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第1829話 人生学校ゲーム2

 続きです。

 メラルとリルカに人生学校ゲームのサンプルを見てもらったが、当然、見ただけでは良さが判らないので、実際にゲームをすることになった。食べ物なら試食だろうが、ゲームは試しにやってみる。馬には乗ってみよ、人には添うてみよ、だ。


「じゃあ、最初にポイントを示すコインを配ろう」


 コインと言っても金属製ではなく、プラスチック風の植物素材性。

 各自に白と黒のコインを配ると、メラルが訊ねてきた。


「総帥、コインが白と黒の2種類ありますが?」


「そう。コインは2種類ある。白いコインはプラスの徳ポイントで、1枚1ポイ

ント、黒いコインはマイナスのごうポイントで、1枚マイナス1ポイントだ」


「なるほど、マイナスポイントがあるんですね。それで白と黒と……あれっ、でも数えると、白が30枚、黒が60枚なんですね。ということは合算して、マイナス30ポイントのスタートということですか?」


 ふふ、すぐ気付いたな。


「そういうこと。僕らは過去世の徳と業を背負って、この世に生まれているが、

 ほとんどの人は徳のプラスポイントより業のマイナスポイントの方が多いんだ」


 多くの人はこの世に借りを持って生まれてくる。

 そして、この世で借りを返すのだ。


 徳は上にあがる気球、業を下に落ちる重り。

 多くの人は重りの方が大きかったから、上の世界にいけないでいる。


 参考にした前世のゲームは初期手持ち金として1~2万ドルの紙幣を配布され、プラスからのスタートだったが、僕のゲームはマイナスからのスタートだ。現世でいくら金持ちの家に生まれようが、才能に恵まれようが関係ない。それは物質的なことだ。霊的な面だと、ほとんどの人はマイナスからのスタートとなる。この真実をゲームを通して知ってもらいたい。それと、信用創造に意識が向かうことを避けるため、紙幣ではなくコインとした。


「僕らは生きている間に、徳を積み、業を解消しなければならないが、ゲームを通して、それを疑似体験することができる。基本的に善行すれば徳を積み、悪行すれば業を積むが、各イベントはそのどちらかの内容を書いているから、何が善で何が悪かも判るようになってくる」


「ということは道徳にもなっているということですね」

「その通り。ただの娯楽ではなく道徳も兼ねている」


 娯楽と道徳の両立、それがこの人生学校ゲームだ。

 さて、準備は整った。プレイしよう。


「お試しということで、僕からのスタートで時計回りでいいかな?」

「「はい」」

「じゃあ、僕、メラル君、リルカ君の順番ね」


 では始めよう。ゲーム版の中央にあるルーレットを回す。

 3か、それじゃ、コマを3個進めてと。イベント内容は――


「道で転んで怪我をして、業を1ポイント解消」


 指示に従い、業コインを場に返却する。


「通常、怪我は悪いイベントだが、人生学校ゲームでは

 業を解消し、良いイベントとなる」


 徳と業の考え方はギルフォード商会でもお馴染みなので、メラルもリルカも理解できるだろうが、ゲームにすると捉えやすくなるため、また違った印象を受けることだろう。海底に潜る様子を本で読むのと自分の分身が海底に潜るぐらいの差がある。


 そんなことを思っていたら、リルカが口を開いた。


「怪我って悪いことではないんですね……」


 ふふ、実感が湧いてきたか。


「そう。実は怪我自体は悪くない。むしろ過去世の業が解消されるから良い

 ことだ。問題なのは、それが悪いことだと思うこと。そう思えば悪くなる」


 事故でも病気でも、それ自体は悪くない。それを悪いことだと捉え、悪想念を出すことが悪いのだ。極論すれば、この世に悪いことはひとつもない。どんな不幸な事案だろうが、ひとつの現象に過ぎず、それを悪いことだと思うから悪くなる。


「さて、次はメラル君の番だ」

「はい」


 メラルがルーレットを回すと5。5個進むとイベントは――


「通りすがりの人に道案内して、徳を1ポイント積む、ですね」

「おお、徳を積んだね。じゃあ、徳コインを1枚」


 場の徳コインを一枚、メラルに渡す。

 次はリルカの番。彼女がルーレットを回すと、7が出た。

 7個進むと、イベントは――


「人の悪口を言い、業を2ポイント積む、だね」


「わぁ、これは痛いですね。悪口でマイナス2ポイントですか、

 結構、マイナスが大きいんですね」


「そう。直接、人を傷つけるとマイナスは大きい。

 だから悪口は避けるべきなんだ」


 口で言うぐらい大したことはない。と思う人は割といるが、

 口は災いの元、心ない言葉が相手のハートにグサッと突き刺さることはある。


「悪口を毎日言っていたら、大変なことになりますね」


「その通り。それを知ってもらうことがこのゲームの目的だ。だから、勝つか負けるかなんて正直どうでもいい。ゲームの過程でいかに多くのことを学ぶかだ」


 僕の本を読み、僕の話を聞いて、徳と業の知識を頭に入れても、いまいち掴めないという人が多いだろうと思い、このゲームを制作した。前世の参考にしたゲームのように、就職、結婚、出産などのイベントもあるが、お金の損得勘定ではなく、徳と業の尊徳感情が基準となっており、このゲームをすると、これまでの価値観が大きく変わるだろう。


