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第431話 懐妊と年齢とダルト王国

ミアの懐妊、主人公の年齢、ダルト王国の統治状況についてです。

先日、ミアと話していたら、帰り際に言われた一言


「どうやら懐妊したようです」


思わず――


「えっ!」


と声が出てしまった。その後、すぐに――


「そ、そうか、それは良かった。うん、嬉しい話だよ」


 と、取り繕ったが、お互い、この年(たぶん五十ぐらい)で子供ができると思わなかったので、驚きの感情が先に出てしまった。まあ、お互い外見上は二十代のままだから、違和感は無いんだろうけど、この時ばかりは外見と内面(心)の違いを強く実感した。


だけど、数秒後にどんどん喜びの感情が沸き上がり、


「子供か! 最高だ! ありがとう、ミア!」


と彼女を抱きしめていた。


 驚いた理由はもう一つ、実は彼女とはあまりスキンシップの頻度が多くなかったから。無いわけではないけど、他の妃、メリッサ、テネシア、イレーネと比較すると、明らかに少なかった。何と言うか、彼女とは物理的に距離があっても、精神的つながりの比重が大きかったからね。だから、最初の子、メルーシャの時も驚いたけど、今回の懐妊はそれ以上に驚いたんだ。


「まあ、お互いいい年だけど、若返りしているから頑張ろう」


「ふふ、そうですね」


 この後、ミアには体を大切にするよう労りの言葉をかけ、今後の準備について軽く打合せした。現在は妊娠初期だから、仕事に影響は無いだろうが、出産前後はしっかり休ませてあげたい。その時期が来たら、テネシア、イレーネにヘルプを頼もうかな。もちろん僕も率先して動くけどね。今まで何度も妃の妊娠出産を経験しているので、準備でまごつくことは無い。(もう子供が十人もいるからね)



 ◇    ◇    ◇



 ちなみにこの世界での僕の正確な年齢だが、実は不明。普通の転生なら赤ん坊から始まるんだろうが、僕はそうじゃない。どちらかと言うと、意識と記憶がそのまま来てるので、転移という認識だ。前世で亡くなった時、二十代前半だったが、この世界に来た時、新しい健康な体(少し洋風でかっこ良く)になり、同じ二十代前半に見えたんだ。神様からのギフトで最初からこの世界の言葉を話せ、読み書き計算ができたのは本当に有難かった。


 仮にその時の年齢を二十二才(?)前後にすると、周りの人間との関係が把握しやすかったんだよ。なんで二十二才前後かと言うと、僕の中で社会人のスタートは大学卒業の年齢というイメージがあったからだ。それに自分の意識状態が丁度それぐらいだったのもある。


 この世界のスタートなんだから、前世の社会人スタートの年齢でいいんじゃないかとね。


 前世では常識やルールの縛りが強かったが、この世界に来た直後は内面から溢れるワクワク感、そして、なぜか――


 自分の思いで世界が創れる!


 という感じが強かったんだ。だから年齢に縛られる必要も、常識やルールに縛られる必要もなく、自由な発想で、縦横無尽に世界を行動する活力が自然と沸いてきたんだ。


 そして、この世界で月日を送るうちに、再び年齢を意識するようになったが、その一方で年齢を意識しない気持ちもしっかり持ち合わせている。


 テネシアとイレーネに関しても、正確な年齢は聞いたことが無いし、さほど関心も無い。確かに長寿種族という点だけは気になるが、それは彼女らの年齢というより、自分の寿命が短過ぎるという点に意識が向かった。そして、その思いは――


 もっと健康で長生きしたい!

 につながったのだ。


 もし、寿命が二百才、三百才になるなら、それまでの人生設計が根本から変わるだろう。ミア(推定五十才前後?)の妊娠報告を受けて、改めて考えさせられた。以前、スキルにより(うっかり?)寿命を延ばしてしまったが、今となってはそれで良かったと思っている。


――――

――――――


~第三者視点~


<ダルト王国のある駅>


 ダルト王国の進んだ技術を視察するため、ギルフォード王国から一行(視察団)が来ている。来訪はアレク王太子、セネカ技術官、キネサス通商外交官、ビグル出入国管理局長、ビンテス防衛隊長、そしてメヌール要人護衛隊長等だ。


一行をトーマス宰相らが案内する。


トーマス「ここが駅になります」

アレク「駅って何ですか?」

トーマス「蒸気機関車が停車する場所です」

アレク「蒸気機関車??」

トーマス「もうすぐ来ますよ」


ボオオオ――――!!!


