第172話 援軍登場
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「我流・螺子回転刃」
「AAAAAA!!」
出雲桃太は、四鳴啓介が操る〝錐嘴鳥〟の爆撃を逆利用してボウル状の反射空間に閉じ込めて衝撃刃を回し――、三〇〇体もの式鬼を、ミキサーやフードプロセッサーにでもかけたかの如くに消し飛ばした。
「!?」
群れの真下にいた黒騎士は、三〇〇体分のミンチ肉が落下しては叶わないと蒸気エンジンを吹かすも……。
〝錐嘴鳥〟はすでに〝式鬼〟に加工されていたせいか、ビリビリに刻まれた呪符が清水砦の上空に散らばって、やがて赤い霧と黒い雪になって溶け消えた。
「す、凄いサメエ。桃太おにーさん、更に強くなったサメエ」
「お姉さん。いいえ、先生も誇らしいですっ」
「英雄だ。新たな英雄が帰ってきた」
「勝てるぞ、生き延びられるんだ!」
銀髪碧眼の少女、武速紗雨や、栗色髪の女教師、矢上遥花ら焔学園二年一組の生徒達と、幸保商二ら、勇者パーティ〝N・A・G・A〟の冒険者達は桃太の帰還と反撃に拍手喝采し、おおいに士気をあげた。
「ち、地上を焼き払うための貴重な戦力をこんな雑魚相手に失っただと? おのれ世界皇帝に喧嘩を売ったこと、後悔させてやるぞおお」
その一方、四鳴啓介はS・E・I 〟の主戦力となる空中戦力を失ったことに衝撃を受け、神鳴鬼ケラウノスのコックピットで手足をバタバタと振り回しながら激昂した。
「啓介さんが安易に密集させるからだろう。アンタの狙いは単純過ぎるんだ」
桃太は、全長一〇メートルに及ぶ雷をまとった巨大な鬼を見上げながら、呆れたように呟く。
黒騎士と模擬戦で試した時は、そもそも反射するのが困難で、たまに成功しても命中すること叶わず、広範囲を巻き込もうと編み出した〝我流・螺子回転刃〟さえも、大技が来ると見切られ、距離を詰められて潰された。
仮に〝C・H・O〟の代表、三縞凛音や、副代表である鷹舟俊忠が相手だったとしても、やはり有効打を与えるのは困難だろう。
桃太の視線を哀れみと解釈したのか、啓介は口角泡を飛ばしながら吠えたけった。
「単純の何が悪い。最強の力とこれだけの兵力があるのだ。さきほどの技は至近距離では使えないと見た。ならば遠距離爆撃でなく、近接戦闘で仕留めればいい。世界皇帝の、王者の戦いを見せてやろう。来い、我が天下無敵の〝鋼騎士〟と〝式鬼〟よ」
「あ、ア、AAAA……」
どうやら啓介は飛行戦力を失った穴を、地上戦力を結集させることで補填するつもりらしい。
「……先頭にいるのは、須口純怜さんだっけ? 式鬼ならともかく、人間相手にカシナートはやりたくないなあ」
「!!」
「キシシシ。無知蒙昧な井の中の蛙め、今こそ革命の最先端、その輝きを見るがいい!」
かつて第六階層〝シャクヤクの諸島〟で交戦した灰色鎧の冒険者〝鋼騎士〟部隊や赤い八本足の式鬼〝八足虎〟が、啓介が操る糸に操られるがまま、続々と南の湖畔に集まってくるが――。
「なあにが革命さ? 四鳴啓介、アンタの理念は古臭い独裁じゃないか!」
「手段を選ばないだけの哀れな男。革命されるべき愚かな暴君は、貴方だ」
「GAA!?」
サイドポニーの目立つ少女、柳心紺と、瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜が、機械弓から放った矢と衝撃を付与した杖を、軍勢の先頭集団に撃ち込んで転倒させ、出鼻を挫く。
「我流・手裏剣」
「!!」
桃太と黒騎士はその隙を逃さず、衝撃をこめた石礫と、鬼の力で破壊力を増した銃弾を放って軍勢の一角を崩し、蒸気バイクで包囲網を抜け出した。
「柳さん、祖平さん、間に合ったか」
「ちいいっ、裏切り者とメガネ女かあっ!?」
あとがき
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