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第216話 剛と柔

216


「ヒャッハァっ。忍者だか知らないが、フェイントなんてつまらない真似はするなよ。覇者の一撃は、当たれば一発。満塁ホームランよ!」

「とらぬたぬきの皮算用。まず当てててから言おう」

「シャシャシャ。一撃必殺とはいかなかったが、持久戦も悪くない。そっちのムラサマって大剣ほどゴツくはないが、オレが使うナマクラも頑丈なのが取り柄だぜ」


 蛇の仮面となった五馬いつまがいは、自らを被った相棒の少年、出雲いずも桃太とうたの肉体を使い、右手に握る黄金色に輝く短刀で、鉛色の髪を刈り上げた巨漢、石貫いしぬき満勒みろくのぶん回す大剣ムラサマと真っ向から切り結んだ。


「面白いっ。そんなちっぽけなナイフで戦えるのか。素晴らしいっ。やはり世の中は、まだ見ぬ輝きに溢れている!」


 満勒は小回りのきかない大振りな剣技の隙を格闘術で埋めるとばかりに、左の拳から炎を発し、丸太のように太い腕で殴りつけてくる。


「そうかいっ。だったらつまらない陰謀になんか手を貸すんじゃないっ」


 桃太は乂から身体の主導権を交代し、満勒の腕が伸び切る前に頭を下げて潜り抜け、厚い胸板に左の肘打ちをぶつける。

 続けて手の甲で殴る裏拳をこめかみに浴びせ、シャツの上からでもわかるシックスパックに割れた腹を膝蹴ひざげりで追撃と、怒涛どどうの勢いで攻め続けた。


「ヒャッハァ。いいね、いいね。きたえた甲斐があるというものだ!」

「満勒、楽しむには早いでち。こいつら戦い慣れている!」


 桃太と乂が注意を引き付けているうちに――。


「先ほどの大技で地面が陥没かんぼつし、この戦場はキャンプと分断されてしまいました。けれど、やなぎ心紺ここんさんや、祖平そひら遠亜とあさんなら必ず対処法を見つけ出すはず」


 担任教師である矢上やがみ遥花はるかが、大きな胸を弾ませながらリボンを伸ばして周囲に防衛陣地をつくり……。


「分断されているから、遠慮なく水を使えるサメエ」


 空飛ぶサメに化けた少女、建速たけはや紗雨さあめが穴から染み出す地下水を利用し、水たまりを徐々に拡大……。

 周囲一帯の地面を泥地にすることで、重量級である満勒とムラサマの動きを鈍らせる。


「ヒャッハァっ。それでこそ、だ。殺し合いらしくなってきたじゃないか!」

「満勒さん、俺は命の取り合いなんてごめんだっ」


 桃太は、遥花と紗雨の支援を受けて、どうにか戦闘力を削ごうと試みるが……。

 満勒は、無尽蔵かと思われるほどの体力で、戦えば戦うほどに力がみなぎり、動きのキレも増して行く。


「なぜクーデターを望む? なぜうたさんを殺そうとする? いったいどんな理由があるっていうんだ?」


 桃太は、これだけの肉体を作るほどの鍛錬を重ねながら、なぜ悪行に手を染めるのかと、問わずにはいられなかった。


「ヒャハッ。俺様の上司、六辻ろくつじ久蔵きゅうぞうは、シショー……新しい影武者を手に入れたから、本物の古い神輿みこしはいらないんだとよ。ジジイどもの思惑はどうでもいいが、この世の秩序をぶち壊す為には、八大勇者パーティ当主の首をとるのも悪くない。わかるか、クーデターもニワトリ娘の命も、全ては俺様が輝くための舞台装置だ」

「身勝手なことをっ」


 桃太は奥歯を噛み締めながら、彼の右顔に張り付く仮面の相棒、がいが使う風の力を借りて加速。

 荒れた地面を蝶のように舞いながら、蜂のように鋭く踏み込み……。

 満勒が伸ばした腕の根本に、自身の腕を差し入れて、一本背負いの要領で投げ飛ばした。


「乂の好きなプロレス技からヒントを得た、巻投まきなげだ。どうだっ、じゅうよくごうを制すってね」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] このセリフだと、石貫満勒の立場は、六辻家に雇われたという感じでしょうか。 六辻家のクーデターも自分のための舞台装置だって言い切っていますし、 「輝くため」というのが何を意味しているのかが問題…
[一言] >シショー……新しい影武者 ……常時ビキニアーマー姿でしたっけ? やっぱりあの人じゃ
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