一行「!!!!!」


アレク「あっ、あれが蒸気機関車ですか!?」

セネカ「すっ、凄い!!」

キネサス「うわあ!」

ビグル「何という乗り物だ!」

ビンテス「軍船も凄かったですが、これも中々迫力がありますなぁ……」

メヌール「世の中にはこんな物があるんですね……」


列車が駅で停車する。


ギィィ―――!!

プシュ―――!!


トーマス「さあ、どうぞお乗り下さい」


一行はドキドキしながら蒸気機関車に乗るのであった。


――――

――――――


<ダルト王国・ある高級宿舎>


視察を終え、一行が用意された宿舎に泊まる。



アレク「うわっ、この部屋も照明がすぐ点灯したよ!」


セネカ「これが、国王陛下が言われていた電気による照明、電灯ですね」


キネサス「軍船、蒸気機関車、電灯をはじめ技術も凄かったですが、町の景観、服装も良かったですねぇ」


アレク「確かに。でも蒸気機関車以外はロナンダル王国も結構、取り入れてますよ」


セネカ「それが技術導入ということなんでしょうか。う~ん……」


アレク「どうしたの?セネカ技術官」


セネカ「確かにいろいろ素晴らしいですが、我が国にそれをそのまま導入というのは難がありそうですな……。少なくとも蒸気機関車はいらないでしょう。こちらは荷馬車も飛行船もありますから。それに面積もダルト王国の三分の一ぐらいですし、それほど交通に困っていません」


アレク「確かにね」


セネカ「でも、この電灯というのは確かに便利です。ロナンダル王国が取り入れたのも頷けます」


アレク「ロナンダル王国はその他に、お茶、お菓子、衣類なんかを輸入してるようだよ」


キネサス「ふ~む、とにかく、検討していきましょう」



一行は視察した内容について、夜遅くまで活発に議論するのであった。


――――

――――――


<ダルト王国・王城・宰相室>


宰相室に、トーマス宰相と有力者五人(農業、商業、工業、土木業、海運業)

が集まり、会合をしている。


工業の有力者「ギルフォード王国の視察団が来訪されたようですね」


トーマス「ええ、同盟の技術協力協定に基づき、一通り視察の案内をしました」


商業の有力者「今回も積極的に協力する予定ですか?」


トーマス「そうですね……、同盟国ですから、協力する必要があります。こちらも防衛協力をしてもらってますからね」


土木の有力者「協力そのものは反対しませんし、そうすべきでしょうが、問題はどこまで協力するかですね……」


トーマス「そこが重要です。技術協力はしますが、それは全ての技術を開示することではないですからね」


海運業の有力者「それを聞いて安心しました。ロナンダル王国にも電気技術導入の協力はしましたが、要である発電機の製造方法は隠匿できましたからね」


トーマス「そうですね。発電機はこちらで全部作って、完成した状態ですぐ設置しましたから、製造技術は守れているはずです」


工業の有力者「……それなのですが、その件でギルフォード国王アレスがまったく技術開示を要求されないのが少し気になります……まあ、それで助かってはおりますが……」


トーマス「私はギルフォード国王アレスと何度かサシで話しているが、こちらの意向というか気持ちと言うか、本当に理解してるんだよ。例えば、『これ以上は教えたくない』と思うと不思議とまったく聞いてこない。今回の件もそうだ」


商業の有力者「……それは不思議ですね」


トーマス「確かに不思議だが、国王陛下は元々不思議なお方だからね。そういうものだと思うしかないね」


海運業の有力者「いずれにしても三国同盟により、我が国の状況は上向きですので、このまま推移していけばいいですね」


トーマス「本当だよ。エルメス帝国もまったく近づいて来れなくなったし、三国同盟のお蔭だ」


 ダルト王国のトップはギルフォード国王アレスだが、内政面はトーマス宰相、五人の有力者がしっかり運営していたので、不在にすることが多かった。元々、ここの王政は緩やかな王政ということもあり、ギルフォード国王もそれに従い、内政面は彼らに全面的に任せていた。


