表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/790

第124話 みんなでお料理パーティ

124


「それでは、今日のお昼は収穫した作物と、狩猟したモンスターのお肉を使って、お料理をしましょう」

「エッ」


 担任教師の矢上やがみ遥花はるかが、大きな胸を弾ませて調理実習を指示した途端、出雲いずも桃太とうたは額に十字傷を刻まれた顔を青くした。


遥花はるか先生。ま、待ってください。いきなり言われても準備が――」

「出雲君、大丈夫よ。こんなこともあろうかと、味噌みそ醤油しょうゆ、他の調味料も、鬼術で発酵はっこうを促進させて似たものを作ってあるわ」

「エエっ」


 驚くべき事に、白衣を着た戦友、祖平そひら遠亜とあが、瓶底眼鏡をキラキラ輝かせながら壺に入った調味料をあちこちに配りはじめ――。


「うっす。サンキューす。皆で食べるんだから、鹿鍋もみじなべに挑戦するかあ」

「エエエっ」


 林魚はやしうお旋斧せんぶは、リーゼント頭を青空に高々と掲げながら、シカ型モンスターの肉を小器用に大ぶりのナイフで薄切りにして、紅葉のように透き通った赤い肉を持ち込んだらしき大鍋でいため始め――。

 

「そろそろ携帯食料も減ってきたし、明日以降の備えも必要でしょう。ぼくはウサギ肉をいぶしてジャーキーを作ります」

「エエエエっ」


 天然パーマのクラスメイト、関中せきなか利雄としおが石を積んだりドラム缶をセットしたりと燻製くんせい装置の製作にかかり――。


「……手伝おう。この変わった鳥をさしみにして食べたいが、雑菌が怖いからな。まずは表面をいぶし、タタキにして試してみたい」

「貸しひとつ、っすよ」

「エエエエエっ、本当に!?」


 普段の対立もどこへやら、七三分けの優等生、羅生らしょう正之まさゆきが作業を手伝い――。

 他の生徒達も魚を焼いたり、野菜を刻んだりと、それぞれ料理に取りかかり始めた。

 

「アハハ、装甲ハクビシンが何するものぞ。殴る! 砕く!! 叩き潰す!!! ミンチにしたあと香草を混ぜて焼けばハンバーグの完成よおっ!!!!」

「エエエエエエエエエっ。賈南さんまで出来ちゃうの!?」


 そして、いかにも家事が不得手そうな気配をぷんぷんさせる、昆布のごとき艶のない黒髪の少女、伊吹いぶき賈南かなんまでがそれっぽい調理を始めたではないか。


「……料理ね、料理。リッキーは得意だったなあ」

「そう言えば、出雲サンはどんな料理がお得意なんですか?」

「か、カップ麺にお湯を注ぐことかな?」

「おい待て。まさか仮にも冒険者なのに、料理が出来ないのか? サバイバル研修の時はちゃんとやれていただろうがっ!」


 桃太は調理場と化したキャンプ地に所在なく立っていたところ、テキパキと作業を進める関中と羅生に尋ねられ、だらだらと冷や汗をかいた。

 彼は実家生活が長く、寮生活の食事もコンビニのおにぎりやパンで済ませていたため、自炊じすいは適当だった。はっきり言えば、下手くそだったのである。


「ま、串焼きくらいなら、やればできるさ。あいたっ」

「サメーっ。桃太おにーさんは紗雨さあめと一緒にしよう!」


 桃太の包丁を握る危うい手つきを見て、銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速たけはや紗雨さあめがすっとんで来たのは言うまでもない。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 林魚、めっちゃ良い奴ですね。 鍋なら料理の腕前がなくても、食材切って煮込むだけで、ある程度は食べられる物ができるはず。 さすが元クラスメイト、フォローしてくれたのか、って違いますね。 桃太、…
[一言] 狸猫(Web版&書籍版以外)「逃がさないたぬよ」 姫将(Web版&書籍版以外)「あんな奇跡は3度は起こらない」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