第17話 王様と謁見
「アレス・ギルフォード、国王陛下より勅命である。先日のメリッサ第二王女救出の件で、王城でお礼の儀がある。招集に応じよ」
「はは――! 謹んでお受けいたします」
王城から招集命令が来た。緊張するなあ。護衛の二人も連れていくか。
<王城、謁見の間>
「アレス・ギルフォード、今回の件、誠に感謝する。褒賞を授与したい」
その後、王の脇にいたザイスという筆頭大臣が目録を読み上げる。
「一つ、アレス・ギルフォードに報奨金として、金貨二百枚を授与する」
「一つ、アレス・ギルフォードに男爵位の叙爵をする」
「一つ、王都に屋敷を授与する」
報奨金は素直に嬉しいけど、男爵位って……貴族になるってこと?? この僕が?? 面倒は嫌だな……王都の屋敷ってどんな感じだろうか。でもここでの返事は一つしかないだろう。あれ、テネシアとイレーネは何か誇らしげだな。
「はは――! 有難き幸せに存じます。謹んでお受けいたします」
その後、事務手続きで、ザイス筆頭大臣、メリッサ第二王女と別室に移った。当然、護衛のテネシアとイレーネにも付き添ってもらう。
「……手続きは以上になります」
事務手続きは簡単だった。褒賞金はもらうだけだし、爵位も証明となるメダルのような宝飾品をもらうだけだった。強いて言えば屋敷の引き渡しだけは追って連絡ということなので、連絡漏れのないよう注意しないとな。
「アレス様、何か気にかかりますか?」
メリッサ第二王女が声をかけてくる。う~ん、顔に出てたか。修行が足りないな。
「大したことはありません。自分は商人なのですが、貴族になっても大丈夫なのでしょうか?」
「それなら心配ありませんわ。商人の方でも貴族になっている方はいらっしゃいます。アガッサ商会のイムル様もそうですわ。子爵位を授与されています」
「そう言われれば、そうでした」
「イムル様をご存じですか?」
「はい、商売を始める際、大変お世話になりました」
「それは良かったですね。あとは気にかかることは無いですか?」
「はい、初めての爵位ということもありますが、貴族同士のお付き合いとか、大変そうで……」
「今回は領地がないから楽ですよ。付き合いも強制ではないですし、王命さえ守れば、商売優先でいいと思います」
「お心遣いありがとうございます」
こうして初の謁見を終了した。いやあ緊張した。
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――――――
<山の館・会議室>
「主、ついに貴族になってしまったな」
「さすがアレス様」
「どう考えても君たちのお陰だよね。それで、君たちも今日から貴族の護衛だから、よろしくね」
「貴族の護衛か」
「箔が付きますね」
「王様を見たのは初めてでした」
「緊張したか?」
「いえ、それよりアレス様が認められたのが、嬉しかったです」
「まあ、それが一番だよね」
「貴族になったメリットは、護衛しやすくなったことなんだ」
「どういうこと?」
「今までは絡まれた場合、いろいろ気を使ったけど、今後は平民が貴族に無礼を働いたら、不敬罪が適用されるんだ」
「不敬罪?」
「つまり僕が平民の暴漢に絡まれたら、君たちは遠慮なく相手を罰することができる」
「それはいいな」
「それに相手もそれを知ったら、貴族を名乗るだけで絡まなくなるだろうね」
「……でもデメリットもある」
「どういうこと?」
「貴族と分かれば、誘拐されるリスクが増えるんだ」
「う~ん、つまり?」
「要は小物に絡まれなくなるけど、襲われやすくなると」
「結局、あまり変わらない感じですね」
「そうそう、結局、自分の身は自分で守るしかないのさ」
「そういうわけで、今後もよろしくね」
「よし、まかせてくれ」「了解しました」
貴族になっても、今までと変わらず行くことにしよう。
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