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短編そのいち 「三人と一匹の出会い♪」


 えぇ〜〜始めました、というか短編です、ひとつのエピソードを四〜五話に分けて掲載する予定であります。


 グロ?バトルが少しあるかもしれませんが、基本的にコメディですので宜しくお願いします。


 「………。」


 夜の繁華街からひとつ外れた路地裏をひた走るひとりの男……。


 息を切らせ、汗に塗れた顔を歪めて尚、足を振り出して前へ進み続ける。

 何がそこまで男を駆り立てるのか?脇に寄せ切れぬゴミに足を取られ、不様に転げようとも手足をバタつかせ空回りする様に立ち上がり、また走り始めた。


 男の視線の先、長く続く仄暗い路の終わりに雑多なネオンが毒々しく灯る。

 人間が居る証だ……時に人は、他者に無関心でありながら、大多数の人波に身を置きたがるものだろう。

 安堵したいが為に……この男もその一人であった。

 込み上げるものを呑み込み、鼻腔内にまで広がってきた酸味も、走り続けた事による肺の痛みも無視し続ける。


 ひとえに安堵し、己の思考を黒く塗り潰す感情を晴らす欲求に駆られていただけであった。


 その欲求はもうすぐ叶う、叶い始めていた……ネオンの光が大きく、近づくにつれ繁華街の雑多な音に、僅かながら人々の靴音が混じって聴こえる。


 「………。」


 もうすぐだ……そんな心の声が洩れる様に、男の形相が歓喜へと変わってゆく。

 あと数m……革靴のつま先にネオンが映り込む。

 もうすぐどす黒い恐怖の闇から開放されるのだ。


 然し男は知らなかったのだろう、強い光に最も近い闇こそ……また最も濃いのだと。


 「………!?」


 昏い暗い路地を飛び出すその間際に、突如として脇から伸びる無情の悪意によって、男の身体は引き込まれ、口を塞がれてしまう。

 革靴のつま先に映るネオンを目にしながら、事態を呑み込めない男の思考はまたもどす黒い恐怖に塗り潰されてゆく。


 ほんの数秒の沈黙の後ーー、不意に鈍い音が人知れず雑踏へと溶けて消えた。


 冷たい壁を背に座り込む男の姿は、一見すると酔い潰れた様にしか映らない……。


 (この国の人間は他人に無関心らしいからな……見つかるのは朝方だろう。)


 路地から繁華街へ一歩、スニーカーとジーンズが踏み出された。

 姿を現したのは二十歳前後と思われる何処にでも居る、普通を絵に書いた様な青年であった。

 何食わぬ顔で最寄りの駅へと流れる人波に混ざりつつ、青年はだぼついたパーカーからスマホを取り出す……着信に気付いたのだろう、スマホが耳障りな振動音を伝えている。

 人波から外れ、街路樹の側で見かけたブロックに腰掛けてから、ワイヤレスイヤホンを片耳に装着し起動させる。

 この時、遠くでRから始まる綴りのモニュメントが視えたが、変に崩されたデザインの為に読めない。


 「ああ、終わったよ、監視カメラには映ってないだろうけど一応頼む。」


 視線を彷徨わせ、行き交う人々に思わず青年は苦笑してしまう、あのモニュメントを待ち合わせにしていると思われるカップルが意外と多く、アルファベットの綴りの全容が視えなかったからだ。


 「帰るよ……ん?……分かった指定の場所で荷物を受け取ればいいんだな。それと伝達ミスなんだろうが、俺の新しい戸籍……そうだ、その赤井徹のプロフィールが添付されていなかった、こちらで対応して問題無いか?……了解した。」


