第144話 応報の末路
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出雲桃太は、勇者パーティ〝S・E・I 〟が、拉致した小中学生の少年少女に、日緋色金の採掘を強いる不法な労働施設を発見。
祖平遠亜と、柳心紺、式鬼のブンオーと力を合わせて門を乗り越え、粗井露範と名乗った〝鋼騎士〟一人の無力化に成功した。
「トータさんだ、ホンモノ!?」
「ヒーローだ。ユウシャサマがやってきた!」
「ワルイヤツをやっつけて!」
狭い穴の中でも 働かされていた子供たちが、桃太達の姿を見て歓声をあげる。
「出雲桃太に、裏切り者の柳心紺じゃないか! さては、ここいらの採掘場を荒らし回っていたのは、お前達だなっ。英雄気取りが鬱陶しいんだよおっ」
「何を勘違いしているのか知らないが、鉱石が欲しいなら、拉致した子供を使わずにお前達が掘ればいい!」
子供達を見張っていた灰色の蒸気鎧を着た男が、背部の排気口から赤黒い煙を吐き出しながら、身の丈よりも長い幅広の剣を抜いて斬りつけてくる。
「ひゃはは、真っ二つにしてやるぜえ」
「蒸気機関は強いが、それだけだ」
桃太は剣の腹に手を沿わせ、衝撃波で怪力を相殺しつつ飛び退いて、後方からの射線を通した。
「出雲君の言う通り。貴方たちみたいな外道は必ず報いを受けるのよ。鬼術・長巻改」
「な、なんだこの技は? うわああああ」
瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜が、衝撃波を巻きつけた杖を投げつけ、〝鋼騎士〟の鎧、その腹部を砕いて吹っ飛ばした。
「なんだいなんだい、報いだって? 私達は身寄りの無いガキを助けてやっている聖人だよ。変に正義漢ぶっちゃって、キモいんだよ。援軍を呼んで袋叩きにしてやるからね!」
採掘場に残る最後の〝鋼騎士〟、灰色の蒸気鎧を着た女は、もはや勝てぬと悟ったのかヒステリックな金切り声をあげながら、子供の一人を人質にとろうと試みたが――。
「アタシ、この前まで〝S・E・I 〟に参加してる人は、無理矢理従わされているとばかり思ってた。そんなことなかったね」
「ち、ちくしょうめえええ」
同じ灰色の蒸気鎧サイドポニーの少女、柳心紺が籠手に取り付けた仕掛弓で卑怯者に矢を射かけて阻止する。
女性犯罪者は諦めて一人で門まで逃げたものの、再び矢を装填した心紺が手足を射貫くことで戦闘能力を奪った。
「よしっ、ここにいる大人の反応は三人だった。無事解決だ」
「やった」
「いえーい」
桃太達はハイタッチを交わし、子供達に向かって歩き始めた。
出迎えだろうか? 虐げられていた子供達のうち最年長らしい少女が、桃太達の射る門の方角に向かって走ってくる。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
「怪我はない?」
「もう怖い人はいなくなったよ」
桃太達は少女を抱き止めようとしたものの、なぜか彼女は横を通り過ぎていった。
「だめっ、トータさん、おねーさん!」
「そいつ、ニンゲンじゃない。ワルイオトナのなかまだ」
桃太達は咄嗟のことで、状況を把握できなかった。
「GRUUUU!」
だが、走る少女の下半身が紙束のように変化して馬になったことで、のっぴきならない事態だと知った。
「あいつも〝式鬼〟か」
「矢上先生が言っていた。あれはケルピー、人に化けるモンスターだ」
「いけない。ブンオー、行って!」
「BUNOOO!」
心紺の指示で、彼女の〝式鬼〟である赤い八本足の虎、ブンオーが飛び出し、ケルピーを打ち倒すも既に遅い。
式鬼は倒される寸前、〝鋼騎士〟の女がやろうとしたように、採掘場と外界を隔てる門を開けてしまっていた。
「「GUOOOO」」
そして、式鬼ケルピーが門が開いたことで、ブンオーの元となった野生のモンスター、黄色い八本足の虎が五匹、内部へと入り込んでくる。
「門の近くにはまだ〝鋼騎士〟が三人居る。子供達は目を閉じろ!」
桃太の叫びにどれだけの子供たちが従ったかは、わからない。
「ひ、やめろ。やめてくれ。我を聖者、粗井露範と知っての狼藉か」
「お、おれたちは善行をつんだのに、なぜええ」
「よ、余計な真似をして、あぎゃあああ!?」
聖者をきどる悪党三人は、獣に頭から爪先まで、貪り食われる末路を遂げた。
あとがき
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