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第1836話 財源論5

 続きです。

 国政を担うには財源が必要であり、その主なものは税収である。ロナンダル王国もそれは変わりない。皆が労働や生産や消費などの活動を行い、そこから生じるお金の流れから、幾ばくかの税を徴収し、それを財源として皆のために国政を担う。これが基本だと僕は考える。


 逆に財源とすべきでないものもある。真っ先に挙げられるのは他者からの略奪だ。かつて西欧諸国は圧倒的な軍事力を背景に世界各地を植民地化したが、最たる例だよな。あれは国レベルの話だったが、個人レベルでもあってはならないこと。略奪経済は絶対にダメ。狩猟民族の修羅的生き方を拡大させてはならない。それは世界に悪を広げるのと同じだ。


 それから信用創造。これも良くない。実質、何も生み出していないのに、紙切れを発行して、これに価値があるとうそぶく手法だ。現物にこそ価値があり、紙切れに価値がないのは至極当然のことだが、権力者が「これに価値がある」と宣い、皆がそれを信じることによって形式上成り立ってしまう。ある日、権力者が「これには価値がない」と宣えば、瞬く間に価値はなくなるだろうがね。これによる経済や社会は権力者の匙加減で決まるものとなり、不健全そのもの、僕の目指すものではまったくない。


 信用創造は罪作りな制度である。権力者が紙切れに価値を持たせ、それで金銀財宝を買いあさり、その後、元の紙切れに戻せば、労せずして他者から資産を簒奪できる。国債もそう。どんどん発行して、お金を集め、紙切れ宣言したら、それでお終いだ。信用創造の行き着く先は信用破壊。風船を膨らませ続ければ、いつか必ずはじける。夢幻の宴はいつか終わるのだ。


 日本政府は累積国債発行残高が1000兆円を超え、今後、長らく償還(返済)していかなければならないが、一部の積極財政派は「国債を返す必要はない。ずっと借り続ければいい」と主張しているが、無責任な言説に首をかしげざるを得ない。そんなことをしたら、どんどん借金残高が増え、利払いが大変なことになってしまう。国際マーケットの日本に対する信頼が大きく揺らぐことになるだろう。借りたお金はちゃんと返す。借金を借金で返すのは返したことにならない。


 国債の発行 → 国債の信用低下 → 国債の利回り上昇 

 → 収支の利払い費増加 → 財政悪化 → さらなる国債の発行


 こんな負のスパイラルに陥ってはならない。


 国債は子供、孫、まだ見ぬ将来の世代へのツケ送りだ。今を生きる世代の責務として、これ以上のツケ送りはすべきではない。子孫へ借金を残せば、業を積むことになる。


 それからインフレ。物価が上がるから、見かけ上の収入(税収)は上がるが、当然、支出も上がるから意味がない。そもそもインフレは庶民を苦しめるものであり、それで収入を上げようというのは発想が根本的に間違っている。


 それと不労所得だな。分かりやすいのは国が株や債券を買い、その運用益や売却益を財源とすることだが、前世で言うなら、イギリス、スイス、ルクセンブルク、シンガポールなどの金融立国であろう。金融と言うと華々しいイメージを持たれることが多いだろうが、実際は他者の労働成果の簒奪であり、過去にあった西欧による植民地からの略奪と基本構造は同じ。ソフトイメージを取り繕っているが、他者の上前をはねるビジネスであることに他ならない。


 だが前世では、この不労所得を尊び、信奉するような意見が多い。例えば、とある日系アメリカ人の著者は、金持ち父さんと貧乏父さんを比較して、真面目にコツコツ働くより、ビジネスで大儲けする方が優れているという内容の本を書いた。


 彼は本の中で人を四つに分類した。


 E:Employee(従業員)

   会社に雇用され、時間と労働力を提供して給料を得る。

   安定を求める傾向が強い。


 S:Self-employed(自営業者・専門職)

   自分自身がシステム。専門スキルを活かして働くが、

   働いた分しか収入にならない。


 B:Business Owner(ビジネスオーナー)

   システムや他人の時間を使い、自分は働かなくても

   収入が入る仕組みを持つ。


 I:Investor(投資家)

   お金に働いてもらい、資産から不労所得

  (キャッシュフロー)を得る。


 EとSは「自分の時間」を切り売りする労働収入、

 BとIは「仕組みや資産」から得られる権利収入であり、

 金持ちになりたければ、EとSからBとIへ移行すべきというのが、

 著者の主張だ。


 でも、これは他人の労働成果を奪う生き方であり、まったく賛同できない。前の世界ではBとIが蔓延はびこり、その結果、EとSが割を食っているが、この世界ではそうさせないため、BとIが蔓延らないようにしてきた。この区分に従えば、僕はSであり、BでもIでもない。僕の本業は領主だが、ちゃんと領主としての仕事をして、その分の俸給を得ている。


