第246話 二天一竜・天地鬼斬
246
「「見ておどろけ。これが、五馬兄弟の必殺技だ!」」
白い胴着を着た金髪少年、五馬乂は黄金の光を放ちながら短剣を斬り下ろし、迷彩服を着た黒い癖毛の少年、五馬碩志は独鈷杵から伸びる光線剣で地表ギリギリから切り上げる。
「なるほど、兄弟で五馬審の二刀流、彼の連続攻撃を再現しようというのかい? だが、父親の技を知らないようだね。〝二天一竜・天地鬼斬〟とは、三発の必殺技を同時に放つ技。陽光剣と地すり繊月の連携だけでは不完全だ」
素肌を黒い煙のスーツで覆った女剣鬼セグンダは、五馬兄弟の息のあった連携技を見て、期待外れとばかりに断言した。
「そろそろ日没も近い。残念だが、幕引きといこう。奥義開帳・〝最終署名〟!」
セグンダは、飛燕返しで迎撃するかのかと思いきや、まったく別の技で応じた。
バイザーめいた鬼面から覗く瞳を、ホオズキのように赤く光らせながら、黒い煙をまとった細く長い剣を振るって、〝漢字の二〟むしろ〝英字のZ〟を中空に書き留めた。
彼女が書き連ねた剣の軌跡から黒い煙がもくもくと膨れ上がり、乂と碩志の武器に絡みついた。
「くっそおお」
「なんてことっ」
そして、セグンダな黒い煙は、武器を止めるだけにとどまらず、あたかも蛇が舌を伸ばすように、兄弟をも食らい始めた。
「があああ」
「これはっ」
黒い煙にむさぼられて、乂の着る白い胴着が地で赤く染まり、碩志の迷彩服から鮮血がほとばしる。
「今のキミ達では、六辻詠を守るには一手足りなかった」
「いいや、足りてる。三撃目は俺だ」
しかし、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は背を低めて走り、乂と碩志、セグンダの長剣が交差する空間を潜り抜ける。
「奥義開帳、〝飛燕返し〟!」
「ニャン!(勝つのはワタシたちよ!)」
桃太にしがみつく三毛猫に化けた少女、三縞凛音は、セグンダが飛燕返しで迎撃するや否や、桃太の幻影一〇体を生み出して撹乱。
つばめが飛ぶような変幻自在の剣撃に、幻影九体が切り捨てられたものの、最後の一体が本物だった。
「悪鬼退散、〝鎧通し!〟 これで、どうだああ」
凛音が稼いだ刹那の時間が明暗を分け――。
桃太は、セグンダが振るう刀の柄を掴んで、ありったけの衝撃を叩き込んだ。
「刀が壊れる。術が破れる。こ、これはまずい」
桃太の技で全身を揺さぶられたセグンダは、自身の身を守る黒い煙ばかりか、乂と碩志を縫い止める文字すらも維持できなくなった。
「真打ち披露、昇陽剣!」
その瞬間、乂は待ってましたとばかりに、右手に握る錆びた短剣から黄金の光を放ち、黒い煙を晴らしながら、太陽が空を昇る軌跡を描くように斜め上に切り上げて。
「二の太刀、弓張月」
続いて碩志が赤黒いビームソードが伸びた独鈷杵の裏側からもう一本の光線剣を発生させ、ツインビームソードで上弦の月を描きながら、斜め下に斬り下ろす。
「「これが〝二天一竜・天地鬼斬〟だ!」」
二人の必殺剣がX字を描いて閃くや、セグンダの握る細く長い刀が真っ二つに折れた。
「ハ、ハハハ。この私がやぶれたかっ」
細い刀身の半ばがクルクルと回転しながら宙を舞い地面に突き刺さり。
ビキニアーマーを着た女剣鬼を守る黒煙の装甲服も消滅、蒸気機関も悲鳴のような音をあげて沈黙する。
「「俺達の勝ちだ!」」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)