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第1431話 ナンドとローレル2

 関連回  

 第1389話 叙爵式

 第1392話 ナンドとローレル

 夕方、店巡りを終え、城(聖王城)に戻り、居間のソファでひと休み中、僕の前には同行したナンドとローレルがいる。転移スキルで国境を越え、あちこち回り、かなりの量を買い物したが、どの店も良店ばかりだった。


 一か所の大きな繁盛店でドカッと一気に買うより、複数箇所の小さな零細店で、小分けして買った方が救済度(善行度)が高くなる。買うための労を増すが、徳積みになると思えば、どうということはない。


 事前に鑑定スキルを使い、良い店なのは判っていたが、スキルだけに依存したくなかったので、自分の目で確かめさせてもらった。購入した商品はあちこちに配ろう。身内以外に、教会、児童養護施設、学校とかね。


 さて、ここからが本題だ。今回の目的はもう一つある。

 それは、二人の仲を確認し、二人の仲をより深めること。

 二人ともほっとしており、このタイミングならいけそうだな。


「ところで二人とも、将来はどうしたいと思っている?」

「「えっ!?」」


 いきなりで驚いたかな。だが、二人は付き合い始めてから長いし、

 お互いに好意を抱いている。ここは少しお節介を発動してもいいよね。


「一緒にいたいと思っているかな?」


 二人が目を合わせ、遠慮がちに答える。


「「……はい」」


 うん、分かっていた。

 分かっていたが、それを口に出して言うことに大きな意味がある。

 少しレクチャーするか。


「この世界には結婚という制度があるが、何の為にあると思う?」


 ローレルに視線を向けると、少し考えてから答える。


「男女間の愛を誓うためです」


「そうだね。結婚により夫婦、家族になる訳だから、愛の絆があることを、

 お互いに誓う必要がある。確かにその通りだ。ナンド君はどう思う?」


「はい、私もそのように思います。結婚により愛を誓います」


 ナンドの言葉にローレルが頷く。

 このやりとり自体が二人の仲を深めている感じだな。

 ふふ、してやったりだ。


「愛を誓う。それがもっとも大切なことだが、結婚にはもう一つ意味があるんだ。

 それは二人の仲をまわりに知らせること、公にすることだ」


 結婚に様々な形があるだろうが、堂々と公にできてこそ、というのが強くある。公にできない関係というのじゃ、ちょっとね。それだと愛人みたいになってしまう。


・配偶者 愛の絆があり、公にできる

・愛人  愛し合っているが、公にできない


「二人はそれぞれ社会的身分がある立場だから、公に示す意味は大きい」


 先日の講義(リーダーの資質)でも触れたが、社会的身分のある者は皆の注目を浴びるリーダーであり、その一挙手一投足は皆に善い面も悪い面も影響を与える。だからこそ、皆の模範となるよう行動すべきだ。


「仲のいい男女、ずっと一緒にいたい男女、好き合っている男女、そして、

 永遠の愛を誓える男女は結婚するのが、人としての王道なんだ」


 ここで間を置く。急かすことはしない。


 ・・・


「あの……」


 おっ、ナンドが口火を切ったぞ。


「私はローレル様をお慕い申していますが、私がローレル様に求婚しても

 宜しいのでしょうか?」


 その言葉を待っていた。


「もちろんだよ」

「身分差がありますが」


「そんなのは大したことじゃない。もっとも重要なのは二人の気持ちだ。

 君はローレルと結婚したいと思っているんだね?」


「はい!」


 おお、力強い返事だ。いいね。

 これで山の峠を越えたようなものだ。


「ローレルはどうだい? ナンド君と結婚してもいいと思っているかい?」


「はい!」


 よし、これもいい返事だ。


「そらなら、先ずは両家顔合わせし、婚約を交わすことだな。君達さえ良ければ、

 僕が両家に話を通しておこう」


 ここで二人が目を合わせ、小さく頷く。そして――


「「よろしくお願いします」」


 よし、うまくいった。後は両家に任せよう。


 野球においてチームがリードしている場面で最後に登板して試合を締めくくる投手をクローザーと呼ぶが、交渉事でも、最後に話をまとめ上げ、決断を促す人を同様に呼ぶことがある。クローザーがすることをクロージングと言うが、営業熱心で能力があるのも関わらず、成果が出せない人の多くは最後の場面でうまくクロージングできないからだ。


 最終的にはお客さんの判断だから、説明を尽くして、後はどうぞ、では実はダメ。お客さんは判断を恐れ逃げてしまいがちだ。優れた営業マンは判断に躊躇するお客さんの背中を押す。清水の舞台から突き落とすようにね。実際にそんなことをしたらもちろんいけないが、そういう気概が必要だ。


 クロージングは相手の運命を変え、因果を背負う行為でもある。お客さんだけでなく、自分も一緒に落ちていく覚悟(連帯責任)が必要だ。その覚悟をお客さんは感じ取り、この人なら安心できる、となり、大きな判断をしてくれるのだ。


――

――――


 自室のリクライニングチェアでくつろぎながら、

 ライナスと念話中。


(~という訳で二人の意思を確認したから、後はネイス所長と打合せして、

 両家顔合わせを頼むよ。ネイス所長には僕の方から一報を入れておく)

(父上、お手数おかけしました)


 よし、これでいい。ライナスに報告した。当然と言えば当然だが、両家とも、この件には高い関心があり、ずっと注目していたが、ここに来て、進展しない感があったので、僕が動くことになった。もちろん両家の意向を汲んだ上でね。