 ほどなくして通話を切ると、その青年、『赤井徹』は苦々しく眼を細め、モニュメントに背を向けて人波の流れへ戻って行った……。



 都内某公園 午後八時



 地域最大級に類するこの自然公園は、多種多様な噴水や水場を擁しており、夏の頃であれば親子連れで賑わう。

 だが今は夏でもなければ日中でもない、噴水施設は稼働しておらず夜間の立ち入りも禁止である。

 しかも外灯等の照明施設はひとつも存在していない。

 それは自然公園が造園された当時、この地域一帯にはホタルが生息しており、夏の風物詩として親しまれ、その名残りで外灯を設置していなかった。


 そんな暗闇の最中、ひとつの明かりがゆったりと移動している……よく見ればそれは懐中電灯を周囲に向けながら歩く男性で年齢は六十代前半程だろうか。

 グレーの作業着を着崩した風貌から自然公園の用務員と思われるその男性は前方にある噴水を目視で捉え、一瞬足を止める。

 暗闇の中でも目立つ巨大な円形状の池は敷居が低く、大人数の子供が遊ぶ用途であるのか、幼児が座れる程の深さしかない。


 また現状において、この噴水だけ水音が流れている……噴水こそ動かしていないが循環装置は起動させているようだった。


 「………。」


 鼻歌を口ずさみつつ、噴水へ近づこうとした刹那、またも老人の足が止まってしまう。


 ……噴水の側に設置されたベンチに人影を見たからだ。

 懐中電灯を向けるとそれは紛れもない、人間だ、それも若い、十代にも思える青年が眩しそうに眼を細め確かに座っている。

 しかし、先程は気配にすら気付かなかった、おそらく彼は老人が最初に水音で足を止めた時から、ベンチに座っていたであろうにも係わらずにだ。


 「肝が冷えたわ……儂を殺す気か?」


 「その割には簡単に近づき過ぎだろ、俺が不審者だったらどうすんの?」


 質問に質問を返す不躾な物言いに、若干呆れながらも老人は鼻で笑い飛ばす。


 「お前さんがこの時間、そこに座っているであろう事は知っておったからの(それでも気付けんかったわ)赤井徹君じゃろ。」


 「良かった……その名前を知ってるなら、やっぱり関係者だな。」


 今度は不穏な含みのある言葉に、思わず老人は溜め息を洩らし、青年の隣りへぎこちなく腰を降ろす。

 そんな老人の姿を見やり、何故か青年はにんまりと笑っている。


 「どうしたね?」


 「いや、とんだペテン師だと思っただけだよ。」


 「うるさいわ……ホレ、これが預かった荷物じゃ。」


 そう言うと視線を合せようともせず、作業着のポケットをまさぐり、一枚の茶封筒を取り出すとぶっきらぼうに差し出す。


 「預金通帳とカード、戸籍書類も確認しとけ、あと日本に滞在中は自身の海外口座を動かすのを控えろ。」


 「ふぅん……で、この後はどうすればいいの?」


 「……後?」


 赤井の端的な質問に要領を得ず、老人は僅かに首を傾げてしまう。


 「新しい戸籍まで用意したんだ、まだ継続的な監視を必要とするターゲットが居るんだろ。」


 続け様に紡がれた赤井の言葉に、漸く状況を理解し、思わず老人は息を短く洩らす。


 「お前さん……何も聞いてないのか。」


 「あん?」


 「組織の掟でエージェントは定期的に休み……まぁ、有給みたいなものを取らなきゃならんのよ。だがお前さんはキャリアが十年を越えても一度も取らなかったじゃろ。」


 「……それで、俺にどうしろと?」


 「今日は突発的に仕事をしてもらったがの、本来治安の良いこの国は組織の保養施設みたいなもんでな、十年経過しても有給を一度も消化出来なかった者は強制的に休んでもらう決まりだ。……お前さんの場合……そうさな、一年半位かの。」


 「嘘……だろっ!?」


 「仕事中毒ワーカーホリックで潰れる事なく、長く働く為の知恵じゃよ、諦めな。」


 諦めろ……老人に断じられ、にわかに表情を曇らせる赤井。


 「俺にとって殺しは仕事じゃない、生き甲斐なんだよ……それを奪う気なのか!?」


 「だからだ!!最狂のブギーマン、ターゲット絶対殺すマン、同業者から最も嫌われるマン、苛烈と執拗さのデッドマンオンパレード……要は目立ち過ぎるのよ、少しは毒気を抜け!!」


