第113話 驚くべきクラスメイト
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「アハハ。ざぁこ、ざこざこ、雑魚ばかり。なぁにが、日本最大の冒険者育成学校〝焔学園〟だ。妾が見るに、この教室にいるのは腰抜けばかりではないか!」
昆布のように長い黒髪が印象的な、セーラー服姿の陰気な少女が、教室のど真ん中で大声を張り上げた。
「誰が雑魚だ。何も知らぬ生徒が偉そうに!」
「ぼ、僕たちを誰だと思っている? しゃ、謝罪と賠償を要求するぞ!」
八大勇者パーティの関係者らしき、上等な制服を着た生徒が二人、少女を威圧しようと怒鳴りつけるも――。
「笑わせるな。被害者へ謝罪し賠償するべきは、汝らが縁のある勇者パーティの方だろう。
昨年、西暦二〇X一年の一一月に〝鬼勇者〟三縞凛音が率いる〝C・H・O 〟がクーデターを起こした時、他の八大勇者パーティは見て見ぬフリをしたではないか?
一二月に出雲とレジスタンスが攻勢に出るまでの間に、テロリストの犠牲となった命をどう考える?」
「た、大局を見定めるために仕方ない決断だった」
「お、大人達にクーデターの対処を任せれば、もっと上手くやれたに違いないんだ」
生徒二人は、昆布めいた黒髪の少女にくってかかったが、声ばかり大きくて中身は無いに等しかった。
「ほう、貴様は犠牲者の前で仕方がないとぬかすのだな? 我が父、弥三郎は先の戦いで死んだぞ」
「ぐぐぐ」
「そもそも八大勇者パーティは、この〝楽陽区〟にある冒険者組合本部を守るため、精鋭冒険者を配置していたはずだ。それが、〝C・H・O〟の副代表、鷹舟俊忠にまんまと全滅させられた。まったく頼りになる大人だな? ここにいる出雲桃太は研修生ながら、かの〝剣鬼〟を倒したぞ?」
「そ、それは、くそう」
黒髪の少女に正論で痛罵されて、八大勇者パーティゆかりの研修生達は言葉を失った。
「そうだ。もっと言ってやれ」
「出雲さん、こいつらもやっちゃってください」
今度は一般家庭出身の、過激な研修生が数人、尻馬に乗ろうとしたものの――。
「憧れるのはいいが、けしかけるだけの者も無責任よなあ。八大勇者パーティを解体しろと思うなら、自分の口で言えよ。歌うのでも、踊るのでもいい。自分の意思で語れよ。レジスタンスが最前線で戦っていた頃、お前達はいったい何をやっていた? 自分は何もせずに、隠れて陰口を叩くのは情けなくないか?」
少女は、こちらの生徒たちも容赦なく弾劾した。
「「この、陰気女め。ぶっ飛ばしてやる!!」」
教室中から殺気が迸り、血気に逸る五〇人もの生徒達が押し寄せる中、桃太と紗雨は彼女を守るべく駆け寄った。
「はじめまして、出雲桃太だ。友達になって欲しい!」
「建速紗雨だよ。よろしくね」
「妾は、伊吹賈南だ。そちらのサメ娘はともかく、出雲桃太とは友達以上の関係が望ましいのだがな、これからよろしく」
「よろしく。……待てよ。わら、わ?」
「さ、サメエ。友達以上?」
桃太と紗雨が握手を求めて手を伸ばしたところ、長い髪が揺れて、隠れていた少女の顔が露わになった。
以前見た時よりずっと若返っており、ひどく痩せっぽちで、色気の大半がなくなっていた。
だが、忘れもしない。横顔にはかつて異界迷宮カクリヨで出会った、獅子央賈南の面影がばっちり残っていた。
「賈南さん? あ、貴女は何やってるんだー」
「ササササメー!?」
「アハハハ。その反応が見たかった!」
あとがき
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