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第187話 〝八岐大蛇・四の首〟との戦い

187


「もうやめろっ。盗んで、奪って、貴方は何がしたいんだ」

「い、命をなんだと思っているサメエ」

「キシシシシ、足を止めたな。敵であっても情けをかけようとする中途半端さ。そんなだから、貴様達は愚かだというんだ。私は違う。私には世界を思うがままにするために、革命を遂行する気高い志がある。こうして有象無象うぞうむぞうを喰らうことをどうしてためらうものか!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたと、彼の顔左半分に張り付くサメの仮面となった少女、建速たけはや紗雨さあめの抗議に対し……。

 ドラゴンゾンビとなった四鳴しめい啓介けいすけは腐り果てた爬虫類の口を動かして、悪臭をぶちまけながら、平然と言い放った。


「いいえ、この世界に生きる誰一人として、貴方のような犯罪者の妄執もうしゅうを認めません!」


 しかし、栗色髪の女教師、矢上やがみ遥花はるかが、スーツの上からも目立つ大きな胸を弾ませながら、ぴしゃりと啓介を一喝。

 赤いリボン、〝夜叉ヤクシニーの羽衣〟を伸ばして、冒険者達から命を奪うドラゴンゾンビの黒い糸をねじ切った。


八岐大蛇やまたのおろち〝第四の首〟よ、お前の選んだ代行者もなかなかだった。四鳴啓介、金メッキが剥がれ、腐敗した肉体こそお前の真実の姿。己が欲望のままに、殺し、奪い、破壊し、操る、まさに外道を体現する素晴らしい鬼よ」


 続いて昆布のように艶の無い黒髪の少女、伊吹賈南が進み出て、槍の生えた大玉や空中で爆発する機雷といったトラップを投げつけ、釘付けにする。


「だが、仮にも神を名乗るならば、当然知っているのだろう? 地球には……討たれた神の伝承も山ほどあるということを!」

「なん、だと?」


 そう。八岐大蛇。

 あるいは、伊吹いぶき大明神だいみょうじんは、暴虐の果てに素戔嗚尊すさのおのみことに討伐されたのだ。


「なるほど、大蛇、第四の首となったお前の生命力と修復力は凄まじい。蛇髪鬼へびかみおにゴルゴーンよりも、神鳴鬼かみなりのおにケラウノスよりも強いかも知れん。それでも出雲桃太は、お前に勝つだろう。なぜなら、妾達も手を貸すのだから!」

「「そうだそうだ。出雲だけに良い格好はさせないぜ」」


 遥花や賈南に負けじと、焔学園二年一組の生徒達が、ドラゴンゾンビを牽制けんせいしつつ、人質となったS・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟団員の救出を開始した。


「なあにが、革命だ。自分の思い通りにならないから暴れるなんてチンピラよりダッサイよなあ!」


 リーゼントが雄々しい林魚はやしうお旋斧せんぶら、前衛部隊が剣や斧を振り回して、啓介の伸ばす黒く輝く糸を切り払い――。


「アンタのような独裁者はいらないんだっ。やってやる」


 関中せきなか利雄としおら、弓や投擲武器で遊撃部隊が機動性を生かして、腐肉が寄せ集まった竜に矢玉を浴びせ――。


「お前のような身勝手な悪鬼に、人の上に立つ資格などあるものか。出雲、人質の治療は任せろ」


 羅生らしょう正之まさゆきら、鬼術師部隊が石化した〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の隊員達を治療する――。


「ものを知らないクソガキどもめ、私を誰だと思っている。勇者だぞ、大蛇だぞ、なぜ私に従わない。なぜ私の思い通りにしないんだああっ」


 啓介は障害と憎んだ桃太や紗雨ばかりでなく、アリのように見下していた冒険者見習い達が、恐れることなく自身へ弓を引くことに、説明しようもない怒りを覚えていた。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 伊吹賈南は普通に敵対するのですね。 三の首の時はいかにも中立って印象でしたが、大蛇同士で戦うのも問題ないようですね。 ある程度伝承に則った戦法が有効なのだとしたら……。 ドラゴンゾンビを倒…
[一言] >討たれた神の伝承も山ほどあるということを! そうですね(某バビロニア見ながら)……なんで生粋の神に一撃で死の要素付与できるの?
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