『本当に大切なことは目で見ることはできないんだよ』


 これはフランスの作家サン・テグジュペリの『星の王子さま』の中で語られる最も有名な言葉だが、物質的な成功や目に見える成果に囚われがちな現世に対し、目には見えない心の価値こそが真に重要であるというメッセージであろう。愛、友情、信頼、思いやり、感謝などの価値は、目に見えないが、人生を豊かにする上で欠かせないものだ。


 徳と業も精神的なものであり、目には見えないが、これも人生において欠かせないものであり、それを肌感覚で把握することが人生にとって非常に有益だ。「見えないから見なくていい」ではなく、「見えなくても見ようとする」こと。そうすることにより人は一歩一歩成長する。


 僕はこれまで様々なゲームや遊具を前の世界からこの世界に導入してきたが、すべて昭和の古き良き時代の匂いが漂うアナログなものを選んできた。竹馬にしても竹トンボにしても、本物の竹を使い、素材の感覚を大切にした。メンコとかビー玉とかもそう。あの見た目や質感を忠実に再現した。


 これらは僕にとってノスタルジックなものだが、情操教育にもいいだろう。それに一人より友達と遊ぶ方が楽しいから、自然と友達が増えてくる。見ず知らずの子供でも、一緒にヨーヨーしたり、縄跳びしたら、すぐに仲良くなれる。遊びを通じて、人とのコミュニケーションを学ぶことができるのだ。勉強は一人の世界に没入するが、遊びは他人と交流し、世界が広がる。


 但し、遊びなら何でもいい、という訳ではない。子供にとって良い遊びもあれば、そうでない遊びもあるからね。それが現代日本で流行っている、テレビやスマホの画面を見ながら、指で操作するデジタルゲームだ。子供が一人で部屋に閉じこもり、長時間、ゲームに熱中することが度々問題視されているが、中毒性が強く、とても健全な遊びとは思えない。特に課金するタイプはヤバいね。攻略するためにどんどんお金を使おうとする。


 あと、ゲームの中には敵を倒す対戦型のものが多く、これを続けると、攻撃性や嗜虐性を高める危険性がある。仮にゲームの中の世界であっても、キャラを殺そうと思ったら、殺意が生じ、業を積むことになる。ゲームだからノーカンということはない。その行為(殺意を抱く)そのものが問題なのだ。


 昔、まことしやかに囁かれたことだが、対戦型ゲームが多いのは、戦争が起きた時にスムーズに徴兵できるよう、平時の軍事訓練のため、という説があった。現代戦は電子戦が中心であり、モニター上の敵に照準を合わせ、そこに銃撃、砲撃するシーンが多いが、これはゲームと似たようなもの。


 実際、アメリカでは軍がコンピューターゲームやEスポーツを通じて10代の少年少女を軍に勧誘しており、ゲームで得たスキルが人を殺すスキルに応用されることが起きているんだよな。そうでなくてもゲームのやり過ぎは、依存症、睡眠不足による集中力低下、慢性的な運動不足、視力低下、姿勢の悪化、うつ病や不安障害、攻撃性の亢進、現実と仮想の混同、などのリスクを引き起こすから問題。


 とある調査によると、アメリカの子供・青少年が成人(18歳)になるまでに、テレビや映画などのメディアを通じて目撃する殺人シーンの数は約1万6千回~4万回、暴力シーンの数は約20万回とのことだった。これだけ大量の殺人シーン・暴力シーンを見せられたら、感覚が麻痺して、それが当たり前のようになり、自分がそうなるハードルが低くなってしまうだろう。これは本当に怖いことだ。


 日本のアニメや漫画でも、殺人シーンや暴力シーンは多いが、それを見て嫌悪感を示さず、興奮して「もっと見たい」となったら、かなりマズい。ずっと見続けたら悪影響を受け、周波数がどんどん下がるだろう。僕らはこんなものを見るためにこの世に生まれたわけではない。


 不気味なシーン、気色の悪いシーン、残酷なシーンなど見たくもないが、世の中にはそれを好む奇特な人がいる。好きという程ではないが、なぜか見てしまう人は、それを心地よく思う歪んだ気持ちが奥底にあるのだろう。先ずすべきはそういう負の要素が自分の中にあることを知ること、自分の中の化け物と向き合うことだ。そうすれば「このままじゃ、いかん」と制御する方向に動き出し、やがて制御できるようになるだろう。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、ブックマーク、評価をして頂けると大変有難いです。

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