 ナンドとローレルは王立学園時代に知り合っているから、交流交際はそれなりの年数になる。だから、いずれ一緒になるのは分かっていたが、今回、僕が動いたのには訳がある。


 僕がメリッサと結婚する際もそうだったが、ナンドはローレルとの身分差を気にして、自分から積極的に結婚を言い出しづらいはずだと思ってね。こういうことは親にも相談しづらいし、誰に相談したらいいか分からないものだ。


 それで、その件の経験者でもある僕が出張った訳だが、

 自分で言うのもなんだが、これが最適解だろう。


 今でこそ四人の妃と仲良く暮らしているが、ここまで来るのも決して平坦ではなかった。メリッサとは身分差があったし、王家入りというプレッシャーもあった。それ以前にあの頃はこの世界に来て分かっていないことが多かったので、いろいろ勉強する必要もあった。


 それから、テネシア、イレーネとは種族差に伴う寿命差が大きな問題として立ちはだかった。そういうのを気にしないタイプもいるんだろうが、僕は気にするタイプだったからね。配偶者と人生の大部分を共に過ごしたいという気持ちが強く、また、先に結婚したメリッサの同意が必要だった。ミアとは自然の流れ、長い付き合いの責任を取ってという感じかな。でも義務感はない。好感は強かったし。先に結婚した三人の同意をもらったが、これで最後という約束をした。


 四回も体験すると結婚についてそれなりの見識を持つようになり、しばしば若い人達にアドバイスする機会が増え、その延長で、男女の仲を取り持つ役をすることが多くなった。前世でも四回結婚してる人がいたが、その分、離婚を重ねていた。僕はまったく離婚していないので、その点の自負はある。


 離婚も人生の選択肢のひとつだが、しないで済むなら、それに越したことは

 ない。離婚して卑下する必要はないが、かと言って、自慢するものでもない。


 単に結婚するだけなら難しくない。でも、それは本当の結婚とは言えない。本当の結婚とは続けるもの。それも一生という長い期間。永遠の愛を誓うのが結婚なんだから、せめて一生一緒にいるよう努めるのは当然であろう。


 離婚を否定する者ではないし、あまりに酷い相手なら離婚した方がいいだろう。離婚を通して学ぶこともある。だが、少し苦言を呈するなら、そもそも離婚するような相手と結婚したのは人を見る目がなかったからだ。どんなに相手が酷かったとしても、その相手を選んだのは自分だ。人を見る目を養わないと、同じようなことがまた起きるだろう。


 それと結婚もそうだし、離婚もそうだが、それで苦労したことを人に自慢げに話さない方がいい。本人にその気がなくても、それは不幸自慢となる。愚痴や吐き出しのつもりであっても、内容のほとんどが(元)配偶者の悪口であり、バレないつもりでも、それは(元)配偶者に以心伝心する。


 僕は結婚経験者として、これまで男女の仲を取り持つお世話をする機会が多かったが、僕はこれを『お節介』と呼んできた。もちろん文字通り本当の意味での余計なお節介ではなく、必要なお節介の範疇でね。


・僕の『お節介』   善行の範疇

・世間一般のお節介  過剰善


 例えば明らかに嫌がっているのに、無理やり贈り物をするのは、世間一般のお節介(過剰善)だろうが、相手が本当は欲しいのに、遠慮して言い出さない場合、贈り物をするなら、僕の言う『お節介』(善行)となる。


 僕は『お節介』をコモンスキルとみなしているが、

 余計なお世話(過剰善)にしないのがポイントだ。

 

 本来、自主自立が基本であり、自分を助けられるのは自分だけ。

 人は自分の足で自分の道を進まなければならない。

 そういう観点に立てば、人助けはすべて『お節介』にあたるだろう。


 じゃあ、目の前で困っている人を見ても放置していいのか? 


 そんなことは決してない。理想と現実は違う。現実問題、自分で自分を助けられない人はいるからね。そういう人を助け、自分の足で進めるようサポートするのは必要なこと。


他人(ひと)他人(ひと)、自分は自分』という言葉があるが、自分自身をしっかり持ち、まわりから悪影響を受けないという意味ならいいが、まわりの人が困っていても我関せず、我が道を行く、他人は関係ない、という意味では取ってほしくない。


 困っている人を見かけたら、迷わず手を差し伸べられる人でありたい。そう思えば、そういう人が前に現れる縁に恵まれ、手助けし、結果、善行を積むことができる。だが、自分は人助けしないと思えば、そういう人が前に現れなくなり、結果、善行を積めなくなるだろう。


 善行を積むには普段の心掛けが大事だ。助けたいという周波数を発したら、助けを求める人が寄ってくる。助けを求める人は助けたい気持ちのある人と、その気持ちがない人なら、前者を選ぶ。相手を選ぶのは、助ける側だけでなく、助けられる側もだ。ご縁とはそういうもの。


 与える側、もらう側

 騙す側、騙される側

 虐める側、虐められる側


 見えない次元で互いに選びあっているのだろう。


 そうそう、結婚式では永遠の愛を誓いあうが、実際は一生の愛だ。はっきり言う人はあまりいないだろうが、死んだ後までは誓っていない人が多いことだろう。そもそも死んだ後、どうなるか分からないし、分からないことは誓いようがない。


 そういう意味では、前世の仏前式の結婚は重いものがある。何しろ、来世一緒になることも誓うからね。だから、仏前式の結婚をあげるカップルは相当結びつきが強いと推察する。推察するが、本当に来世一緒になりたかったら、ともに学び、ともに成長し、ともに周波数を上げ、ともに同じ世界(高級霊界)を目指さなくてはいけない。これは中々大変なことだが、チャンスは誰にでもある。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、ブックマーク、評価をして頂けると大変有難いです。

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