第229話 親友との連携
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「ぬるいわ! 覇者の道を邪魔するなあ!!」
鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒は、彼が握る鉄塊の如き妖刀ムラサマを掲げながら、地雷やトラバサミといった罠が敷き詰められた防衛陣地に突撃。
「新しい勇者、出雲桃太ならいざ知らず、腰巾着の雑魚なんざ怖くねえんだよ。どけえ、ヒャッハァ!!」
「こら満勒、あたちはスコップじゃなーい」
「うるさい。似たようなもんだろっ」
燃える大剣を地面に突き出すや、スコップ代わりに罠ごと掘り起こして、爆発させるという力技で破壊した。
「うるさいのはアンタでしょ。明日は海水浴なんだよ。苦労してダイエットしたのにムチャクチャにしてさあ。このウラミはらさでおくべきか。ぶっとばーす」
「クーデターを目論み、おまけに六辻詠さんの命を狙って来たそうね。その前に捕まえる!」
「BUNOOO!」
されど、サイドポニーの目立つ、濃紺の蒸気鎧を身につけた少女、柳心紺。
瓶底メガネをかけて、白いスーツケースを手にした少女、祖平遠亜。
八本足の虎の格好をした式鬼ブンオー。
三人の士気も高く、罠の残骸の上に仁王立ちした満勒に向かって駆けた。
「配置された罠は狙えても、空中の砂は狙えないでしょう? 〝砂丘〟、行って!」
心紺は紺色の砂状兵器、〝砂丘〟を飛ばして、満勒の足を止めようとするも――。
「覇者に後退はない。ただ前進するのみよ。ムラサマ、やれえ!」
「スコップの次はドライヤーでちか、まったく刀つかいがあらいでち!」
満勒はムラサマから荒れ狂う熱風を吹き出させて、追い散らした。
「あの二人? 一人と一本? も、強いね」
「出雲君達が苦戦した相手だもの。簡単にはいかないよ」
「わかった、力を合わせよう。戦闘機能選択、モード〝盾爪〟。遠亜っち、防御はアタシに任せて!」
「心紺ちゃん、お願い。攻撃は私がする。胡蝶蘭、やって!」
心紺はサイドポニーを風になびかせながらマントの形になっていた濃紺の砂型自律兵器、〝砂丘〟を空中に広げて盾を作り、遠亜もまた白いスーツケースを使って迎撃の準備をする。
「ヒャッハァ、無駄だ。何をしようとも、ぶっ壊してやろう!」
一方、戦域からの離脱をはかる満勒は、鍛え抜かれた背筋と丸太のような腕で大剣を正面に構え、〝鬼の力〟で筋肉を強化。
「お前達の防御など、ちり紙に過ぎん!」
身の丈を超える大剣を、ゴオと大気を断ち割る音をたてながら切り上げて、砂状の自律兵器、〝砂丘〟を重ね合わせた盾を真っ二つに破壊した。
「BUNOO!?」
「わわわ、怖い怖い」
式鬼ブンオーと、彼女の手綱を握る心紺が満勒とのすれ違いざまに冷や汗を流すも……。
「大剣による力任せの破壊。そう来ると思っていた」
心紺の後ろで、ブンオーに同乗した遠亜は、自信たっぷりに瓶底眼鏡をキラリと輝かせる。
「こ、これは!? め、目が見えないぞっ」
先ほど遠亜がスーツケースをガザゴソと探っていたのは、中から取り出したトリモチアミを心紺が操る砂盾の中に仕込んでいたのだ。
盾が破壊された瞬間、白い粘液状の繊維物質が、ボクシングのカウンターのように噴出し、満勒の目を覆って彼の視界を奪う。
「心紺ちゃんが防御を、私が攻撃を担当すると宣言したはず。このまま仕留める〝鬼術・長巻改〟!」
「アタシも手伝うよ。戦闘機能選択、モード〝剣牙〟!」
「BUNOOO!」
心紺は背負った蒸気機関を高らかに回しながら、砕かれた砂盾を一〇本の剣に形成しなおして射出。
遠亜はもまた、親友の支援を受けつつ、ブンオーに乗って騎兵の如く突進、戦友である出雲桃太を真似て、杖にかぶせた衝撃波で満勒を貫こうとした。
「このまま倒す!」
「紗雨ちゃんが言っていたでしょう? 出雲君だけを敵と見たのが、貴方の敗因だよ」
「ば、馬鹿な、この俺様が、〝覇者〟にもなれないまま、朽ち果てるというのか!?」
あとがき
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