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第158話 前進同盟の構成員とその目的

158


「オウモさん。貴方は、異世界間戦争を引き起こすつもりですか?」

「そうだと言ったら?」


 出雲いずも桃太とうたは、異世界クマ国の政治結社〝前進同盟ぜんしんどうめい〟の代表を名乗る、紫色のフルプレートアーマーに身を包んだ女性、オウモの危険な返答に言葉を失った。


「……」


 戦友のやなぎ心紺ここんや、祖平そひら遠亜とあもまた、オウモの言葉に大きな衝撃を受けたらしい。


「じ、冗談だよね。出雲や紗雨さあめちゃんから聞いたクマ国は、もっとこう穏やかで楽しそうな雰囲気だったじゃない?」

「地球全土を敵に回すことになる。異界迷宮カクリヨを挟んでの侵略なんて、非現実的だ」


 桃太の戦友、心紺ここんはサイドポニーを力なく机におとし、遠亜とあも瓶底メガネの奥にある瞳を閉じて浅い呼吸を繰り返している。


「出雲クン、柳サン、祖平サン。我々は、一葉いちは朱蘭しゅらんと〝J・Y・Oジュディシャス・ヤング・オーダー〟の協力を得て、パワードスーツやホバーベースを作りあげた。吾輩達の持つクマ国の知識と、地球の技術を融合させれば、双方の世界の十年先の装備を用意できるんだ。それでも地球への進出が不可能だと思っているのかネ?」

「強ければ何をしてもいいと仰るのですか?」


 桃太は、心紺や遠亜と目配せを交わし、もはやここまでと見切りをつけた。

 三人が交渉を打ち切り、席を立とうとするとバッキーンという派手な音が響いた。

 黒騎士がすっと立ち上がり、オウモの紫鎧に鋭い手刀を浴びせるという、容赦のないツッコミを入れたのだ。


「あ、あいったあ。やめろよ、ちょっと驚かせようとサプライズ演出しただけじゃないか」

「!!」


 オウモが痛みに悶絶する横で、黒騎士は桃太達に向かい合い、ホバーベースの外を指さした。

 クマ国の人々に交じって、アジアや東欧の出身らしき地球人が、車体のメンテナンスや採掘場からの物資回収など、あれやこれやと働いている。


「ハイハイ、わかったヨ。ちゃんと説明する。出雲クンはカムロから聞いたかも知れないが、日本政府、いや日本を含む地球の国々には隠していることがある」

「あんまり信用できないけど、隠していることって、なんなのさ」

「クマ国の存在が隠されていることであれば、もう出雲から聞いている」

 

 オウモは心紺や遠亜の冷たい目線にも動じず、言葉を続けた。


「……半世紀以上前、地球が冷戦と呼ばれる二大陣営に別れて対立していた頃のことだ。北の軍事独裁国家が行った新型兵器の暴走により、地球は異界迷宮カクリヨやクマ国と繋がった。そして、独裁国を中心とする国々は、今、日本でやらかしている勇者パーティのように、先を争うように〝鬼の力〟を求め汚染されて、身内同士で殺し合って滅んだんだ」


 桃太は既に知っていたし、遠亜も心紺も元勇者パーティからテロリスト団体に堕ちた〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟や、〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟、〝J・Y・Oジュディシャス・ヤング・オーダー〟の暴走を見ていたため、ありうると納得した。


「地球上にある亡んだ国の土地は、異界迷宮カクリヨと等しく、モンスターのはびこる危険地帯となっている。だが、住民まで全滅したわけじゃない。わずかな生き残りがクマ国に逃げ延びた」


 オウモは顔を隠して声も変えたままだが、改めて桃太達に向き直った。


「我々〝前進同盟〟の構成員は、失った自分たちの国を取り戻したいという元地球人が半分、彼や彼女達を支えようとするクマ国の有志が半分さ。八岐大蛇やまたのおろちの根絶が目的という言葉に偽りはない。地球侵略を望んでいるのではなく、ただ彼や彼女達が帰るための国を建てたいだけだ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >失った自分たちの国を取り戻したいという元地球人が半分 オウモ「彼らはクマ国で過酷な労働をこなしてきたんだ……。そう一日25時間以上の労働をね(時間干渉中の某人物の映像を出しながら)」
[一言] 前進同盟の技術力を披露していますが、まったく軽視できません。 これまでの状況を見ると、クマ国って一方的に地球を侵略できそうなんですよね。 それをしないのは、カムロさんの影響力が大きいのだろう…
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