第233話 類は友を呼ぶ?
233
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、いつの間にか自身の料理に悪評がたっていたことを知り涙したが……。
正直なところ彼の調理スキルはダメダメだったので、相棒の金髪少年、五馬乂と、彼の首に巻きつく三毛猫に化けた少女、三縞凛音も味方してくれなかった。
「さて、おにぎりの件はここまでにして、青春中の弟子と愉快な妖刀も逃げ出したことだし、私も切り上げてもいいのだけれど」
角が生えた鬼面をかぶる女剣鬼セグンダは、翠玉色の細い金属紐に包まれたまるまるした双丘を弾ませ、V字の腰ガードから伸びるむちむちとした足で踊るように一歩を踏み出した。
「勇者パーティ〝SAINTS〟を率いる六辻詠の偽物としては、天狗君に盗まれたクーデター計画書は返して欲しいし、本物の六辻詠には死んで貰いたいんだ。引き渡してもらえるかい? そもそも、あの臆病娘を守る理由なんて、キミたちにはないだろう?」
セグンダは、恵まれた容姿を見せつけるようにして言葉を投げかけるも――。
「理由、か。死にたくないって泣いている人を守るのに、理由なんていらないよ」
桃太は胸元とお尻の色気に顔を赤らめながらも、断固として拒否――。
「ダァムイット(こんちきしょう)! オレは六辻詠がどうなろうと知ったこっちゃないし、クーデターの計画書だってまたぶんどりに行けばいいが、アンタがそんなハレンチな格好で、瑠衣姉さんと同じ〝飛燕返し〟を使うことが気に入らない」
乂もまた、凛音の手前ということもあってか、カッコをつけた――。
しかしながら、彼の言い分はセグンダにとって見過ごせないものだったらしい。
「ハレンチって、それはないだろう。立派に鍛えた肉体を見てもらおうとして、いったい何が悪いと言うんだい?」
「シャシャシャ! 見せるのにも服を選べと言っているんだぜ」
乂は自信満々だったが、桃太も彼の尖った服装のセンスには思うところがあったため、頭を抱えた。
「天狗君、ヘンテコな仮面をかぶって、白い胴着に金色の外套を羽織り、赤い一本足の高下駄っていうコスプレもどうかと思うよ。リンちゃん以外のご家族や幼馴染が見たら、ショックなんじゃないかなあ?」
「シャーっ。オレの格好のどこが変なんだよ。カッコいいだろ!」
「にゃ、ニャン(そうよ、そうよ。こういうところも乂の魅力なのよ)」
「ああ。紗雨ちゃん、遥花先生、助けて……」
セグンダの真っ当なツッコミに、乂と凛音は勢いよく反論したが、桃太はこれ以上夫婦漫才を聞きたくないと耳を手でふさいだ。
「ファファファ。仲が良いのは結構だけれど、ここは戦場だよ。一人は耳をふさぎ、一人は聞く耳をもたず、もう一人が恋に目が眩んでいるなら仕方がない。キミ達を力づくで叩きのめして、本物の六辻詠の首を切り、地上へ持ち帰ることにしよう」
セグンダは一瞬だけ、二本のツノが生えた鬼面からのぞく口元を緩めたものの、再び口元を引き締めて、長い刀をぶんと振った。
「奥義開帳・〝飛燕返し〟!」
死刑宣告めいた必殺技の前口上を皮切りに、女剣鬼セグンダによる蹂躙が再開される。
桃太は衝撃をまとった腕で、首筋に迫った刃を間一髪で払ったものの、冷や汗がとまらない。
「弱った。〝生太刀・草薙〟はもう使えないし、どうすればセグンダさんに勝てるんだ?」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)