 「………。」


 「………。」


 老人を睨みつけ、ある種で懇願とも取れる表情を浮かべる赤井、ギリギリと歯軋りが水音に溶けてゆく最中……やがて事切れた様に項垂れてしまう。


 こうして彼、赤井徹の殺し屋としての非日常が始まる事となった。


 「………。」


 すっかりやる気を失い、抜け殻が如くベンチから立ち上がる赤井……その背中を見やり、堪りかねたのか老人は『出口まで送ろうか?』と声を掛けるが、赤井は振り返る事なく手のひらをひらひらと振るだけであった。


 (……そんなに他のエージェントから嫌われてたのか。)


 とぼとぼと覚束ない足取りで歩きつつ、これから長い一年半を失意と共に過ごさねばならないという事実が脳内をグルグルと回り続けている。

 目眩すらしてくる始末である、今同業者に急襲されたら十回に一回は隙を突かれて殺られるかもしれない、いっそ組織を裏切って全面戦争にでもならないだろうか。

 そんな淡い期待にも似た妄想に囚われそうになってしまう、否、何処までも妄想が突っ走る……かに思えた次の瞬間であった。


 不意に背後から追従していた老人の気配が止まった……。

 この際、老人に構わずこの場所から、嫌な現実からも立ち去りたかったが……何故かこの時、赤井は振り返る。


 老人はブロック状の飛び石が配された深さ50㎝の水場の前で膝を着き、何かを見下ろしていた。


 「ぎっくり腰にでもなったかジィさん?」


 微動だにせず、老人は尚も足元を見つめるだけである。

 が、老人の足元を凝視し、すぐに赤井は理解する……いや、理解ではなく困惑と言った方が正しい。


 くだらない、曲りなりにも裏の組織に属する者が何故『それ』に気を留めるのか?そんな赤井の思考を汲み取ったのか、老人はぽつりと呟いた。


 「これでも表向きはこの自然公園の管理人なんでな……こいつを処理しなきゃならん。」


 溜め息をつき、虚ろな瞳で見下ろす……そこには小さく、もう鳴く体力も気力も無い、産毛の仔猫が踞る様に生き倒れていた。


 「冬の時期に生まれた仔猫は生存率が低い、多分母猫が育児放棄したんだろう、自然じゃよくある事だ。」


 「ふぅん……で、処理するって殺すの?」


 「いや低体温症が酷い、放っておけばすぐに死ぬだろう……な、朝方にでも片付けるさ。」


 そう言い終わるやいなや、老人は表情を変えずに立ち上がる。

 無慈悲でなくてはいけない、自然の摂理に下手に人間が関わるべきではないのだ……老人の処理とは己の感情を正当化し、怠惰に切り捨てる事なのだと赤井は直感した。


 (正しいな、俺も面倒事はゴメンだ。)


