第254話 セグンダとは何者か?
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「これからの方針を決める以上、先の戦いについても避けられないでしょう。最初の議題ですが、ボク達が交戦したセグンダを名乗る、六辻家当主の影武者への対策です」
「碩志君。セグンダさんは一〇年前に乂を救ってくれた二河瑠衣さんじゃないの?」
桃太の質問に対し、碩志は悩ましげに眉をひそめた。
「本物の二河瑠衣様が生きていたのなら喜ばしいですが、セグンダの外見年齢は死亡した瑠衣様とほぼ同じでした。一〇年経っているのにまるで見かけが変わらない、というのは考えにくいです」
勇者パーティ〝N・A・G・A〟を束ねる、黒い癖毛の少年、五馬碩志は兄である、金髪少年、五馬乂に向き直った。
「乂兄さんは、亡くなられた瑠衣様のお葬式に参列し、死体を直接見ているんですよね。実は生きていたとか、すり替えられていたとか、クマ国で工作された可能性はありませんか?」
「碩志。オレが見た時、瑠衣姉さんは間違いなく死んでいた。棺ごと肉体を凍結保存して地上に送ったのも間違いない。カムロのジジイには、何を考えているかわからない腹黒だが、葬儀で工作するのは、あまりにもらしくない」
乂が瑠衣の死について述べると、彼の幼馴染であり、クマ国の代表カムロの養女でもある、銀髪碧眼の少女、建速紗雨が身を乗り出して補足した。
「サメー。ジイチャンは自分が幽霊なだけあって、お葬式は大事にしているんだサメー」
桃太も、カムロが師匠という贔屓目もあるだろうが、乂や紗雨と同意見だ。
「二河瑠衣さんが死んでいるなら、セグンダさんはやっぱりニセモノなのかな。でも、〝前進同盟〟も六辻家当主の影武者に、二河家当主そっくりに変装した偽物を当てるなんて、随分と手の込んだことをするなあ」
「サメッサメエ。桃太おにーさん、〝前進同盟〟はワルワルの過激派なんだサメエ。最初は二河家を騙すために用意した偽物を、六辻家が求める偽物として売りつけるなんてぼったくり商売を、むしろ喜んでやりそうなんだサメエ」
「オウモさんは、うん」
桃太は、紗雨の発言は言い過ぎでは無いかと悩んだが……。
〝前進同盟〟のオウモが、自分と啓介の戦いを、ちゃっかり商品の宣伝に使ったことを思い出し、さもあらんと考えを改めた。
「ボクも、桃太さんや建速様の仰る通りだと考えています。しかし、セグンダが瑠衣様の偽物だとしたら、まるで同じ能力を持っていることが説明できなくなる」
「確かに恐ろしい技だけど、〝鬼の力〟を使えば、真似事くらいはできるだろう?」
桃太はそう安直に考えていたのだが、乂が重々しく首を横に振った。
「イッツ、ソー、ハード……。相棒、飛燕返しは人間の技と〝鬼の力〟を高次元で融合させた、クマ国でも最高峰の難易度を誇る技なんだ。一〇〇〇年で習得者はわずか一桁らしい。瑠衣姉さんでさえものにするのに一〇年かかった奥義を、偽物が簡単に使えるとは思えない。それこそ〝コピー能力〟でも持っていなきゃ無理だろう」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、金髪の下から覗く赤い瞳を曇らせた五馬乂の言葉に衝撃を受けた。
「そう、なのか? ひょっとしてセグンダさんは、他人の姿や能力をコピーできる術や、〝鬼神具〟の持ち主って事か?」
「ザッツライっ(そのとおり)。オレの推理、クールだろ?」
あとがき
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