第221話 決着、それとも?
221
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、彼が被る仮面となった少年、五馬乂は、鉛色の髪を刈り上げた巨漢青年、石貫満勒と、日本人形めいた付喪神の少女、ムラサマの奇策によって、挟み撃ちにされる窮地へ陥った。
「こちらの作戦勝ちだ。卑怯と言うなよ」
「勝った者が強いんでち」
だが……。
「やるね。〝憑依解除〟」
「二人で一人は、オレ達も同じなんだぜ」
桃太もまた、蛇を模した仮面を外して、黄金の光に包まれながら乂と分離――。
二人は絶対に安心できる相棒と背中合わせになって、満勒とムラサマを迎撃した。
「シャシャシャっ。ガキンチョ、最強を目指すなら教えてやるよ。勝ったと思った瞬間が一番危ないんだぜ。変幻抜刀・疾風斬」
「ふぎゃああ!?」
真紅の瞳を持つ金髪ストレートの少年の姿に戻った乂は、左手に握る赤茶色の短剣で、日本人形めいた格好の少女、ムラサマの振るう鉄線を束ねた剣を根本から断ち切り、彼女の首根っこを掴んで拘束――。
「満勒さん、これで決める。〝生太刀・草薙〟!」
「これは、避けられないかっ。くっそおおおっ!」
桃太もまた一撃必殺の手刀で、満勒の蹴りを迎撃する。
――〝生太刀・草薙〟――
この技こそは、桃太が異世界クマ国で、武神と称えられるカムロから学んだ切り札。
半径二メートル内の敵味方を識別した上で、あらゆる防御を貫通し、望んだだけの衝撃を与えるという、文字通りの必殺技だ。
「にゃん、にゃああっ(いけない。乂、桃太君を守って)!」
まさに決着かと思われたその時――。
三毛猫に化けた少女、三縞凛音が、焔学園二年一組ご宿泊するキャンプから飛び出し、甲高い声で鳴いた。
「凛音さん?」
「シャッ、相棒を守れだって?」
凛音は、両の瞳と耳に埋めこまれた〝鬼神具〟、〝ホルスの瞳〟によって、高精度で未来を予測する異能を持っている。
「黒騎士以外に草薙を止めるなんて、さ、サメエエ?」
「猫さん。貴方はっ、はわわっ」
何かよくない未来でも見たのだろうか?
小さな猫は、〝鬼の力〟による怪力を発揮し、鉄線で縛られた銀髪碧眼の少女、建速紗雨と、女教師の矢上遥花を、器用にキャンプの方向へぶん投げた。
放り投げられた二人は、凛音が間違った未来を予測したのではないかと疑ったが――、彼女の計算結果は正しかった。
「奥義開帳、〝飛燕返し〟!」
紗雨と遥花が大きな亀裂を越えて、焔学園二年一組のキャンプ付近の地面に落下した直後。
森の中から、銀色に輝く細く長い刀が飛び出し、あたかも燕が飛ぶような変幻自在の軌跡を描きながら、桃太の右手の甲を打ったからだ。
「まだ伏兵がいたのか?」
「嘘だろっ、まるで気配が無かったぞ」
「シショーっ、真剣勝負に水をさすなっ。うわああっ!?」
「ひえええ、でちっ!?」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)