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第1795話 霊性研究所59~執着を手放す3~

 続きです。

 さて、そろそろ締めに入ろう。


「現世から卒業したいと考えているのであれば、現世の事象である、人、物、出来事、想念などに執着しないこと。現世での体験は大事だが過度にのめり込まないことだ。何事もべたりとくっつくことはせず、少し距離を置く。例えるなら、現世という舞台で役柄を与えられて演技をする役者の感じかな。役は一生懸命演じるべきだが、役そのものは本当の自分ではなく、舞台も一時的にいるところだ。それが分かれば、そんなに執着しなくなる。生きてる間に『これ』がないと困るという『これ』を無くしていこう。特に人生の後半は執着を手放すのに最適な期間だ。人は人生において何かを手に入れようとするが、それは人生の前半で終わらすこと。一生、何かを手入れようとし続けたら、現世から卒業することはできない」


 パネルを提示する。


□------------


 人生の前半 手に入れる

 人生の後半 手放す


□------------


 アネットが口を開く。


「人生の前半から手放すのは、できないということですか?」


「ほんとはそれができればいいんだが、生憎、僕らは現世に生まれてくる際、記憶がリセットされるから、真理に辿り着くまでいろいろ体験して自らの血肉にする必要がある。手放すといっても、すべてを手放すわけじゃないしね。前半で良いものと悪いものを手に入れて後半で悪いものを手放していく」


 最初から最後までずっと良いものだけ吸収し、悪いものを吸収しなければ効率的に見えるが、そうはいかない。人生の前半は良いものと悪いもの区別が付かないからな。良いものと悪いもの、二つとも体験するからこそ、その区別ができるようになる。


 そして、その区別を付けること、そこへ至る過程がまさに修行となるから、それをしやすいよう記憶がリセットされる。前もって答えが解っていたら勉強にならないからね。そのため、答えとそこへ至るための記憶が消されるのだ。


 人は痛い思いをして、はじめて痛いと知る。痛みなんて知りたくないが、痛みを知らなければ、痛みを認識できず、痛みを避けることができない。特に周波数の低い人はその傾向が強い。彼らは人の痛みを想像できないからね。


 仮に想像できたとしても自分に関係ない他人事として捉える。人生で起きるすべての出来事は決して他人事ではないのにもかかわらず。しかし実際は、目の前に苦しむ人がいれば、それは自分事である。肉体が別だから関係ないということはない。すべての人は大元でつながっている。表面上の肉体に囚われないこと。他者から学ぶことはできるし、また学ばなければならない。


 パネルを提示する。


□--------------


 真理は外側(現世)にはなく、

 内側(霊性)にある


□--------------


「内側の真理に気付くには外側の体験が必要不可欠だ」


 真理に近づくには、足し算と引き算があり、足してから引くのがセオリー。

 どちらかだけではうまくいかない。


 説明はここまでにしよう。アネットに合図を送る。

 

「それでは質問タイムに入ります。最初の方、どうぞ」


 質問タイムとなり、アネットが最初の質問者に発言を促した。

 順番はあらかじめ決まっている。さて、どんな質問が来るか。


「最初から執着を持たない方がいい、ということでしたが、

 それなら、悩むことも最初からしない方がいい、ということでしょうか?」


「答えはその通りだが、実際はそうはいかない。人はいろいろ悩む。ほとんどの人はそうだ。だが悩みを繰り返すうちに、悩む必要はないと気が付き、次第に悩まなくなっていく」


 いろいろ思案し、頭の中に情報を足していくと、情報が入れ交じり、こんがらがって苦しくなるが、それが悩みとなる。そこから余計な情報を引くことによって悩みを晴らす。 


「ということは悩んでもいいということですか?」


「もちろん。特に人生の前半、若いうちはいろいろ悩むだろう。でも、

 それをすることによって、気付きを得て、やがて悩まなくなる」


 悩みとは子供の知恵熱のようなもの。たくさん入った情報を頭の中で整理しようとした時に起こる。苦しいと言えば苦しいが、この過程は絶対に必要。それを乗り越え、頭の中が整理された時、悩みが解消される。何の努力もなく、ポンと『悩みのない心境』に至れば、こんな楽なことはないが、この世の仕組みは先苦後楽であり、そういうわけにはいかない。あのお釈迦様だって悟りを開く前は、悩んで悩んで悩みまくった。


 悩むと「悩むな」という人がいるが、それは的確なアドバイスではない。僕なら「気の済むまで悩めばいい」と言う。悩むことによって人は成長するのに、その機会を否定することは間違っている。特に若い人はどんどん悩むといい。それをしたか、しなかったかで、後々大きな差となって表れる。


