第155話 代表室の戦い、決着
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西暦二〇X二年六月八日午後。
獅子央孝恵は、オンライン上で開催された冒険者組合臨時総会において――。
四鳴啓介を代表とする〝S・E・I 〟。
一葉朱蘭が中心となった〝J・Y・O〟。
日本国へのクーデターを目論んだ、二つの勇者パーティを除名した。
されど、戦いが終わったわけではない。
「一〇対一。いや一〇対二だったはずが、残るは隊長の俺だけか。ミスターシノビとやら、今は亡き五馬乂様に匹敵する、〝葉隠〟の使い手と戦えるとは光栄だ。ならばこそ、その首をもらってゆく」
冒険者組合本部を襲った〝鋼騎士〟の隊長、志多都十夢は、蒸気鎧のエンジンを全開で回し、オルガンパイプ型排気口から赤黒い煙をたなびかせつつ――。
孝恵の護衛を務めるアルバイター、ミスターシノビこと天狗面をかぶった金髪少年、五馬乂と、三毛猫に化けた三縞凛音に対し、身の丈ほどもある巨大斧を叩きつけた。
「かの〝C・H・O〟の〝剣鬼〟鷹舟俊忠を超えるべく鍛えた我が奥義――山崩し――、お前に見切れるか!」
蒸気鎧が生み出す膨大なパワーと、それを制御しうるベテラン冒険者のテクニックが相乗作用となって、大質量かつ変幻自在の一〇連続攻撃が放たれる。
「はっ。今のオレに見切れない技なんて、なにっ!?」
乂は凛音の〝鬼神具〟。
未来をも見通す、ホルスの瞳の力を借りることで、志多の攻撃、その軌跡を予知できた。
だからこそ、自分たちが絶体絶命の窮地にあるとわかってしまう。
志多の必殺技、山崩しを回避することは不可能だ、と。
「志多。以前のオレならダメだったかもな」
「にゃー(乂)」
乂は、相棒たる少年、出雲桃太と一体化し、共に戦う中で理解した。
ただのヒトに過ぎない彼がどうやって鬼と戦うか?
空気の音から心音までも聞き届け、わずかな隙、わずかな力の強弱すら見抜いて、タイトロープを渡るように生と死の狭間を切り抜けるのだ。
「凛音、力を貸してくれ。オレ達二人なら、勝てる!」
乂ひとりでは同じことは不可能だろう。
しかし、ここには半年前の騒乱で、彼の腕中に奪い返した幼馴染、三縞凛音がいる。
「にゃー(死ななければ、どんな傷だって癒やしてみせる)」
乂は、椅子やソファを紙切れのように消し飛ばしながら迫ってくる、連続技に対し……。
凛音が灯す治癒の炎で癒しつつ、真っ向勝負で殴り止めた。
特殊合金の正門すら破壊した巨大斧とぶつかって、乂の指が裂け、腕がきしみ、足が悲鳴をあげても、志多を相手に撃ち合うのをやめない。
「オレは、相棒と幼馴染に誇れるオレでありたい。だから、勝つっ」
「ふははは。我が好敵手、鷹舟俊忠よ。俺は遂にお前を超える戦士と巡り合えたぞ」
乂は炎と風をまとった短剣で、志多の振るう巨大斧と切り結び――。
「変幻抜刀・炎風斬!」
「まさか、抜かれた!?」
ほのわずかな呼吸、肉体動作のゆらぎを突いて短剣を繰り出し、灰色鎧を破壊して蒸気機関を沈黙させる。
「二体一だから勝った。タイマンならアンタの勝ちだ」
「謙遜は無用。お前達の勝利、みごと、なり」
あとがき
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