第12話 開店初日のトラブル
「おいおい、ここは何の店なんだ~!」
「誰の許可を取って店をやってるんだ~!」
「こんな店、ぶっ壊すか~~!」
いかにもゴロツキのような五人の男が店先で悪態をついている。
これではお客さんが入ってこれないじゃないか。
「なんだ、お前ら、商売の邪魔だ!」
テネシアが店から飛び出し、リーダーの男にすごむ。男達は見たところ大した実力もなく、テネシアなら瞬殺する勢いだろう。でもここは街中だ。トラブルは良くない。どうしたものか……テネシアが剣の柄に手をかけたところで自分とイレーネも飛び出した。
「店先でトラブルは困ります。どうしても用があるなら閉店後に来てください」
「なんだとこの野郎!」
「落ち着いて下さい」
「ああ~ん! 誰に向かって口を利いてる。おお~ん」
やはりゴロツキだ。ねちねち商売の邪魔をして相手が譲歩するのを狙っているのだろう。手を出しそうで、手を出してこないから、余計に狡猾だ。店の裏に呼んでボコボコにするか……と思った時、メラルとバーモが出てきた。
「あの、この店がイムル・アガッサ様と懇意にしてるの知った上での狼藉でしょうか?」
「え?イムル・アガッサ……あの大商人のか?」
「そうです。いいんですか? イムル様を敵に回して」
「……」
「いいんですか?」
「……いや、悪かったな。そんなつもりじゃなかった」
イムルの名をだした途端、男達はすごすごと退散してしまった。やはりイムルは相当な有力者だったんだな。とりあえずテネシアが不完全燃焼でカッカしてるから、店裏で剣の素振りでもしてきてもらおう。
イレーネが心配して寄ってくる。
「アレス様、今回はうまく対処できましたが、相手が暴れた場合はどうしましょうか?」
「裏に呼んで痛い目にあわすのもいいが、ああいう輩は仲間がいてお礼参りするからな……」
「一番いいのは拘束して衛兵に突きだすことだろう」
「拘束ですね。テネシアさんとも考えてみます」
「うん、頼むよ。それと衛兵にも報告しとくよ」
「それがいいです」
衛兵の詰め所に行ったら、歩いて20分くらいだった。う~ん、緊急の場合は間に合いそうもないな。とりあえず事後報告だけはした。開店早々の店ではよくあることで、落ち着けば大丈夫だろうとのことだった。
一応、テネシアとイレーネの町での仕事は店の護衛になるが、それ以外にも一部商品の販売も手伝ってもらっている。一部商品とは店の奥に置いてある武器だ。武器は高額商品であり、店の目玉商品でもある。ただ購入層が冒険者や荒くれ者が多そうなので、二人にまかせてみた。最初は高額な剣を目立つ場所にたくさん置いたが、場所を取るだけで意味がないことが分かり、途中から、安価な小型ナイフを中心に置いたところ、いきなり売れ出したから笑える。小型ナイフは家庭用に広く利用できるので、需要があったようだ。
同時に高額な剣も壁に数本飾るようにした。見栄えがいいし、そのうち金持ちが買うかもしれない。買わないまでも、みんなチラチラ見てるので関心はあるのだろう。
意外だったのは山の薬草や木の実、こんな物を買う人がいるのかと思ったが、少しずつ売れている。値段を安くしたからかもしれないが、もともとタダ同然みたいな品なので、売れれば儲けものだ。それとテネシア、イレーネは故郷の里で読み書き計算を教わっていたことが分かった。簡単な計算なら暗算してたので、地頭は悪くないな。
閉店後、皆と軽くミーティングする。
「みなさんお疲れ様でした。ちょっとトラブルがありましたが、順調でした」
「あのヤロー、今度来たら、ただじゃ置かないからな!」
テネシアは不完全燃焼だったもんな。
「でもイムルさんの名前を出すとは良い手でした」
イレーネもそう思ったか。それにメラルが応じる。
「ありがとうございます。この町ではあの方に歯向かう人はいないです」
これに僕も反応する。
「そうなのか」
「ええ、王室や貴族とも取引してますから」
「それは凄いな」
「そしてあの方も貴族であり、子爵位を授かっています」
「そんな偉い方だったのか!」
「でも実直な方で偉ぶることもありません。本当にいいお方です」
長い一日だった。さて、山の家に帰るか。
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