 この老人に追従し、とっとと見捨てて行こう、躊躇いなく背中を向けてしまえば良い。

 老人が自身を追い越してゆくのを認め、赤井は振り返ろうとした……その時だった。


 聴こえた気がした、小さくか細い声が、ただ助けを求めている様に聴こえたのだ。


 「オイ、放っておけって。」


 「…………。」


 地肌の見える身体を拾い上げると、それは片手に収まる程に小さく、眼も開かないその仔猫は僅かに首をもたげた……様に見えた。


 「生きたいか?……お前、眼も見えてねぇのに強いな、俺は強い奴と悪い奴が好きなんだ。」


 パーカーの袖を余らせ、赤井は仔猫を両手で包むと優しく擦り始める。

 その様子を老人は呆れた眼差しで見やるが、やがて溜め息をつくとーー。


 「殺し屋が命を拾うなよ、薄ら寒いぞ。」


 「………。」


 「チッ……無視かよ、仕方ねぇな、分かったよ来い、詰所にストーブくらいはある。」


 言うやいなや、現役の赤井が眼を剥く程の速度で老人が走りだした……心中でやっぱり嘘つきだったかと確信しつつ、赤井も即座に追いかけ始めるのだった。



 それから数分も掛からずに二人と一匹は管理人詰所へ着いた。


 五畳一間程のプレハブ小屋は一応、電気を引いており夜回りの休憩所として使われているようだ。

 ……比較的に清潔そうなタオルを借り、ストーブが温まる間に仔猫の濡れた身体を少しでも乾かそうと包み、擦り続ける。

 しかし仔猫の反応は薄く、身体が暖まっているのか怪しい。


 「産まれてから時間が経ってねぇな……こいつは厳しいかもな。」


 「怪我してる訳じゃないし、餌をやれば良いじゃないか、牛乳くらい無いのか?」


 「馬鹿かっ!?そんなもの飲んだら下痢するじゃろ!!それに自力で飲めないんじゃよ!!」


 「…………。」


 気づけば大の大人二人がストーブの側で仔猫を擦りながら、あーでもないこーでもないと口論を続けていた。


 「(このままでは)埒があかんわ!!ちょっと待っとれ!!」


 そう言うと仔猫のマッサージを赤井に任せ、老人はスマホで何処かに連絡を取りだす……。


 「もしもし♪あっ、マーヤちゃん?ワシワシ、ワシじゃよ♪源ちゃん♪ちょっと頼みがあるんじゃけど〜〜」


 (気持ち悪い猫撫で声出しやがって。)


 それから暫くの間、源ちゃん?と名乗った老人は何事か喋っていたが、赤井は構わず仔猫に意識を向ける事にした……やがて。


 「じゃあ待ってるねーー♪……ふぅッ。」


 「……おい源ちゃん。」


 「バッカもん!?小僧にちゃん付される覚えなぞ無いわ!!源さんって呼べ!!」


 「見てみろよ。」


 赤井のひと言に訝しげな表情を浮かべ、最悪の状況を思いつつ視線を赤井の掌中へと落とす。


 ……と、そこには僅かに身体を震わせ、断続的にか細く鳴く仔猫の姿があった。


 「声が出る様になったか……触った感じでは……駄目だ、体温がまだ低い、すぐの回復は厳しいか?」


 「……だが本人に抗う意思が戻った。」


 (本……人?)