 パネルを提示する。


□--------------


 悩むことにより、

 悩む必要がないことに気付く


□--------------


「一見、矛盾するように見えるが、同様のことは他にも言える。怒ることにより怒る必要がないことに気付き、憎むことにより憎む必要がないことに気付き、悪いことをすることにより、悪いことをする必要がないことに気付く」


「気が付くことによって、悩みや怒りが無駄だと分かるのですね」


 無駄か……。


「惜しいがちょっと違う。実践することにより、それが無駄だと気付くが、無駄なことをしたと気付けば、その分成長した訳だから、それらの過程はすべて無駄にならない」


「? でも、気が付かなければ無駄ですよね?」


「気が付かないということはない。いつかは気付く。ただ個人差があり、遅いか早いかの差はあるけどね。遅ければ、来世、さ来世ということもあるだろう。でも、気が付けば、その過程はまったく無駄にならないんだ」


 パネルを提示する。


□-------------


 すべての経験に無駄はない


□-------------


 人は長い道のりを歩き、その過程でいろいろなことを経験する。後から振り返ると、あれは余計だったとか、あれは無駄だったとか、あれは失敗だったとか、思い煩たったりするが、その経験があるからこそ、今の自分が存在する。自分という存在は過去の経験の集合体であり、極論すれば、過去の経験そのものだ。だから、そこから一遍でも過去の経験を消せば、今の自分は成立しなくなる。すべての経験は自分を形づくるパーツであり、そこに無駄なものなど一つもない。


「無駄があるように見えるのは、人生の一部を切り取って見るからだ。

 長期的視点に立てば、すべて役に立つ。もちろん失敗もね」


 失敗と言えば、発明王エジソンは


『私は失敗したことがない。

 ただ、1万通りの、うまくいかない方法を見つけただけだ』


 という名言を残したが、本当にこの通り。エジソンと言えば、


『天才とは、1%のひらめきと99%の努力である』


 というのも名言だ。人は天才を天から下りてきた才のように言うが、さにあらず、愚直な努力の積み重ねによって人は才を得る。今世だけ切り取ると天才に見える人も、過去世からの努力の積み重ねがあったからこそ花を開いた。そして、自助努力を続けた人に最後の一押しのような形で、ひらめきが訪れる。


 ひらめきを天からのギフトという人もいるが、それも違う。ニュートンは木から落ちるリンゴを見て、万有引力の法則をひらめいたが、木からリンゴが落ちる様子はこれまで数多くの人が見ており、誰もそれで万有引力の法則に気付く人はいなかった。ニュートンが気付けたのはそれまでの努力の成果があったからに他ならない。つまり、実質、努力100%ということだ。


 秀才は現世の努力家、天才は過去世の努力家、どちらも努力家だ。ただ、天才の場合は過去世の努力が見えないので、天から下りてきたように錯覚する。


 次の質問者が口を開く。


「執着を手放す、とのことですが、手放さなくていい

 ものもあるという理解で宜しかったでしょうか?」


「その通り、憎しみや欲望などは手放すべきだが、手放す必要がないものもある。善想念がそう、特に、向上、成長、改善など、霊性進化に関わるものは持ったままでいい。人の役に立ちたい、人を幸せにしたい。世の中を善くしたい、という思いはむしろ強めるべきだ」


 前世の関連書物を読み耽ったが、どうもこのあたりをはっきり書いておらず、中にはすべての執着を無くすのがいいように書かれているものもあった。いやいや、せっかく手に入れた宝物まで捨ててどうする。全部捨てていいなら、生まれてきた意味が無くなってしまうし、そんな訳がない。


 生まれてリセット、生まれてリセット、の繰り返しにより、

 手に入れて、すべて捨てる、手に入れて、すべて捨てる、

 じゃ転生の意味がない。


 この点において僕は答えを見つけた。


 パネルを提示する。


□---------------------


 手放す   悪想念(霊性退化に関わるもの)

 手放さない 善想念(霊性進化に関わるもの)


□---------------------


 これでスッキリする。


「悪想念は気持ちを重くするから、手放すと気持ちが軽くなる。逆に善想念は気持ちを軽くするから、手放さず増やしていく。この作業をすることにより、周波数が上がっていく」


 この世界に気球はないが、それを例に取れば、浮力を生み出す熱源は善想念であり、地上に下ろそうとする重りは悪想念となる。気球を上げるには重りを外し、気球の中の空気を熱で温める必要があるが、人が周波数を上げるのも、これと同じようなことをする。


