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第256話 六辻家のクーデター計画書

256


「ふん、コピー能力ね。死体愛好家ネクロフィリア七罪ななつみ業夢ぎょうむ二河にかわ瑠衣るいの死体を実験でオモチャにした結果、〝再現された魂(セグンダ)〟が取り憑いた〝生きた死体女(リビングデッド)〟如きに、そんな力があるものか。なぜなら、世界を統べるその力を持っているのは、このおれ、八闇はちくら越斗えつとなのだから」


 モヒカンの目立つ林魚はやしうお旋斧せんぶの姿から、また別の研修生に顔を変えた謎の男は、そう呟くとクツクツと陰険に笑った。


「昼間の騒ぎを利用してキャンプに潜り込んだが、コピーを疑っている上に、慎重で勘の良い五馬いつま碩志ひろしがいるのなら、がいの暗殺は難しいな。今回は見送るか……」


 謎の男は剣呑けんのんな捨て台詞を呟いて、闇の中へと姿を消す。


「トイレ、トイレ……。あれ、誰かいたか?」

「ひ、ひょっとして、ビキニアーマーを着た女戦士とか?」

「おい関中、怖いことを言うなっ」


 本物の〝怪我をした〟林魚はやしうお旋斧せんぶが、友人達とトイレコーナーを訪れた時には、コピー能力を持つと自称する偽物がいた痕跡こんせきは、まるで残っていなかった。



「中座してごめん、戻ったよ」

「ちょっとコーラを飲みすぎちまったぜ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたと、金髪ストレートの少年、五馬いつまがいは、危険なニアミスがあったなどつゆとも知らず、トイレコーナーからテントに戻り……。


「みんなに聞いて欲しい仮説があるんだ。〝前進同盟ぜんしんどうめい〟は、二河にかわ瑠衣るいさんの遺体をなんらかの手段でコピーしたんじゃないかって可能性なんだけど」

「ホワッツ! クローンかよ!?」

「その発想はありませんでしたっ」


 会議を続けたものの、桃太達ではまだ真相に迫ることは叶わなかった。


「いけませんね。我々にはまだ情報が足りないようだ。ひとまずセグンダの正体については、詳細不明と保留しましょう。しかし、彼女の脅威については意見の一致(コンセンサス)を得られたようです」


 黒い癖毛の少年、五馬いつま碩志ひろしがまとめた結論に、桃太達は揃って首を縦に振る。


「セグンダも負傷していますし、すぐ戦場に出てくることはないと思いますが……。今後どう動くにせよ、焔学園二年一組の皆さんは再遭遇した場合、戦闘は絶対に避けてください。次も衣服を切られただけで済むとは限りませんから」


 今回は幸いにも、犠牲者を出さずに勝利できた。

 しかし、言い換えるならば、最低でも、桃太、乂、碩志の三人が揃わなければ、セグンダには勝ち筋がないのだ。警戒するのは当然といえた。


「ボク達はその間に、一〇年前、クマ国から日本へ送られた、二河にかわ瑠衣るい様の遺体の行方や、飛燕返つばめがえしについて、徹底的に調査します」

「碩志、地上のことは任せるぜ!」


 乂の信頼に応え、碩志は強く頷いた。


「それでは、次は乂兄さんが、六辻ろくつじ家と〝SAINTS(セインツ)〟の砦から回収した、クーデター計画書についてです」


 碩志は小さな鞄から、テントの一角が埋まるほどのファイルと書類の束をとり出した。


「いやいやいや、多過ぎない? どこに入っていたのさ?」

「桃太さんの同期生の、祖平そひら遠亜とあさんという方も持っていましたが、六辻ろくつじ家、いえ、〝前進同盟ぜんしんどうめい〟が売り出し中の、〝内部空間を操作した鞄〟ですよ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こんばんは、上野文様。  忙しい時期が終わりやっとゆっくり御作を読む事が出来ました。  まさか亡くなった二河瑠衣の遺体を横取りした挙げ句実験材料にしていたとは思ってもみませんでした。 …
[一言] >ビキニアーマーを着た女戦士とか? ビキニアーマーを着た男剣鬼とか? ???「あらやだ、見つかっちゃった☆」
[一言] セグンダと二河瑠衣の関係、読者側には意外なほど早く発覚しましたか。 死体へ魂を入れていたとは。 なかなかに倫理の飛んだ行いをしていたようですね。 そして、その力を完全に使っていると豪語する…
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