第427話 領地運営分担 ※領地位置概略付き
「ふぅ~ここからの海の眺めは最高だなぁ」
ギースの聖王城の最上階の窓から見渡す海の景色はいつ見ても素晴らしい。ロナンダル王国の王位を退任してから、ここで連邦聖王の仕事をしているが、業務量は体感で以前の半分以下だろう。これぐらいのペースだと本当に楽だ。一番の違いは直接、領地運営に関わらなくなったことかな。領地運営は細かい雑事が多く、それはそれでやりがいもあるのだが、長年ずっと走り続けてきたから、そろそろ楽をしてもいい頃合いだろう。(楽と言っても人並み以上の業務量だけどね)
「まだまだ若いし引退はまったく考えていないけど、こうしてスローペースで仕事するのも悪くないね。ふふふ」
そう口に出していたら、王都からライナスが来訪してきた。うん、まあ予想通りだ。用件も想像がつく。いつか自分が辿ってきた道だからね。
――――
――――――
<ギース聖王城・応接間>
護衛も付けず、転移で来るのは僕らロナンダル王族ならではだが、今回は真剣な表情だ。言わなくても用件は分かってる。
「実は父上、領地運営のことなのですが……」
ほらね。やっぱりそうだ。取り敢えず聞こう。
「僕が引き継ぎました王領が広大過ぎて、僕(王)自らが直接、運営するのは負担が大き過ぎると感じております。どうしたら宜しいでしょうか?」
ここで答えを言うのは簡単だが、先ず彼の意見を聞いてみよう。
「ライナスはどうすればいいと思う?」
「はい、王領が大きいに越したことはありませんが、それは目が届き、管理能力に収まっている場合です。それを超えれば、目が届かなくなり、管理不十分になってしまいます」
「……うん、その通りだな」
「それで管理能力を超える分を誰かに分担してもらうのが良いと思っています」
「うんうん、それで?」
「領地運営を分担する候補者は管理能力のある者が適任ですが、それは領地運営に役立つ勉強をしてきた王族か貴族が該当するでしょう」
「……王族か貴族ね。どっちがいいと思う?」
「貴族なら、募集すればいくらでも手をあげる者がいるでしょうが、過去の謀反もあり、彼らに任せるのは少し不安です。それに彼らは野心もありますし……その点、王族なら身内ですし、話を進めやすいです。やはり王族で領地運営を押さえるのが無難でしょう」
ここまで、正解だな。悪い貴族ばかりでないのは分かっているし、現在はかなり改善されただろうが、彼らは僕への「反感」を内心持っており、油断することはできない。「反感」がなくなるにはまだ時間が必要だろう。僕は「反感」の悪想念だけは【収納】していない。彼ら自身が制御、解消できるよう願っているし、僕自身への戒めともしてるんだ。
「他の王族に領地運営の分担を頼むのはいいと思う。誰がいいかな?」
「はい、王子か王女が該当しますが、これから進路を決める者となると、シルエス、タイタス、ディオネの三人でしょうか? 但し、彼らはまだ十才です」
「三人とも、まだ王立学園の学生だから、早くても成人(十五才)にならないと無理だな」
「そこなんです。どうしたら宜しいでしょうか?」
「先に言っておくが、その中でシルエスは候補者から外してもらうぞ」
「どうしてですか?」
「薄々、気付いてると思うが、彼はエルスラ共和国から総督就任を要請されていてな。現在、お試しで期間中なんだよ。彼もその気になりだしてるし」
「やはり、そうでしたか……」
「まだ正式決定ではないから、内密に頼むぞ」
「承知しました」
「だから、将来の領地分担はタイタスとディオネが適任だろうが、確かにまだ早すぎる」
「どうしましょうか?」
「ふ~む、ちょっと時間をくれないか」
「わかりました。よろしくお願いします。父上」
タイタスとディオネが成人するまでの約五年、
この期間さえ乗り切ればいいなら、彼女達に頼めるだろう。
――――
――――――
<聖王城・応接間>
ライナスが帰った後、テネシアとイレーネを呼ぶ。
テネシア「どうした? 陛下」
イレーネ「どんな御用でしょう?」
僕「実はな。先ほどライナスから王領の分担依頼がきてな。やはり王領は広くて大変だから、手伝って欲しいんだとさ。まあ、こうなるのは予想通りでもあるんだけどな」
