表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/792

第235話 意外な助っ人

235


「相棒、凛音りんね。ちょっと耳を貸せ。オレのオヤジ、五馬いつましんは、セグンダと同じ飛燕返し(つばめがえし)を使う瑠衣るい姉さんにも、公式試合で勝った経験がある。オヤジの得意技だった、〝二天一竜にてんいちりゅう天地鬼斬てんちきざん〟なら、あの偽物を倒せるかも知れない」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたは、天狗面てんぐめんを被った相棒の金髪少年、五馬いつまがいの積極的な提案を聞いて、しぼんでいたやる気がふつふつと湧いてきた。


「乂、自信がありそうじゃないか。〝二天一竜にてんいちりゅう天地鬼斬てんちきざん〟って、どんな技なんだ?」

「おう、オヤジは二刀流の剣客だったからな。左右に加えて、両手で合計三発の大技を叩き込むんだよ。オレじゃ二発までが限界だと思うから、トドメの一撃を頼むぜ」

「任せてくれ。草薙の代わりに、〝鎧徹よろいとおし〟を決める。凛音……リンちゃん、案内を頼める?」

「ニャン(わかったわ。サポートは任せてね)」


 三毛猫に化けた少女、三縞みしま凛音りんねも了承し、三人は景気づけとばかりに肩を組んで、手のひらと肉球をぶつけあった。


「乂の弟、碩志ひろし君へのお土産にはおにぎりと、詠さんをかたる偽物の身柄を用意しよう」

「ジャスタモーメント(まってくれ)! 相棒、おにぎりはいらないぞ。碩志ひろしの奴、昔は胃腸が弱くて、家族のメシしか食えなかったんだっ」

「にゃー(そうなの、ほら雑談はここまで)」


 消極的に逃げ回るばかりだった二人と一匹が積極的に飛び出すのを見て、二本のツノが生えたサンバイザーめいた鬼面をかぶる女剣鬼セグンダは、ニヤリとほくそ笑んだ。


「ほう、なにやら策があるようだが、私の技を破れるかな?」

「ああ、やってみせるさ。乂、打ち合わせ通りに行くぞ」


 桃太が飛び出すや、セグンダは細い金属紐でしめつけた胸元を鞠のように揺らし、V字の腰ガードから伸びる白く輝かんばかりの足で大きく踏み込んだ。

 女剣鬼の振るう身の丈よりも長い得物は、直角、半円、ジグザグといったはちゃめちゃな軌跡を描きながら、突出した桃太を狙い打つ。


「ともかく近づかないと話にならない。我流・手裏剣しゅりけん!」


 桃太は拾った石礫いしつぶてに衝撃波をこめて、空を切り裂く長剣にぶつけて牽制けんせいするも……。

 吹き飛ばした次の瞬間には、刀が地中から跳ねるように飛んできて、掌中しょうちゅうに残る石を破壊された。


「ニャー(乂、交代)!」

「三人寄ればなんとやらってなっ」


 凛音は〝鬼神具きしんぐ〟である義眼、〝ホルスの瞳〟を赤く輝かせながら、未来を予測。

 乂がその情報を共有して、錆びて赤茶けた短剣で続く〝飛燕返し〟を防御。

 その隙に桃太が再び前に出る、と、二人と一匹は幾度も前衛と後衛を入れ替わりながら、少しずつ距離を詰めていった。


「ファファファ。牛歩戦術ぎゅうほせんじゅうのような真似をしているが、ひょっとして伊吹いぶき賈南かなんが言っていた、五馬いつま家と〝N・A・G・Aニュー・アカデミック・グローリー・エイジ〟の援軍が来るまで時間稼ぎをするつもりかい?」

「シャシャ、だとしたらどうなんだよ?」


 自分の手でぶちのめしたい乂としては、セグンダが誤解してくれた方が都合が良いのだろう。

 

不肖ふしょうの弟子である満勒みろくと、ヘンテコ妖刀のムラサマが離脱した今、私もアフターファイブに洒落込しゃれこみたいのさ。武器を捨てて両手をあげ、六辻ろくつじうたの首をさしだしたまえ」

「断る。貴方に詠さんは殺させない!」

「ニャン(滅多に人前に出ないけど、勇者パーティ当主の中じゃ、珍しく良い子なのよ)」


 桃太、乂、凛音と、セグンダ。互いに殺意を高めながらせめぎ合う濃密な時間は、森から突如として現れた意外な闖入者ちんにゅうしゃに破られることになる。


「コケーっ。出雲さん達はやらせません。なぜなら本物のわたくしがぁ、偽物である貴方を叩きのめすからですわ!」


 二つのお団子(ダブルシニョン)でまとめた赤い頭髪の上に、天使を連想させる光輪を浮かべた丸っこい少女、六辻ろくつじうたが後方の森から飛び出してきたからだ。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本物の乱入ですか。 よくある展開だと、狙われている本人が出て来たことで、 主人公たちの足を引っ張ることが多いですが。 しかし彼女も八大勇者パーティの一人、秘奥で援護してくれるのかも知れません…
[一言] >碩志君へのお土産にはおにぎりと、詠さんを騙る偽物の身柄を用意しよう 碩志「ああ、そのおにぎりは兄さんが全部食べるそうですよ」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