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第225話 役名偽装〝剣鬼〟

225


「ファファファ。初々(ういうい)しいじゃないか。だが包囲したからといって油断は禁物だよ。我が鍛錬の成果、とくとごろうじろ。舞台登場ぶたいとうじょう 役名偽装やくめいぎそう――〝剣鬼ソードマン〟!」


 女戦士セグンダが身につけた、翠玉色エメラルドグリーンの細い胸当てとV字の腰ガードという、水着鎧ビキニアーマーから、陽炎かげろうのような熱がたちのぼり、サンバイザーめいた仮面からも鬼を連想させる角が二本張り出した。


「セグンダさん。その役名は、〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の鷹舟たかふね俊忠としただと同じものか!?」

「あのオッサン、色んなところにヤバい影響を残しすぎだろ!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたと、彼の相棒たる金髪ストレートの少年、五馬いつまがいは、かつて二人が倒した強敵と同じ役名を聞いて、息を切らせて走り出したものの――。


「ファファファ、本当は違うけどね。死んだ鷹舟には貸しがあるから、役名を偽装しても心は傷まないのさ」


 セグンダが、刃先こそ折れたといえ、全長二メートルを超える長い剣を振り回す方が早かった。

 焔学園二年一組研修生達の間を銀色の光が走り、男女を問わず身につけた鎧や服がバラバラと切れて下着姿になってしまう。


「なんじゃこりゃああ」

「きゃあああ」

「こやつ、〝鬼勇者ヒーロー級〟の強敵だ。全員、鬼術で防御を固めろ。わらわは罠を使うっ」


 艶のない昆布のような黒髪と、ケーキバイキングでぷるぷるに膨らんだお腹の目立つ少女、伊吹いぶき賈南かなんが仲間達に呼びかけ、防衛用の罠を起動する。

 地面や木々に仕掛けられた設置弓せっちきゅう投槍器なげやりきが一斉に動き出し、セグンダに向けて雨あられとばかりに発射した。


奥義開帳インシオデエパタ……っ」


 けれどセグンダが何かを呟きながら手を動かすや、長い刀身が赤く染まり――。

 ギン! という甲高い音を立てて、数十本の矢と槍が逆方向に打ち返されてしまう。


「ばかな、刀で飛び道具を跳ね返しただって?」

「まさかその武器は、出雲が神鳴鬼かみなりのおにケラウノスとの戦いで使った手袋と同じように、〝日緋色金ひひいろかね〟で造られているのか?」

「「うわあああっ」」


 半裸姿の生徒達は、木と鉄のジャンクを浴びて出血し、目を回してバダバタと倒れてしまった。


「ファファファ、そこのお前。左目尻に傷があるじゃないか? 髪もお腹も見る影もなくなっちゃってさ。ご飯もオトコも、食べ過ぎはほどほどにしときなよ、昆布女こんぶおんな!」


 セグンダは、背負った蒸気機関の排気口から赤い霧煙を吐き出しながら、トラバサミや落とし穴といった罠を刀で切り潰し、カモシカのような足で加速。恨み骨髄と言わんばかりに冷えた声音で罵ると、賈南を思い切りビンタした。


「……私は今、二番セグンダと名乗っているよ。昆布女、お前には聞きたいこともあるけど、この第六階層〝シャクヤクの諸島〟には、五馬いつま碩志ひろしと勇者パーティ〝N・A・G・Aニュー・アカデミック・グローリー・エイジ〟が近づいているから、今日はこの一発でチャラにしてあげる!」


 セグンダの容赦ない一撃に、賈南は鼻が折れ頬が切れて、赤い血がだらだらと流れた。


「そいつは、嬉しいのお。セグンダとやら、誰と勘違いしているのか知らないが、わらわの名前は伊吹いぶき賈南かなん。大口を叩くのは結構だが、仲間を傷つけたお前を、妾は逃す気などない。桃太、このワイセツ女を叩きのめせ!」


 賈南はヘビのように長い舌をちろりと見せて不敵に笑うや、ジャージの袖に隠していたスイッチを押し込んだ。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしてセグンダって、ただの変態では? 鎧や服を切り裂いて下着姿にできるなら、首切るほうが簡単ですよ! 賈南が本気になれば剣鬼相手でも楽勝なのは、組合での戦いで証明していますが、力を使う…
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