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第153話 錦の御旗は誰の手に?

153


「そんな、勇者パーティ〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の地上部隊が、すでに逮捕されたなんて……」


 三角帽子を被った〝黒鬼術士ソーサラー〟、四鳴しめい葛与かつよは、日本国へのクーデターの為に伏せていた部下の反応が消えたことを把握したらしい。


「地上では電子機器や精密機械が使えるから、〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の誇るパワードスーツも絶対的な優位とはならないのね」


 彼女は心を落ち着けて覚悟するかのように、三角帽子を抜いでより深く被り直した。

 孝恵が五馬いつま家と共に強固な防衛を固めた以上、四鳴しめい家の拙速な反乱が成功する可能性は低かった。


「……孝恵たかよし様は、啓介が出雲桃太に嫉妬し、国家掌握の野心を秘めていたことに、気づいていたのですね」

「ぼくも四鳴家と〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟がここまでやるとは思っていなかったんだな。それでも万が一に備えて矢上遥花やがみはるかを担任教師に迎え、精鋭の研修生を集めて二年一組を作ったし、五馬いつま家とも連絡を取ったんだ、な」


 四鳴しめい葛与かつよ獅子央ししおう孝恵たかよしのやりとりを聞いて、八大勇者パーティの幹部を中心とする、オンライン会議の出席者たちが一斉にどよめいた。


「四鳴家は日本中の企業と取引があります。そちらはどうするおつもりですか?」

「に、日本政府と交渉済みなんだな。民間人は巻き込まないから安心して欲しい、んだな」

「我々は眠れる竜ではなく、自ら火に飛び込んだ愚かな食用鶏ブロイラーでしたか」


 八大勇者パーティは、これまで孝恵たかよしことをお飾りの代表と軽んじていた。

 しかし、そんな彼が四鳴家を手玉に取ったことで、焔学園の始業式で八大勇者パーティーの専横を危惧きぐする演説をぶった重みを今更理解したのだろう。


「葛与さんは、犠牲を望まない良いひとなんだな。四鳴家は、人を人とも思わない悪人の啓介じゃなくて貴女を当主にするべきだったんだな」

「いいえ、孝恵代表。わたしは悪人で、貴方の真実の姿を見誤った愚か者です。ですが、それでも四鳴の指揮官。異界迷宮カクリヨに残る〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の戦力を用いて、今度こそ日本を掌中に収めるとしましょう。次はに会うときは戦場で」


 モニターに映る葛与が、三角帽子を脱いで別れを告げるや……。


「待て、貴女まで啓介と心中することはない」

「そうだ。貴女を歓迎するから我々八闇はちくら家と共に」


 八闇はちくら家を中心に、彼女を引き止める声が続出した。

 しかし、葛与は振り返ることなく、オンライン会議からログアウトした。


「キハハハ。ざまをみろってんだい」


 一方、四鳴啓介と冒険者パーティ〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の失墜を誰よりも喜んだのは、冒険者組合の次期代表の座を争った一葉いちは朱蘭しゅらんだった。


「今から本部へ一葉家の手勢を送るよ。次の代表候補である私がアンタを救うんだから、宣伝効果もバッチリだろう。それにしても、護衛のやなぎ静香しずか北宮きたみやじゅんはどうした? 役立たずなら、一葉から護衛を派遣してやろうかい?」

「いらないんだな」


 朱蘭が歯を剥き出しに鬼気迫る表情で申し出るも、孝恵たかよしは恵比寿神のようにゆったりした表情を浮かべて提案を拒否した。


「だって、一葉家と〝J・Y・Oジュディシャス・ヤング・オーダー〟は昨日、桃太君の御家族を襲っただろう? 朱蘭さんの耳にはまだ入っていないようだけど、静香しずかさんとじゅん君は彼の御家族を守り、実行犯を捕まえてくれたんだな」


 一葉いちは朱蘭しゅらんの、酔って赤くなったたふてぶてしい顔から、すっと血の気が引いて青ざめた。


「キ、キハハハっ。孝恵。アンタは四鳴だけじゃなくて、一葉もここで追放するつもりかい?」

「ただ、真実を明らかにするだけなんだな」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >四鳴だけじゃなくて、一葉もここで追放するつもりかい? 孝恵(斬魄〇を持ちながら)「いつから潰されるのが四鳴だけだと思ってたんだな?」
[一言] おお、前にも言ったかも知れませんが、獅子央孝恵は獅子央賈南と離婚してからというもの、覚醒したような雰囲気を感じます。 親の七光りイメージから、日本企業と政治的駆け引きまで出来るようになってい…
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