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第350話 バハナ将軍

 敵方の軍船の中で、敵方の将軍といきなり会談が始まる。まあ、普通は起こりえない状況だろうが、チートスキルは常識の壁を何枚もぶち抜いてしまう。


 場所は指令室、お互いにテーブルで対峙して座る。まわりには多くの軍人がいるが、いきなり登場した不審者に警戒度数最高潮だろう。まあ、これはしかたないだろうね。軍人同士、敵同士の初対面なら、こんなもんだろう。一応、僕は司令官と名乗ったが、これは話をスムーズにするためだ。ここで、国王、聖王と名乗ったら、話が余計にこじれるだろう。相手に合わせて今は軍人モードにする。


「先ず、身分を明かしてくれ、自分はロナンダル連邦の総司令官だ」


「私はダルト国のバハナ将軍です。一つ確認したいが、本当に総司令官ですかな?それにしては若すぎますが……」


「ははは、見た目はね。これでも子供は成人してるんだよ」


「えええ!二十代にしか見えませんが!」


「本題とそれるから、詳細は伏せるが、特別な力によるものだ」


「特別な力……、わかりました」


「先ず、何から話をしようか?」


「それなら、いくつか先に教えて頂きたい」


「いいだろう」


「現在、戦況はどうなっているのですか?これを敵方の貴方に聞くのは大変恥ずべきことだが、避けて通れないのでご容赦願いたい」


「戦況か……先ず、初めに言っておく。戦争になっていない」


「戦争になっていない?????」


「どこにも戦争は起きてないし、人も死んでないし、怪我人すらいない」


「???意味がわかりません。確かに大軍がそちらに向かったはずですが」


「それならば、すべて我が軍に鞍替えしている」


「ええええ!?そんな馬鹿な!一部ならまだ分かりますが」


「ふふふ、特別な力により、全軍を戦うことなく、味方にした。それが真実だ」


「……そんな……信じられません……」


「まあ、軍人たる者、敵と戦うのが前提だからな。でも、これは真実だ」


「それなら、全員、生きているということですね!」


「その通りだ」


「それなら、なおさら戦争する必要がありません」


「そうかい。それは良かった。なら、このまま引き揚げてくれるかい?」


「……そうしたいのは山々ですが、私の上官より、攻撃しろと命令されております。それで攻撃せず戻れば、命令違反で捕まってしまいます」


「……なら、うちの国に来るかい?全員引き受けるよ」


「本当ですか!?そうして頂けると有難い!」


「それなら、このままギースの軍港に行こう」


「ギースの軍港ですか?」


「そこに今まで来た軍船が泊まっているんだよ」


 こうして、一気に軍船二十隻、軍人五百人、大砲四十門、銃五百丁が新たに加わった。


 これで累計すると、軍船九十隻、軍人二千五百人、大砲百八十門、銃二千五百丁の戦力だ。いいのかな。初期投資ゼロでこんなに兵力を頂いて、逆に申し訳なくなってきたぞ。


 その後、軍船をギースの軍港に停め、そのまま王軍隊訓練基地に移動してもらった。そして最初に【精神支配】スキルにより、「ロナンダル王国、ロナンダル連邦への忠誠」を刷り込んだ。これは【精神支配】というより、軍隊なら当たり前のことだからね。これにより訓練の短縮につながるのは大きい。


 しかし、バハナ将軍というのは、冷静沈着だし、部下の評判も良いし、なかなかいい人材のようだな。少し相談して見ようか。


「バハナ将軍」

「あっ、総司令官殿」


「あのさ、将軍は軍歴も長いし、部下の評判も良いみたいだし、引き続き将軍でいてくれるかい?」


「よろしいのですか!?」


「ああ、うちの従来からの軍隊は陸軍が主力だから、海軍はあまり実績がないんだ。君が海軍の将軍になってくれたら、部下の指揮もスムーズだろうし、こっちも助かるんだよ」


「有難くお受けします」

「それと紹介しよう」


テネシア元帥とカイル王軍隊隊長が部屋に入ってくる。


「先ず、こちらがテネシア元帥だ」

「ええ、この方が元帥ですか!!」


「……君が驚くのも無理はないが、年齢と外見は違うからな……」


なぜか、テネシアがこっちを睨んでくる。しかたないだろう。嘘はつけない。


「よろしく!テネシアだ!」

「元帥閣下、失礼しました!以後、お見知り置きを!」


「そして、こちらがカイル王軍隊隊長だ」

「隊長ですか……」

「隊長となっているが、将軍と同じぐらいの役職だな」


「隊長閣下、失礼しました!よろしくお願いします」

「王軍隊隊長のカイルだ。よろしく頼むよ」


 そうか、今までほとんど戦争なんて、してこなかったから、軍の階級なんて、正直、適当だったんだよな。これを機に少し見直すかな……


「ところで、総司令官殿と元帥閣下はどちらが上なのでしょうか?」

「はあっ?」


 そうか……割りと適当に付けてきたから、外部から来た者には分かりづらかったか。


しかし、僕が言おうとする前にテネシアが説明を始めた。


「何を言ってる!陛下は総司令官だが、国王陛下でもあるんだぞ!私とは格が違うわ!」


うわっ、どストレート、でも本当だから、しかたないな。


「えええ!?総司令官殿は国王陛下だったんですか!?」

「……ああ、どこかで言おうとは思っていたんだけどね」

「これまで、数々の無礼を……!」


「いいって、いいって!説明してないこちらが悪いし、無礼に感じたことも無かったし」


「国王陛下のご温情に感謝致します」


「そうだ!カイル、君を今日から将軍にしよう」

「将軍ですか!?」

「隊長より格好いいだろう」

「えっ!……まあ、そうですか……ね?」


「それと王軍隊を陸軍と海軍に分ける。陸軍はカイル将軍、海軍はバハナ将軍だ。二人の直属上司はテネシア元帥となる」


「「了解致しました!」」


「それと海軍については、ロナンダル連邦軍も兼ねてるから、そちらはテネシア元帥の他に、僕が総司令官として加わる」


「了解致しました!…… 一つお聞きしても宜しいでしょうか?」


「ああ、いいぞ」


「なぜ、国王陛下が戦争の総司令官も兼ねているのですか?」


「国王が戦うのは変かい?」


「……そうですね。私のいた国ではトップは命令するだけでしたし、本国にずっといました」


「話すと長くなるけど、僕は元々、平民なんだよ」


「ええええええ!?へ、平民だったんですか!?」


「だけど、運と努力と、周りの仲間に助けられて、ここまで来た。それで、ずっと戦ってきたんだよ」(面倒だからスキルのことはあえて触れないでおこう)


「……そうだったんですか……」


「だから、僕にとって、必要な戦いならば、逃げることはしない。でもね。本当のところ、戦いは好きじゃないし、なるべく避けたいのが本当の気持ちなんだ」


「それは私も同じです。意味の無い戦いほど、馬鹿らしいことはございません」


「連邦では他国へ攻め込むことを認めていない。その代わり、攻めてきたら自衛のために戦う。戦争はあくまで自衛目的なんだよ。他国への侵攻なんて愚かな行為だ」


「それを言われると、私は耳が痛いです。これまで上の命令に従い、他国へ攻めてきましたので……」


「まあ、軍隊は上の方針に左右されるからね……まあ、とにかく、ここに来たからには僕の方針に従ってもらうよ」


「もちろんです!国王陛下!」



バハナ将軍は大きな戦力になりそうだ。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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