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第238話 六辻詠の奮戦

238


「詠さん、凄い。あんな破り方があったなんて」

「リアリー? ひょっとして詠ってばリンより強いじゃないの!」

「にゃにーっ、ふしゃーっ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは、白い翼で空を飛ぶ赤いお団子髪の少女、六辻ろくつじうたの活躍に感心したものの……。

 彼の相棒である、天狗面を被った金髪少年、五馬いつまがいは喜びのあまりデリカシーのない感想を告げて、三毛猫に化けた少女、三縞みしま凛音りんねに爪で顔を引っかかれていた。

 桃太は、じゃれあう幼馴染二人を気にもとめず、詠の攻撃に目が釘付けになっていた。


(単純な力だけなら、これまで倒してきた黒山くろやま犬斗けんとや、四鳴しめい啓介けいすけさんの方が上だ。でも、詠さんは彼らと違って、〝鬼の力〟の狂気に飲まれずに、契約を交わした〝鬼神具・空王鬼ジズの羽根〟をしっかり使いこなしている)


 己が弱さを知ってなお、自分以外の誰かを守るために戦う彼女の姿は、確かに〝勇者〟の名に相応しい威風を備えていた。


「コケケっ。まだまだですわあ。これが大空を支配するジズの力ですわあ」


 詠は白い羽根をバラバサとはためかせながら、ここが攻め所とばかりに一二枚の光輪を再生させ無数の光刃を再び射出した。

 矢継ぎ早に放たれる千を超える光の刃は、詠の精密なコントロールによって望むがままに進路を変え、変幻自在の剣技、〝飛燕返つばめがえし〟をもすり抜ける。

 彼女の偽物である女剣鬼セグンダもさるもの、バックパックの蒸気機関に一撃を受けて以後は直撃を避けているものの、完全に動きを縫い止めていた。


「チャンスだっ。乂、凛音さ、……リンちゃん。俺たちも仕掛けるぞ。〝二天一竜にてんいちりゅう天地鬼斬てんちきざん〟だっけ? 例の必殺技を、ここで決めるぞ!」

「お、おう。任せとけ」

「ニャー!(今から私の瞳で安全な進行路を計算して、視界に映すからその通りに進んで)」


 桃太と乂は、凛音が鬼神具ホルスの瞳で見た未来予測結果を共有し、詠を援護しようと切り込んだ。


「見える。詠さんの光刃が、セグンダさんの繰り出す剣の動きが、流星のように白い光で視認できる。リンちゃんの援護があれば、間合いを詰められる。くらえ我流・長巻ながまき!」


 桃太は右腕から衝撃波を放って、女剣鬼セグンダが剣で作り上げた斬撃の結界をこじ開け――。


「ニャー!(炎よ、幻となって)」


 三毛猫姿の凛音が義眼から炎を生み出し、詠の光刃に偽装して囮にする――。


「シャシャシャ。無敵だった飛燕返(つばめがえ)しの精度も落ちたようだな。六辻ろくつじうたがヒントをくれた。日緋色金ひひいろかねの刃で熱と衝撃に干渉できても、光は苦手のようだな。瑠衣姉さんの偽物め、年貢の納め時だ。追い込んだぜ! 変幻抜刀へんげんばっとう陽光剣ようこうけん!」


 がいが吠えながらかざした短剣が、黄金の光を発して輝く――。


「ニャー!(これでしまいよ)」


 凛音りんねが義眼、義耳として埋め込んだ〝鬼神具・ホルスの瞳〟が予測した未来では、桃太と乂の連続は見事セグンダに命中する。


 ――――はずだった。


 されど、確定したはずの未来は――完成するはずのパズルは――欠けた情報ピースによって覆されて、ノイズとなって消えた。


「いやいやお見事。まさか、奥の手を切らされるなんてね。〝獣変化メタモルフォーゼ〟」

「「「!?」」」


 桃太と乂がセグンダに技を命中させる直前。

 剣鬼セグンダは、ビキニアーマーゆえにほぼ丸出しの背中から、二枚の黒い翼を生やして空へと飛翔した。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] これがビキニアーマーの利点! なんて理に適った装備なのでしょうか! みんなも翼を生やす時に便利なビキニアーマーを装着するべきでしょう。 リヴァイアサンやベヒモスに比べ、いまいち知名度のない…
[一言] 鳥は獣に入るのだろうか?(素朴な疑問)
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