 ただ、以前の王政(エルメス帝国侵攻前)と違うのは執行部への「丸投げ」ではなく、きちんとチェックしていたことだろう。このダルト王国内は、ロナンダル王国、行政調査庁の古株である内偵部隊が監視しているのだ。彼らは旧隠密隊であり、【隠蔽】【透過】【転移】【念話】アイテムでスキルを使い、どこにでも行けるし、入ることもできる。


 当然、この王城にもいるし、宰相も五人の有力者も監視されていた。


 本来、彼ら(内偵部隊)はロナンダル王国の所属ではあるが、ギルフォード聖王の意向に沿って動いていると言えるだろう。当然、その情報はロルアス行政調査庁長官を通じて、ギルフォード聖王に正確に届くのだ。


――――

――――――


~アレス視点~


 僕はトーマス宰相や五人の有力者達と、これまでお互いに信用を築いてきたし、その結果、同盟も締結することができた。でも、彼らが僕を百パーセント信用しているかと言えば、そうではないだろう。もちろん僕も彼らを百パーセントは信用していない。だから内偵部隊をそのままダルト王国に置いてるし、彼らの動きも監視している。切っ掛けは発電機の製造技術の隠匿だね。国家指導者として最先端技術を守ることは理解できるし、僕が逆の立場でもそうするかもしれない。


 そのこと自体はそれでいい。だが、その前後を通じて「相手をうまく利用する」という想念を感じたんだよ。たぶん悪想念に入るんだろうな。正直、ちょっと不快な感じがしたね。でも、これが本来の国と国との外交なんだろう。僕に【読心術】のスキルが無ければ、


 ダルト王国のトーマス宰相と五人の有力者は本当にいい人達だなぁ。


 とお花畑思考で思い込んでいただろうな。いや、実際、いい人達なんだけど、仮面の下のちょっとした「悪想念」にまで気付かないということだ。


 今回の場合、僕は気付かないふりをした方がいいだろう。でも、すべきことはしっかりする。それが内偵による監視だ。でも、こういう状態は僕の本意ではない。やはり本当の意味で信用を築くには時間がかかるものだ。それに彼らは最近までエルメス帝国に支配されていたからね。他国から来た僕らのことを同様に警戒しても不思議ではないだろう。


 しかし、「相手をうまく利用する」というのは「反感」よりも弱い悪想念だね。それどころか、一見すると「相手に協力する」という善想念と勘違いしやすいぐらいだ。でも、善想念か悪想念かと言えば、ちょっと悪想念になるだろうね。「相手をうまく利用する」は結局、相手のためではなく、自分のため。協力している間はいいが、利用できなくなったり、状況が変われば、手のひら返しもあるかもしれない。簡単に言えば、油断ならないということだ。


 でも、僕も人のことは言えない。僕もエルメス帝国から軍人や軍船を回収して、自軍として使ってるからね。まさに「相手をうまく利用する」だ。そもそも僕は悪想念をすべて否定してるわけではない。自分と違う考えに対して反する気持ちを持つ「反感」もそうだが、「相手をうまく利用する」もたぶん「必要悪」なんだろう。必要悪は理性で制御さえすれば、厄介なことにならないで済むし、ある意味、社会の潤滑油的な働きをしてる部分もある。潤滑油がまったく無い社会はキシキシと音を立てて、さぞかし息苦しいことだろう。例え嘘であっても、お世辞や冗談、リップサービス等は場を和ませるものだ。


 トーマス宰相と五人の有力者もきちんと悪想念を制御してるみたいだから、おそらく大丈夫だろう。人の振り見て我が振り直せだ。僕だって同じ人間なんだから。理性で制御しないとな。


 特にトーマスとは長い付き合いになりそうだから、

 しっかり見定めさせてもらうよ。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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