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第143話 不法労働施設の戦い

143


「これが、勇者パーティのやることか。こんなふざけた団体に、俺は協力させられていたのか。ぶっ飛ばしてやる!」


 出雲いずも桃太とうたは、第七階層〝鉱石の荒野〟にて、勇者パーティ〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟が、小中学生の少年少女に日緋色金ひひいろかね採掘さいくつを強いる不法な労働施設を発見し、怒りに燃えた。


「祖平さん、柳さん。どうか助けるのを手伝って欲しい」


 桃太は拳を握りしめ、同道する祖平そひら遠亜とあやなぎ心紺ここんに深々と頭を下げた。


「わかったよ、出雲君。食料や情報を得られるかも知れないし、四鳴しめい家の悪行を告発するなら、証拠が多いに越したことはない。なにより、私もああいうのは見ていて気分が良くない」


 リスクの大きい提案だったが、遠亜とあは瓶底メガネをきらりと光らせて賛成し。


「うん。罪滅ぼしってわけじゃないけど、アタシも放っておけないよ」

「BUNOOO!」

 

 灰色の蒸気鎧パワードスーツを見にまとう、サイドポニーの目立つ少女、心紺ここんもまた、彼女の式鬼ブンオーの背をでながら首肯しゅこうした。


「出雲君、施設内の人数を調べて欲しい。大人と子供の区別はつけられる?」

「ああ。最近は慣れてきたからね。反応差で把握はあくできるよ」


 桃太は待ってましたとばかりに足から衝撃波を放ち、音響探知ソナーで施設内部の人員を調査。

 制圧対象の大人が三名、救出対象の子供が一〇名と調べあげた。


「意外に監視員かんしいんが少ないけど、子供じゃ逃げられないからかな?」

有刺鉄線ゆうしてっせんを巻いた頑丈なさくで囲っているからね。それに、ほら見てよ」


 桃太が心紺に示された方角を遠視鏡でみると、〝式鬼しきおに〟であるブンオーの元となった野生のモンスター、黄色い八本足の虎が何匹も、柵の周りをうろついていた。


「なるほど野生のモンスターも脅威だな。子供達の安全を考えるなら、柵を爆破して突っ込むわけにはいかないね」

「狙うなら有刺鉄線や障害物が少ない門かな。ブンオーでも越えられない高さだけど、二人がいればイケるって!」


 かくして桃太達は、〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の不法労働施設へ差し足忍び足で接近。

 まずはブンオーがめいっぱい跳躍して、そこから背に乗った桃太が二段目のジャンプで門の天井部分にとりつき、ロープを使って仲間達を釣り上げるという、三段構えの作戦で柵を乗り越えた。


「て、敵襲か? 最近、このあたりを荒らし回っている賊はお前達だな!」


 子供達が門から逃げないよう監視していたのだろう。

 灰色の蒸気鎧パワードスーツを着た中年男が背部に背負った蒸気機関が、ときの声にも似た音を立て、オルガンパイプに似た排気口から赤黒い霧を噴き出す。


「我らが聖なる教育を認めず、孤児院を襲う悪党め! この粗井あらい露範ろはんの鞭さばきに驚くがいい!」


 人間を超越する鬼の怪力で振るわれた鞭は、まるで生きた蛇のようにのたうちまわりながら、日緋色金ひひいろかねの埋まった赤い大地を切り刻んだ。


「こんなふざけた教育や孤児院があってたまるか。我流・直刀ちょくとう!」


 されど、桃太は空気の動きから鞭の軌跡を読み切り、跳躍して回避。

 怒りをこめた飛び蹴りを、粗井あらい露範ろはんを名乗る〝鋼騎士ギガース〟の喉首に直撃させる。


「うぎゃああっ」

 

 忌むべき犯罪者は、一〇メートルほどふっとんで、監視していた門に音をたててめり込んだ。

 桃太は、このあたりを荒らし回っている賊ってなんのことだ? と首を傾げたものの――。


「ああ、あのひとはイズモトータだ!」

「たすけてええ」


 子供達の声を聞いて、すぐに意識を集中させた。


「みんな、大丈夫だ。出雲いずも桃太とうたが助けに来たぞ!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば「これが、勇者パーティのやることか」って言ってますが、 ここまで勇者パーティがまともだったシーンは一つもない気が……(^_^; 田舎から勇者パーティに憧れて冒険者の研修生になって、…
[一言] >「ああ、あのひとはイズモトータだ!」 >「たすけてええ」 桃太くん、本人は知らないですけどブラック労働貴族の弟子ですからね 子供達「「捕まったら、月744時間の残業地獄が!?」」
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