 金持ち父さんが悠々自適な金持ちでいられるのは貧乏父さんがいるからであり、貧乏父さんが真面目にこつこつ働いても貧乏なのは金持ち父さんがいるからだ。だから、この本を読み、皆が「金持ちになろう」と思っても、皆が皆、金持ちになることは絶対にない。少数の金持ちは多数の貧乏人によって支えられているという現実がある。皆が皆、支えてもらう側に行くことは不可能だ。神輿の上に乗っても、神輿を担いでくれる人がいなければ神輿は動かない。


 著者は、学校でEとSになるための勉強は教えても、BとIになるための勉強を教えていないことに不満を抱き、各地で講演して回っているとのことだが盛況らしい。でもはっきり言って胡散臭い感じがしてならない。前世の人は皆、金儲けの話題が大好きであり、それを餌に稼いでいるんだよな。人々の欲望を助長し、霊性進化の妨げをしている。


 こう言っては何だが、この手の話を聞いて本当に金持ちになった人は元からそういう素養がある人だけであり、実際はほとんどいないだろう。本では「仕組み」の重要性について書かれているが、じゃあ具体的に何をすればいいか、ということは書かれていないからね。「投資をしろ」と言っても、どこに投資するか不明だし、「ビジネスオーナーになれ」と言っても、どんなビジネスをしたらいいか不明。読んだだけではほとんど役に立たない。その気になっても、その気になるだけ、後の道が示されていない。


「金持ちになる方法は、金持ちになる方法を教えることだ」という言葉があるが、ビジネス関連のセミナー商売はこういう類のものが多い。一番儲かっているのは講師自身ってね。これは一種の卵食い、ひよこ食いだ。参加者はセミナーの話を聞いて、一時的に高揚することはあっても、その後、冷静になると、実用性がないことに気付く。ちょっと本を読み、一回セミナーに参加したぐらいで、金持ちになれたら苦労しないっての。


 幸い、この世界には「金持ち父さん」はいないので、反射的に「貧乏父さん」もおらず、皆、普通に働いて、普通に貯めて、普通に物を買い、普通に生活することができる。70年代の日本は当時の人口約1億人にかけて「1億総中流社会」と呼ばれたが、この世界ではスローガンではなく、本当にそれが実現できている。他人の上前をはねる「金持ち父さん」さえいなければ、それが余裕で可能だ。もちろん公金チューチューする寄生虫もいない。すべて駆除した。


 ありふれた普通の幸せこそ、人生でもっとも素晴らしい。一人だけ自分だけ手に余る金を得て、他人を見下すような金満な生活をして何になる。そんな愚かなことに現を抜かさず、自らの分をわきまえ、皆が豊かに幸せに暮らすことの方がはるかに大事だ。

  

 但し、日本は資本主義的性格が強い競争社会なので、ここのやり方をそのまま当てはめることは難しいだろう。この世界でも競争はあるが、日本ほどじゃないからね。日本は受験戦争があるし、出世競争があるし、常に他人と比べ合う社会で本当に大変だと思う。比較と競争を否定せず、むしろ肯定するが、日本は度を越えている。資源が乏しく、一億人以上の人の生活を支えるため、比較により改善点を見つけ、競争により向上心を高め、生産性を高める必要があるのは分かるんだけどさ。


 この世界では不労所得を発生させないため、株や債券などの投資商品を作らなかったが、今の日本は個人金融資産額がアメリカに次いで2位であり、世界中に投資してることから、今さら止めることはできないし、また、そうすべきでもないだろう。


 というのも、前の世界の多くの国は経済成長ありきのインフレ社会だ。日本円の貯金だけだと、どんどん目減りしてしまう。よって、金儲けの攻めの投資というより、資産防衛(インフレ対策)のための投資が必要だ。日本銀行は年率2%のインフレを目標に掲げているわけだから最低2%は欲しいところ。ほぼ金利0%の貯金では目減りしてしまう。


 という訳で、国も個人も2~4%ぐらいの利回りを狙って投資をするなら許容するし推奨する。これぐらいなら探せばいくらでもあるだろう。逆に高利回りの投資は推奨しない。リスキーなのもそうだが、利己的・簒奪的・投機的な要素が強くなるからね。


