第183話 呉陸羽を救い出せ
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西暦二〇X二年六月三〇日、夕刻。
額に十字傷を刻まれた上半身裸の少年、出雲桃太は、衝撃波の拡散と収束を利用した新必殺、〝生太刀・草薙、砲車雲〟で、テロリスト団体〝S・E・I 〟代表の四鳴啓介が操る全長一〇メートルに及ぶ巨大な鋼の鬼、神鳴鬼ケラウノスを破壊した。
「ウート! 相棒っ」
「ああ、やったよ。乂、凛音さん」
「にゃにゃあにゃあ(これで蛇髪鬼ゴルゴーンに集中できる)」
桃太は蒸気バイクに戻り、黄金の蛇となった五馬乂、三毛猫姿の三縞凛音と抱き合った。
「これで、リウちゃんを助けにいけるんだね」
「ケラウノスが尻餅をついた時、波にさらわれるのを見たから、湖の浅瀬に居るはずだ。そうだろう、凛音?」
「にゃん、にゃにゃー(ええ、あの子は暴走した鬼神具の中に埋まっているみたいだから、外は壊して構わない。バイクに乗って、あと一撃だけ風の翼を使って。ワタシの焔と合わせて助けるから)」
桃太は黄金の蛇と、三毛猫をバイクのフロントポケットに運び入れて、シートに腰掛け、蒸気エンジンをふかして浅瀬を目指した。
(オウモさんは、俺が使う〝巫の力〟と〝鬼の力を宿す機械〟の相性が悪いって言っていたけれど、ちょっとの時間乗るくらいなら大丈夫だろう)
乂と一体化して運転したことで、おおよその感覚は掴めている。
操縦の主体が乂から桃太に変わっても、空を飛ぶのはともかく、地上を走るくらいはできそうだった。
「祖平さん、柳さん、ブンオー。支援を頼む。蛇髪鬼ゴルゴーンの中には、リッキーの妹、呉陸羽ちゃんが捕まってる。黒騎士、手を貸してくれ。今度こそ彼女を取り戻す!」
桃太の呼びかけに応じて――。
「まっかせてっ。治癒薬で石化も解けたから動けるよ!」
「ここまで来たらハッピーエンドで終わらせよう」
「BUNOO!」
祖平遠亜、柳心紺は、八本足の虎ブンオーに乗って元気よく駆け出し――。
「!!」
黒騎士もまた左腕から銃器を取り出しながら、正反対の方向からバイクで突撃する――。
「AAAAAAA」
蛇髪鬼ゴルゴーンは、狙われていることを察したのだろう。
髪から伸びる蛇の群れを一斉に暴れさせた。
啓介の悪意は、陸羽が契約した〝鬼神具、ペガサスの沓〟を今なお縛り付けているのだ。
「「鬼術・射手座!!」」
遠亜、心紺、ブンオーは、そんなゴルゴーンに対し、マントである砂丘を変化させた砂剣を降らせ、地雷と爆導索を浴びせる。
「戦闘機能選択、モード〝狩猟鬼〟。戦闘続行!」
そうして、足が止まってしまえば動かない的も同じ。
黒騎士は二輪車の上から左腕の銃を構え、器用に蛇の塊を撃ち払った。
「出雲、力を貸すぜ」
「我々も参加するぞ」
「あの子を助けてちょうだい」
更には、焔学園二年一組と勇者パーティ〝N・A・G・A〟だけでなく、、〝S・E・I 〟までが、四鳴啓介による最後の犠牲者を救うために戦闘に参加した。
蛇髪鬼ゴルゴーンは、四方八方から攻撃を浴びながら泣くような声で謝罪を続ける。
「トータサン、ゴメンナサイ」
「何度だって言う。リウちゃんは悪くない」
桃太は支援攻撃のおかけで、安全運転でゴルゴーンの側まで近づけた。
「俺はこのままバイクを直進させる。乂は、風の翼のコントロールを頼む。凛音さん、タイミングの見極めと浄化をお願い」
「見えた、このタイミングよ」
「天鳳浄炎翼とでも名付けるか。いっけえ!」
桃太と乂が生み出す風の翼が、凛音の力で炎の翼となって、蛇髪鬼ゴルゴーンとなった〝鬼神具〟を焼き、呉陸羽の肉体を分離させる。
「臨兵闘者皆陣烈在前――九字封印! リウちゃん、手を掴んで!」
桃太は、両手の人差し指を立てて印を結び、親友の妹を救出すべく手を伸ばした。
あとがき
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