第201話 隠れていたニワトリ?
201
西暦二〇X二年七月一二日昼。
明日からの海水浴を控え、焔学園二年一組の女子生徒達は、冒険者パーティ〝Chefs〟が提供してくれたケーキバイキングで食べ過ぎたため、ダイエットのための狩猟大会に集中していた。
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太ら男子生徒と、節制を守って太らなかった瓶底メガネの少女、祖平遠亜らは雑談にふけっていたのだが、不意に「コケエエエッ」という珍妙な悲鳴があがった。
「また誰かが体重計に乗ったのか?」
「昨日よりも深刻そうな悲鳴だった気がするぞ」
「それにしても、コケエッて悲鳴は変だよ」
「今の声に、俺は聞き覚えがない」
桃太の感想に、髪を七三分けで固めた少年、羅生正之ら、男子生徒達の顔色が変わった。
普段ならばいざ知らず、今の女子達は色々と加減がきかない。
勢い余って他所のパーティに攻撃をしかけたのではないか、と心配になったのだ。
「コケーっ。およしになって、食べないでええ」
「あの悲鳴は、〝Chefs〟のリヤカーの側から聞こえてくる」
「出雲君、私も行く。急ごう」
「まったく何をやっている。ニンゲンを狩る奴がいるか!?」
ひとまず桃太と、遠亜、羅生の三人が駆けつけると――。
「コケーっ。わたくしは、ただ日向ぼっこをしていただけなんですのよおおっ」
――そこにいたのは、人語を話すニワトリだった。
「「ニワトリがしゃべってるー!?」」
桃太ら三人は、驚きのあまり腰を抜かしかけた。
「桃太おにーさん達も来てくれたサメエ」
「先ほど、〝Chefs〟の方々から、リヤカー周辺で奇妙な音がするから調べて欲しい、と手伝いを頼まれたんです」
「モンスターかなってあちこち探したら、しゃべるニワトリがいたんだ」
赤いトサカのついた白いニワトリをリヤカーの狭間に追い詰めていたのは、銀髪碧眼の少女、建速紗雨、栗色の髪を赤いリボンで結んだ担任教師の矢上遥花、サイドポニーの目立つ少女、柳心紺の三人だった。
赤いトサカのニワトリはガクブルと震えながら逃げ道を探していたが……。
「サメメエ」
「怖がらないでくださいね」
「〝砂丘〟展開!」
桃太が見る限り、紗雨が水を操り壁を作って逃げ道をふさぎ、遥花がリボンで補強。心紺がサイドポニーの鬘から引き出した、砂型の自律兵装で包囲している。
およそこのメンバーが相手では、どうにもならなかっただろう。
「紗雨ちゃん、遥花先生、柳さん。ニワトリはしゃべらないのでは?」
「新種のモンスターかもと思ったけど、貴方はひょっとしてクマ国の関係者サメエ?」
「コケー? あ、あなた方は、クマ国のことを知っているのですか?」
紗雨の言葉が気になったのか、怯えきっていたニワトリが、トサカのついた頭を突き出してきた。
「もちろんだサメエ」
紗雨は応えるように、ぼふんと煙をだして銀色の空飛ぶサメに変身する。
「コケーっ。サメ、サメですわっ。食べないでくださいいい」
が、彼女の姿を見たニワトリは、二本足をバタバタさせながら、半狂乱になって暴れ回った。
逃げ場のない袋小路でサメに追い詰められたのだ。悲鳴をあげるのもいたしかたないだろう。
「しまったサメエ」
「コケエエエ、お、オタスケー」
ぼふんという気の抜けた音を立てて……。
空飛ぶサメの格好だった紗雨が、ジンベエザメの着ぐるみを着た少女の姿に戻ると、赤いトサカのついたニワトリもまた人間の女の子へ変身した。
「食べないでくださーい。わたくしは、美味しくなんてありませんわーっ」
おそらくは桃太と同年代か、一つ年上だろう。
年上の遥花には及ばないものの、まるまるとした胸やお尻が愛らしい、スタイルの良い少女だった。
しかし、二つのお団子髪でまとめた赤い頭髪の上に、天使を連想させる光輪が浮いていたことが、彼女がただの人間ではないと証明していた。
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)