 日本は年金積立金の一部をGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が管理し、投資しているが、2024年9月末時点で運用資産残高は約248兆円、2023年度末の累計収益額は約154兆円に達しおり、2002年以降、世界最大の年金基金として1位の座を維持している。GPIFはその金額の大きさから「世界最大の機関投資家」とも「クジラ」とも呼ばれている。


 ただ、GPIFが頑張って運用益を出したとしても、高齢化の進行により給付が増えるため、積立金の減少傾向は止まらず、いずれ給付開始時期(年齢)を遅らすことになるだろう。ほとんどの現役世代は払い損になることが確定している。


 この様な状況下で消費税を下げても、おそらく消費に向かわないだろう。以前の日本は55才、60才まで働けば、それ以降、年金で生活できたので、老後を気にせず、お金を使うことができたが、今はそうじゃない。あの世代は逃げ切ったが、これからの世代は大変だ。今の10代、20代は年金をもらえないことを前提に生涯の資金計画を立てておいた方が無難だ。


 日本の高齢化は世界最速のペースで進行中であり、2025年の65歳以上の高齢者割合(高齢化率)は約30%に達している。実は既に危機的状況。今後、2036年には 約3人に1人が高齢者となり、2060年には約40%が高齢者となり、高齢者だらけの国となることが、ほぼ確定しているのだ。


 この予測を覆すには今すぐ少子化対策を強力に推進するしかない。それが日本という国体を維持する唯一の方法だ。移民に頼れば、表面上の数字は改善されるだろうが、その結果、伝統や文化が破壊され、祖先が数千年間、守り抜いた日本という国体を維持できなくなってしまう。


 現役世代から、しっかり年金保険料を徴収し、老後、しっかり年金を支給する社会と、現役世代から年期保険料を徴収せず、老後、年金を支給しない社会は双方ともいい。だが現役世代から年金保険料を徴収し、老後、年金を支給しないのであれば、何のための年金制度か、詐欺じゃないか、搾取じゃないか、ということになる。これなら国に頼らず自分で貯めた方がずっといい。


 ということで、僕は、この世界の人々にそうしてもらっている。国が介在しない自己責任の年金だ。年金と言ってもインフレがないので運用(資産防衛)する必要がなく、ひたすら愚直に貯金すればいいだけだから難しくない。


 ただ、お金が目の間にあると使いたくなるのが人の(さが)だから、それを避けるため、ギルフォード商会で資金保管してもらい、かつ賃金からの天引きしてもらうことを推奨している。こうすれば知らず知らずのうちにどんどん貯まるからね。


 金庫で貯金するのも悪くないが、盗難リスクがあるので、全財産をそこに保管するのは望ましくない。「人生学校ゲーム」では、盗難に遭うと業を解消できるとマスに書いたが、意図的にやるとそうならないと説明書に書かせてもらった。現実用にね。


 わざと失敗する。わざと不幸な目に遭う。

 これは人本来の正道から外れる生き方だ。


 失敗や不幸を乗り越えて人は成長するが、

 だからと言って失敗や不幸を求めてはいけない。

 これは修行好きの人が犯しやすい愚だ。

 我に七難八苦を与えたまえ? いやいや無理しない方がいい。

 ストレッチや筋トレや正座などのプチ修行ぐらいならいいけどさ。


 インフレが国や人を投資行動に走らせるが、その手数料で儲けるのは金融資本家だ。彼らは労せず儲ける仕組みを構築したが、その立場は投資家を上回る。投資家は虎の子の資産を使って利益を得ようとするが、市場は変動が激しく、リスクを伴う。損失を被ることもあるだろう。一夜にして金持ち父さんが貧乏父さんになることだってある。だが、取引手数料の商売なら、株式や債券が上がろうが下がろうが、利益を得ることができる。


 金持ち父さん貧乏父さんの本では、E(労働者)→S(経営者)→B(オーナー)→I(投資家)のステップアップを提示し、最終的に投資家を目指すことを推奨しているが、投資家なんて目指すようなものではない。所詮、賭博師に過ぎず、賭場を仕切る胴元(金融資本家)の養分となる存在だ。あぶく銭を掴んで徳を解消し、徳がなくなったら業を積むことになる。


 売却益は誰かの損の上で得をすることであり、配当益は誰かの労働成果を奪って儲けることだ。他人の不幸の上で幸せを得る性格の強い投資家なんてなるものじゃない。誰かのために働いてこそ、正しい道を歩むことができる。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、ブックマーク、評価をして頂けると大変有難いです。

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