テネシア「あんな広大な領地、陛下じゃなきゃ無理だと思ったよ」
イレーネ「普通は十人ぐらいで分担するんじゃないですか?」
僕「だろうね。今は昔より治めやすくなってるはずだけど、それでも一人は無理だな」
テネシア「それで、どうするのさ?」
僕「領地運営は王族か貴族の仕事だが、正直、貴族には頼みたくない」
イレーネ「すると王族になりますね」
僕「そう。それで王族の中から、候補者を絞ったら、タイタスとディオネが適任なんだよ」
テネシア「私らの子供かい?」
イレーネ「私の子供が領地運営……」
僕「だけど、二人ともまだ王立学園の学生だし、十才の未成年だ。今すぐは無理だな」
テネシア「うん? それじゃ、どうするんだい?」
僕「彼らが領地運営できるのは卒業、成人(十五才)してからだが、その間、君達に分担をお願いできないかな?」
テネシア「えっ! 私らが!」
イレーネ「えっ! それはちょっと……」
僕「君達が領地運営より僕と一緒の方を優先する気持ちはよく分かるんだけど、子供達が成人するまでの五年間、期間限定ということでさ。難しい領地は一つもない。ただ分担して負担を減らしたいだけなんだ」
テネシア「う~ん」
イレーネ「むむむ~」
僕「はっきり言うと、君達はもっと広い領地を持っても良かったぐらいだし、その能力も十分ある。たぶんライナスよりもあるだろう。だから頼むよ。僕と息子を助けると思ってさ。なっ、頼む。この通り!」
二人に頭を下げる。
テネシア「……そこまで言われたらしかたない。その代わり五年だけだよ」
イレーネ「……私もお受けします。同じく期間限定で」
僕「おお! 助かるよ。ありがとう。将来はタイタス、ディオネ、その先はトアラ、テセルスに引き継がせよう」
テネシア「そう言えば、陛下は王位を退任したけど、私らは公爵のままだな」
僕「僕は子供が大きくなったからね。君達もタイタス、ディオネが大きくなったら、適当な時期に話し合ったらいいよ。当然、僕も加わる」
その後、僕、ライナス、テネシア、イレーネで話し合い、ギース領に近い広大なアグラ領をイレーネに、その近隣のギゼル領、ガゼル領、スネル領をテネシアに移譲した。アグラ領は広大だが、自然豊富な畑作地帯であり、同じく自然豊かなヨウス領の経験がイレーネに活かせると思う。ギゼル領、ガゼル領、スネル領は過去に貴族による謀反があった地域だが、現在は完全に収まってる。ここは強面のテネシアに向いてるだろう。
逆にシバ領は鉱山、サイラス領は炭鉱、ベアル領は最大の小麦畑、そしてドット領は王都の防衛基地があるので、王領のままとした。それに王都―ベアル領―サイラス領―シバ領は街道も整備されており、領地運営もしやすいだろう。ベイスラ領とパンタ領は迷ったが、パンタ領に温泉があり、王国の収入源になるので、王領のままにした。ベイスラ領も王都に近接してるので、王領のまま。これでライナスには頑張って欲しい。
それと自分の側近を育てるのも大事だぞ。
彼にはそろそろ、もう一段上がって欲しいね。
※領地位置概略※
【西】
ヨウス領 ヨウス領 ヨウス領 シバ領
ベルム領 カイス領 メズ領 サイラス領
ベルム領 キリク領 ベアル領 サイラス領
【南】 ドット領 王都 ベアル領 サイラス領 【北】
ビーク領 ベイスラ領 ベアル領 スネル領
ブルガ領 パンタ領 ギゼル領 ガメル領
アグラ領 アグラ領 アグラ領 アグラ領
ギース領
【東】
※補足※
領主まとめ ( )内領地は新王就任後、王領から外れたもの
王領 王都、ベアル領、サイラス領、シバ領、ドット領、ベイスラ領、パンタ領
連邦聖王領 (ギース領)
テネシア公爵 ベルム領、ビーク領(ギゼル領、ガメル領、スネル領)
イレーネ公爵 ヨウス領、メズ領(アグラ領)
ミア公爵 キリク領、カイス領
ギゼット子爵 ブルガ領
ヨウス領、シバ領は大部分が森林(山)
アグラ領は北方の大部分が森林(山)
あくまでアバウトな位置、広さです。
北にエルスラ共和国、西にハロル共和国、
南に森林(山)を挟んでバナン王国、
東に海と接する。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。




