第154話 ラミアのメヌール
<メヌール目線>
あたしはラミアのメヌール。
今はギルフォード公国で要人護衛の仕事をしている。
今でこそ、みんなの前で大手を振って活躍してるけど、以前のあたしからは想像もできなかったよ。以前、ウラバダ王国に住んでたんだけど、王様が代わってから、亜人への扱いが酷くなった。特にあたしたちラミアは外見が人間と違うこともあり、謂れのない差別や誹謗中傷は日常茶飯事だった。
「うわあ、こいつは化け物だ!」
「気持ち悪い!」
「蛇人間、出ていけ!」
こんな暴言はまだマシなぐらい。
酷くなると
「化け物を殺せ!」
「火あぶりにしろ!」
「八つ裂きにしろ!」
と罵声を浴びせられ、命の危険を感じたよ。
気づいたら、人間に捕まって、牢屋に入れられてた。牢の中には、ラミア以外にも、いろんな種類の亜人達がいて、みな身を寄せあって怯えていたな。看守の人間による虐待も酷く、少しでも反抗しようものなら、暴力は当たり前。私もよく暴力を振るわれたな。
傷ついて、明日に希望が持てなくて、もう生きる気力もなくなりかけてた頃、起きたら、世界が変わっていた。外から、別の人間達が来て、私達を牢屋から解放してくれた。牢から出たこともびっくりしたけど、もっと驚いたのは、外に出たら、ウラバダ王国でなくなっていたこと。まったく違う場所だった。あとでそれがウラバダ王国から遠く離れたギルフォード公国で、それが公王様の特別な力によって、なされた御業だと知らされたんだ。
助けられたあたしに人間の女性が手をかざし、傷を全部治してくれた。それがミア様だったのは今でもはっきり覚えている。疲れきった体がみるみる回復していったんだ。
「もう、大丈夫ですよ。安心して下さい」
「ここなら、平和に暮らせますよ」
人間からそんなに優しい言葉をかけられたのは初めてだった……気付いたら涙が流れていたよ。その後、暖かいご飯と暖かい寝床も用意され、やっと安住の地に着けた喜びを実感し、生きる希望が湧いたんだよね。まわりのみんなもそう感じたと思うよ。
島は発展途上だったけど、すでに住居、道路等のインフラも整っていて、生活に不便はなかった。でもあたしたちラミアは亜人の中でも外見が目立つので、やはり固まって生活したし、目立たないよう、森の近くで生活することにしたんだ。まあその方が精神的にも楽だったしね。でもなんだろね。なにか自分の中でモヤモヤした思いはあったんだ。このまま、ここで引きこもるような生活でいいのかと。
島に来てからは、森で狩りを中心に生活することが多くなった。一人でも生きていけるよう、武器は一通り練習してきたし、あたしには蛇眼スキルがある。これを使うと相手は痺れて動けなくなる。そんな生活をしながら、外で活躍する自分の姿を思い描いたりしてた。
そんな時、地域の代表さんが巡回に来られ、つい自分の思いを口にしたんだ。外で活躍したいとね。今、思えば、あれがきっかけだったんだよね。その後は公王様が来られ、とんとん拍子に話が進み、【人間形態化】スキルの指輪で、外での活躍が可能となった。
狩りの腕と蛇眼スキルを評価され、要人護衛の仕事に就くことになった。外で活動できるのは嬉しいし、皆の役に立てるのは気分がいい。警備隊で訓練してから、実際の護衛の仕事に就いたけど、最初の仕事はミア様の護衛だった。ミア様は希少な薬草を採取するため、他国の遠方まで行かれることが多いので、その護衛となったんだ。ミア様には島に来た時に、助けてもらったし、恩返しのつもりで、やりがいを感じたよ。
そのうち、あたしの活動ぶりが公国中で噂になり、あたしと同じように護衛の仕事を目指す人も増えてきた。丁度、公国の通商取引も増え、護衛の仕事も増える一方だったので、新しい仲間ができて良かったよ。
気が付けば、あたしは要人護衛隊のリーダーになってた。隊員は三十人を超え、ラミア以外の種族も増えた。主な仕事は役員をはじめとする要人の護衛だけど、他国への付き添いが大きな比重を占める。主要な護衛対象は、公王様、公王妃様、テネシア様、イレーネ様、ミア様だけど、最近は通商外交官のキネサス様の護衛が多くなっている。
要人護衛隊は他国へ行く機会が多いため、副次的に他国の情報収集という任務もできてきた。以前は警備隊に含まれていたけど、今は独立した組織として存在感を増しているので、日々、やりがいを感じてる。隊員はみな体術や武器の扱いに慣れているけど、あたしの蛇眼のように、防御・攻撃のスキルを持った者が多い。
また特別な防御・攻撃のスキルがなくても、それを補完して余りあるぐらい、公王様から特別なスキルを使えるアイテムを貸与してもらえるのが有難い。みんなには【人間形態化】スキルの指輪を貸与されてるけど、それ以外に、【結界】【身体硬化】【隠蔽】スキルの指輪、【念話】のイヤーカフスが貸与されてる。こんな物を作り出せる公王様は本当に凄い方だ。
さらにリーダーである私の指輪には【転移】スキルまで入ってる。これで他の隊員のところへいつでもいけるし、公王様へいつでも直接報告できる。
ギルフォード公国はギルフォード商会とも緊密に連携してるので、外注で商会要人の護衛も受け始めている。商会の販路は大陸全土に及ぶので、あたしたちの活動範囲は広がる一方だ。今のあたしの公国での肩書は要人護衛隊長で、なんと役員会に名を連ねるまでになった。数年前は想像もつかなかったよ。公王様には一生、忠義を尽くすつもりだ。
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