表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/790

第230話 メガネ落ちる

230


「このまま倒す!」

紗雨さあめちゃんが言っていたでしょう? 出雲君だけを敵と見たのが、貴方の敗因だよ」

「ば、馬鹿な、この俺様が、〝覇者〟にもなれないまま、朽ち果てるというのか!?」


 サイドポニーの目立つ、濃紺の鎧を身につけた少女、やなぎ心紺ここんと、彼女の使役する〝式鬼しきおに〟八本足の虎ブンオー、瓶底メガネをかけて白衣を着た少女、祖平そひら遠亜とあは、異界迷宮カクリヨのキャンプ地を襲撃してきた刺客、石貫いしゆき満勒みろくの目をトリモチアミで塞ぎ、戦闘不能に追い込もうとしていた。


「出雲達が消耗させてくれたからね。悪いけど、ここで決める」

「大人しく降伏なさい」

「さすがは現代の勇者の仲間。一筋縄ではいかないみたいでち。満勒、あたちがお前の肉体を使うから、落とさないようしっかり支えるでち」


 心紺と遠亜は降伏を勧告するも、妖刀ムラサマは使い手である、鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、満勒みろくの肉体を操って迎撃。

 鉄塊の如き刀身から熱した鉄線を放って、満勒の視界を塞ぐトリモチアミを焼き切り、迫り来る一〇本の砂剣をも次々に砕いた。


「強ければ強いほど、倒しがいがあるというもの。この時代に目覚めて良かった。あたちは、最強の魔剣になるでち」

「遠亜っち、ヤバいのは満勒だけじゃなかった。鉄塊みたいな武器もだ!」

「多分、実戦経験が私たちより多い。あと少しなのに、押し切れない」


 遠亜が振るう衝撃波をまとう杖と、ムラサマが激突し、爆風が吹き荒れる。

 その衝撃で、満勒の目に貼り付いていたトリモチが完全に外れ、視界を取り戻した満勒が真っ先に目撃したものは……。


「う、美しい」

 

 同じように激突の余波でメガネが落ちて、黒真珠のように輝く瞳と、細い鼻筋、艶めく小さな唇が顕になった、遠亜の華やかな美貌かんばせだった。


「祖平と言ったな! お、俺様の彼女になってくれ!!」


 満勒は思わず大剣ムラサマを大地に突き刺し、片膝をついて、胸に湧き上がった衝動のおもむくままに告白した。


「え、イヤよ」


 直後、遠亜とあが拒否したのは言うまでもない。


「あ、アンタ何考えてるの? 遠亜っちに、イヤらしい目を向けないで!」

「BUNOO!!」


 満勒の場をわきまえない告白は、遠亜ばかりでなく、彼女の親友である心紺ここんと、二人が乗る八本足の虎ブンオーを激怒させ……。


「うわあ、最悪でち」


 更には味方であるはずの大剣に宿る意思、ムラサマにまでドン引かれていた。

 

「ま、ままま、待て。祖平よ、俺様のことを知らないはずだ。何も即答することはないだろう?」

石貫いしぬき満勒みろくさん。戦いでわかることもある。貴方は、半年前の私たちのように、ただ強い力を得てはしゃいでいるだけのビギナー。それに、出雲君と口論していた貴方の声を聞いたわ」


 遠亜と心紺は、満勒がキャンプの入り口を破壊したことから、戦場に辿り着くまで迂回うかい余儀よぎなくされたが、その間もきちんと襲撃者の情報を集めていたのだ。


「何もかもを壊す覇者になりたい、だって?」


 遠亜の黒い真珠のような瞳が、深い憂いの影を宿す。


「一〇年前、弘農こうのう楊駿たけはやと勇者党が日本の政治をめちゃくちゃにして、今度は四鳴しめい啓介けいすけが経済をぐちゃぐちゃにした。貴方は、この惨状でまだそんなことを言っているの?」

「ヒャッハァ。破壊とは、中途半端ではいけない。不死鳥が火から再誕するように、古い時代の異物はすべて葬らねばならん。俺様は必ずや成し遂げて、この国をすべる新たな覇者となろう」

 

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >破壊とは、中途半端ではいけない。不死鳥が火から再誕するように、古い時代の異物はすべて葬らねばならん うん、似たようなことを言ってた存在の末路がこれだよ? つ 金メッキの抜け殻
[一言] これは意外な展開です(°°;) 石貫満勒が桃太のクラスメイトに一目惚れするとは。 眼鏡を外したら美少女だった展開? 急展開で状況把握が追いつきません!笑 師匠セグンダと相棒ムラサマの心情が気…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