岩が流れる雄大な景色と、黒白の入り混じる岩盤に築かれた複数の城塞が写されていた。
「へえーっ、ダゲレオタイプカメラって、最初期のカメラだよね。準備に数時間、撮影に三〇分くらいかかるんじゃなかったっけ?」
「サプライズ? 古いカメラだから、そう思うだろ。銀や銅を使うシンプルな形式のせいか、カクリヨ内部でも使えるし、光を遮ったり乾かしたりといった手間のかかる行程は、鬼術でフォローが効くんだぜ」
「サメッ、サメエ。カムロのジイチャンが便利だって広めていて、最近はクマ国でも流行っているんだサメエ」
桃太は、黄色い浴衣を着た金髪少年、五馬乂と、ジンベエザメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨から、異世界クマ国に関する思わぬ事情を聞いて、目を丸くした。
「そ、そうなんだ。今が二一世紀って忘れそうになるよ」
「桃太君の言う通り、クマ国代表のカムロ様や、反政府組織の〝前進同盟〟が、色々と抜け道を探しているけれど、異界迷宮カクリヨとクマ国では、基本的に機械が使えないものね」
更に白い猫耳と赤い猫目が愛らしい、白い花柄の浴衣を着た少女、三縞凛音が改めて指摘する中、桃太は銀板写真をまじまじと見直した。
三つある写真の中央には、それぞれ中世の城郭に似た立派な要塞がそびえたち、周囲を無数の砦や見張り台が囲んでいる。
そして、どうやら三つの城は、若干の距離をとりつつも、近い位置に並んでいるようだ。
「一番外側にあるのが、大型弓つきの見張り台をハリネズミみたいに建てた丘陵。次に険しい山岳の岸壁の狭間に建てた強固な砦。攻め手が丸見えになる遮蔽物のない平原を抜けたら、本命の城かあ。ダンジョンの中にこんな城塞を三つもよく造ったものだなあ」
「資料によると、中央が本城である〝獰蛇城〟、北にあるのが〝豹威館〟、南にあるのが〝禁虎館〟で、合わせて〝三連蛇城〟と呼ぶのだそうです」
桃太は、碩志から城の名称を聞いてカッコいいと感心するも、強烈な違和感を感じた。
「あれ、おかしくない? 機械が使えないのはずなのに、六辻家と〝SAINTS〟は、どうやって〝三連蛇城〟みたいな拠点を築けたんだ? この鞄が軽トラック並の容量があるからといって、運べるのはせいぜい三〇〇キロちょっと。ピラミッドや古墳じゃあるまいし、重機もなしにあの規模の建物を作り上げるのは、さすがに力不足だろう?」
あとがき
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