 「まぁよいわ……とりあえず、助っ人が来たら夜間診療やってる動物病院にでも連れて行ってもらえ。」


 「……病院って、人間のでも闇医者にしかかかった事ないな、どれ位札束積めば良いんだ?」


 「お前さんはまず、常識から学ばんとのう。」



 ……それから、文句を垂れる赤井を余所に源さん?は外の水飲み場からヤカンで水を汲み、ストーブの上に置くと詰所の中を漁り始めた。

 対して赤井は気に留めない様にしていたが、よく見ると詰所内にはちらほらとゴミが散乱している。

 テーブルにはカップラーメンの容器が積まれ、異彩と異臭を放つ始末だ、無造作に干されたタオル類もちゃんと洗ったものなのか疑わしい。


 やがて源さん?が500mlの空ペットボトルを拾い上げると赤井の眉がビクリと跳ね上がる、少し残された中身が変色してしまっていたからだ……。


 「おい、何をする気だ?」


 「見れば判るじゃろ?」


 「何をする気かと聞いている!!」


 現役最狂の呼び声高い赤井に本域で咎められ、思わず後ずさりしてしまう源さん?……。


 「何って、ペットボトルにお湯を入れて湯たんぽを作るのよ、文句あるか。」


 せめて中身は洗浄するんだよな?……そんな淡い願いを踏み潰し、裏切る様に源さん?はそれなりに沸騰したのだろうヤカンを持ち上げ、ダイレクトにペットボトルヘ注ぐーー


 ーーと、次の瞬間に展開された光景に赤井は、眼を背けたくなった。


 「ありゃ?前の(ヤカン)中身が残っとったかい……まぁ暖さえ取れりゃあ……。」


 「却下だ、却下!!」


 「背に腹は代えられんじゃろ!!そいつ死んじゃうよ!?」


 『割り切れよ』と言わんばかりに選択を迫る源さん?の物言いに、今度は赤井がたじろいでしまう。

 職業がら、生き残る為に万難を排し、利用出来るものは全て利用してきた……それが唯一無二で正しい筈であると。

 そんな共通の鉄則を背景バックボーンにしているだけに断りづらい、赤井の嫌悪感は陥落寸前であった。


 「タオル巻くし……直接触れる訳じゃないだろ?」


 しれっと甘言を囁くその顔は最早、悪党のそれにしか視えない、しかし巻くというタオル自体が既に疑わしい……不潔そのものとしか赤井には思えなかったのだ。

 複雑な感情と思考のせめぎ合いの渦中で、だがそれでも選ばねばならない、生き残る為にーー


 赤井は手を延ばそうとした……生きる為に(仔猫が)泥水を啜る覚悟を固めたのだ……のだが、それは突如訪れた。


 「「………!?」」


 一瞬にして表情を強張らせ、ほぼ同時に二人は出入口の引き戸ヘ視線を向ける。


 (俺達がここまで接近を許すとはな……。)


 今、確実に引き戸の前に誰かが居る、源さん?に心を乱されていたとはいえ、相手は相当の手練れであろう。

 仮に引き戸の向こうでマシンガンを乱射されたなら、十中八九傷を負う、確信を以て断じ掌中で仔猫を抱きつつ身構える赤井。


 「待て!警戒を解け。」


 刹那、予想だにしなかった源さん?の言葉に足を止める赤井であったが、引き戸の向こうに向けられた濃密かつ純度の高い殺気までは止めなかった。

 結果として、真に追い詰められたのは引き戸一枚を隔てた人物の方であったのだろう。


 「す、すまなかった、敵意は無い……中に入っていいかい?」


 「………ゆっくりだ、今度、俺に妙な動きを見せる時は『覚悟』しろよ。」


 言葉では許しても、殺気が解かれる気配は無く……指示通りに引き戸を開けるまで、何十回も様々な手口で殺される光景を想起させられてしまう、それは最早精神攻撃と呼称しても過言ではなかった。


 「………。」 「………。」


 「ワシが呼んだ助っ人じゃよ、そのへんで勘弁してやってくれ。ほれ、お前さんも自己紹介せい。」


 源さん?の取りなしに、漸く殺気を解く赤井……その瞬間、奇妙な開放感からその女性は安堵した様に息を吐く。


 「ゴメン、ホントに悪かったよ、アタシは百合倉真綾。お察しの通り同業者だよ。」


 百合倉真綾と名乗った女性は小柄で愛くるしいルックスに濃いめのメイク、そしてその装いは黒を基調としたゴスロリと呼ばれるジャンルのファッションなのだろう。

 赤井にとっては初見であり、正直に言えばリアクションに困り、黙っているしかなかった……が。


 「聞いた事がある……奇妙なナリで暗器を得意とするアサシンが居るって、確かコードネームはーー」


 「ビスク・ドールよ、宜しくね♪それじゃあ自己紹介も済んだし、ハイ、これが頼まれた物よ。」


 そう告げて手にしていたケースを源さん?に手渡し、真綾は赤井の掌中で踞る仔猫を覗き込み嬌声を上げる。


 (あざといな……噂じゃビスク・ドールは結構な年増だって話しだが……言及した同業者が行方不明になるらしいし、聞かない方が無難だろう。)


 「ありがとう、それでそのケースは?じいさん、アンタ何を頼んだんだ。」


 「組織で開発した小型動物用のキャリーケースだ、主に条約違反の小動物を運搬する物だが保温、保冷に優れRPGー7の直撃にも耐えられる材質と構造になっている。」


 一瞬、市販のキャリーじゃ駄目だったのかと聞きたくなる赤井であったが、源さん?と真綾の余りのドヤ顔に口を噤む事にした。



 こうして、裏の稼業を生業としていた三人と死ぬ運命だった仔猫は出逢ったのだった……。



 つづく

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