第247話 戦いの果てに
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「「俺達の勝ちだ!」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太。
白いボロボロの胴着を着た金髪少年、五馬乂。
迷彩服を身につけた黒い癖毛の少年、五馬碩志。
三人が連続攻撃で成立させた、五馬兄弟の父、五馬審の必殺技の連続技、〝二天一竜・天地鬼斬〟は、無敵と思われた女剣鬼セグンダの飛燕返しを破り、彼女が契約した〝鬼神具・テスカトリポカの鏡〟を止めて無力化した。
「ファファファ……。負けた負けた」
セグンダの握る、全長二メートルを超える長い剣が乾いた音をたてて真っ二つに折れ、腰部に巻きつけた蒸気機関も湿った排気音を吐き出して動きを止めた。
しかしながら、ビキニアーマーは面積こそ少ないものの、見かけ以上に丈夫だったらしい。角の折れたバイザーで顔を隠した美女は、翡翠色の金属紐で結んだ大きな胸をゆらしながら、荒れた地面に転がる倒木に腰をおろし、むっちりとした白い足を伸ばす。
「強い子になったじゃあないか。ああ、本当に帰ってきて良かった」
「セグンダさん、貴方を拘束します。あれ、足が動かない?」
桃太は、敗北を認めてなお堂々としたセグンダを捕らえようとしたものの、力を使い果たしたために、一歩も動けない自分に気がついた。
「シャシャシャ、ざまあみやがれ」
「乂兄さん。その格好では何を言っても、負け惜しみみたいに聞こえますよ」
黒い煙に生命力を奪われながら攻撃を敢行した無理がたたったか、乂と碩志もまたうつ伏せに倒れたまま立ち上がれないようだ。
戦後の余裕を見れば、いったいどちらが勝者なのかわかったものではない。
「なに、今回ばかりは天狗君が正しい。碩志君は卑下しなくていい。ここまで完璧に負けたのは、クマ国代表と戦った時くらいだよ」
「セグンダさんは、カムロさんと戦ったことがあるのですか?」
桃太の問いに、セグンダは胸をたゆんたゆんと弾ませながら背筋を伸ばして、ニッと笑った。
「ファファファ。桃太君は〝前進同盟〟一度共闘したから、我々の移動基地、ホバーベースの事は知っているね? 先日、クマ国を移動中に発見されてね。時間稼ぎをしようと残ったら、初っ端に〝生太刀・草薙〟から始まって、二〇発ほどの大技を受けたよ」
桃太の師匠であり、クマ国の代表でもあるカムロは温厚な人物だ。
そこまでやるということは、めちゃくちゃ怒っているな、と状況を想像して身震いした。
「〝前進同盟〟はクマ国では過激派団体として指名手配されているし、地球各国に色々ちょっかいかけているから自業自得だけどね。桃太君も、師匠超えを目指す時は気をつけたまえ。このメンバーなら通じるかも知れないが、カムロという男はまったくもって大人気ないぞ」
桃太とセグンダがそんな会話を交わしていると、不意に背後からがさこぞと音がして、ジャージ姿の赤い髪の少女が現れた。
「詠さんっ、良かった。意識が戻ったのかっ」
「こ、コケー。手当てして下さってありがとうございました。戦いはどうなったのですか?」
六辻詠はセグンダに斬られて気絶していたから、戦いの結末を知らなかったのだろう。満身創痍ながら桃太達が勝利したとみて歓声をあげた。
「コケッ。やりましたわ。偽物のわたくしを倒したのですね。ろ、六辻家当主の座を返してください」
「ファファファ、だーめ。詠ちゃんも善戦してバトンを繋いだといえ、私を倒したアンカーは、五馬兄弟と出雲君、それに猫のリンちゃんだからね。次こそは他人に頼らず、自分で取り戻しに来なさい」
あとがき
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