 次の質問者が手を挙げる。


「あの、好き、は善想念ですよね? でも先ほどのご説明では、

 執着になるということでしたが、悪想念なのでしょうか?」


 おお、いい質問だ。


「一般的に『好き』は善想念と捉えられるが、実は『好き』にもいろいろあってね。例えば誰かを自分のものにしたい、意のままにしたい、操りたい、というような『好き』だと、周波数が低く、場合によっては悪想念にすらなる。逆に相手の気持ちをよく考え、思いやりに満ちた『好き』なら、周波数が高くなる。だから、手放すべきは周波数の低い『好き』になる。周波数の高い『好き』なら手放さなくていいが、その見極めが大事だ」


 この件に関して、もう少し補足しておこう。


「『好き』と似た想念に『愛』があるが、これもいろいろある。例えば、自分だけを愛する自己愛は周波数が低い。他人より自分、自分さえ良ければいい、になると悪想念になる。そこから身近な人でも他人を愛せるようになると、一気に周波数が高くなり、善想念に転換する。真の愛とは自己愛ではなく他者愛だ。そして、その他者愛も、家族、身内、友達、仲間、国、世界と広がることにより、さらに周波数が高くなる。但し、量だけでなく質も大事だ。例えば、いくら量が増えても、自分と同じ考えの人ばかりなら、周波数はそんなに高くならない。それは他人を見てるようで、その実、他人の中にある自分を見ている要素があるからだ。これは他者愛を偽装した自己愛とも言える」


 ギリシア神話のナルシスは水面に映った自分を見て、その美しい姿に恋い焦がれて水仙になってしまったが、自己愛が成長を止めることを示唆したものであろう。成長するには他者と接し、他者の考えも許容する必要がある。他者の反感と反論も封じてならない。それから、これも言っておこう。


「真剣になるのはいいが、深刻にはならない。反省するのはいいが、後悔はしない。なぜなら真剣と反省は善想念だが、深刻と後悔は悪想念だからだ。感覚的な部分が大きいが、慣れると区別がつくようになる。善想念は気持ちが軽くなるが、悪想念は気持ちが重くなる。この感覚を磨いていこう」


 好意にしても、愛にしても、感謝にしても、幸せにしても、字面の言葉より感覚が大事。いくらその言葉を仰々しく使っても、中身(感覚)が無ければ空々しくなる。


 パネルを提示する。


□------


 善悪の判断


□------


「これは人が身につけるべきコモンスキルのひとつだが、

 執着を手放す上で、これが必須となる。手放すべきは重しとなる思いだ」


「思い」は「重い」から来ており、実際、ほとんどの思いは重い。修行の足りない未熟な人は思考すると、善想念1割、悪想念9割という具合に、悪想念過多の状態となるが、これは善悪の区別ができていないことも大いに関係している。本人の感覚では、善想念5割、悪想念5割ぐらいのつもりだろう。


 知ってるつもり、できたつもり、わかったつもり、という奴だ。

 多くの人はそれで良しとし、そこで成長を止めてしまう。

 はっきり言って悲劇であり、また喜劇でもある。


 善悪の判断ができるようになれば、自分の中の悪想念に気付くことができるようになり、自分が思っていたより、悪想念が多いことに愕然としたりするが、これが物凄く大事なこと。自分の醜い部分を直視する。ナルシスのように表面的に綺麗なところだけ見て、悦に浸ってはいけない。ナルシスも自分の自己愛の醜さをが水面に映っていたら、自己愛どころか自己嫌悪に陥ったはずだ。


 自分の中にある、意地の悪さ、非情さ、傲慢さ、冷酷さ、残酷さ、偏狭さ、狡猾さ、醜悪さ、愚かさ、等にしっかり向き合う。そして、そういうネガティブな部分が自分にあると認識する。これは辛い作業だが、避けて通れない。先送りにしても、いつか必ず向き合わざるを得なくなる。


 頭の上にゴミが付いてる人は、そのゴミが頭の上に付いてることを知らなければ、いつまで経っても捨てることができない。ネガティブな想念も同じこと。それが自分にあることを知らなければ、いつまで経っても捨てることができない。


 酷くなると悪想念のゴミが肥大化し、化け物のようになる。そして、その化け物は宿主をコントロールするようになる。自分を追い出そうとしても、そうさせないよう抵抗してくるのだ。そうなると本当に厄介千万。そうなる前に手を打つことを強くお勧めする。化け物退治は早いに越したことはない。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、ブックマーク、評価をして頂けると大変有難いです。

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