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第1話 異世界へ

 本日から連載開始です。どうぞよろしくお願いします。

「はぁ……今日も何もない一日だったな……」


 車椅子をこぎながら、いつもの一言が出てしまった。もうこの生活になって、どれぐらい経つだろうか……大学を卒業し、社会人になって最初の年の暮れに交通事故にあって以来、僕はほとんど家の中で生活している。まるで籠の鳥だ……


「こんなはずじゃなかった……」


 社会人になったら、いろんな場所へ行って、いろんな人に出会って、いろんな

 経験がしたかったな……この先どうなるんだろう……

 大きなため息が出てしまう。 



 世界中を旅行したかった。


 いろいろ見たり聞いたり体験したかった。


 会社で活躍して出世したり、経営に携わったり。


 未知の場所へ行って冒険みたいのも面白いかもな。


 正義のヒーローみたいのもかっこいい。


 無双の力で悪党退治をしたりね。


 世界をまたにかけて商売をしたり、新しいものつくったり。




 それに……信頼できる仲間も欲しかった。


 結婚もしたかったし、家庭も持ちたかった。


 子供がいたら、きっと可愛かっただろうな。


 そして……人の役に立ちたかった。



 全部(かな)わぬ夢だな……




 しかし、心ここにあらずで、ボーッとしてたのが、いけなかったんだろう。


 目の前に階段が迫っているのに気付くのが遅れた。



 そう言えば、ここは二階だった!


 たっ、助けて! 体がうまく動かない!


 あれっ?なんか、変な感じ……


 スローモーションのように落下していく……


 あっ、ダメだ! このままだと!



「嫌だ―――! 死にたくない――――――!」



 薄れゆく意識で思った。


 これがたぶん命が消える「死」の感覚なのだろう。


 でも、自分は死にたくない! 生き続けたい!


 その葛藤の中、意識を失った。



――――

――――――



 どれぐらい経ったのだろうか……


 目を覚ますと、あたりは光り輝いており、とっさに天国なのかと思った。


「確か……階段から落ちて……死んだのかな……」


 そう思うと同時に、上から視線を感じ、見上げると、

 白髭のおじいさんが立っていた。


 神様だろうか?


「……私は死んだのですか?」


「肉体はその通りだ。でも魂はそのままの状態で存在しておる」


「え? 死んだんじゃないんですか?」


「本来なら魂が浄化されて、記憶も遠のいていくのが普通なんじゃが、そなたの場合、まだ生きたい。まだやりたいことがあるという思いが強かったので、ここにいるのじゃ」


「なので、その強い思いに応えて、再び新たな世界で人生をやり直すことが

 可能じゃ」


「本当ですか!!」


「しかも次回は健康な体で思うように生きられるから安心しなさい」


「ええ! それなら最高です!」


「ただし次の世界は前の世界と違って、剣や魔法のファンタジーのような世界になるから、生き残るために『力』が重要だ。そなたにはいくつか魔法スキルを授けるとしよう」


「ま、魔法ですか!!!」


「体と記憶はそのまま。ただし体は健康にしておくし、多少、新しい世界に合わせよう。最初は生活しやすいように初期の必需品も用意しておく。そこで環境に慣れてから、好きに生きるが良い」


「どんな魔法が使えるのですか?」


「【収納】と【転移】のスキルを最初から使えるようにするが、使用に応じてレベルがあがり、ある段階に達すると新たな魔法が増えていく。主に物作りに役立つスキルじゃ」


「ありがとうございます!」


「前回の人生は上から見ていたが、本当に辛い思いをしたようだな……。

 魔法スキルが強化されるよう支援するので、思い通り生きなさい」


 その言葉を最後に意識が遠くなった。


 よく分からないけど、自分は再生するのだろうか?



――――

――――――



 目を覚ますとベッドの中におり、まわりを見渡すと、

 平屋の山小屋のようだった。


「ここは、神様が用意してくれた家だろうか……」


 起きて、家の中と周辺を見て回った。どうやら食料、衣服、道具等、当面の生活に必要なものが一通りあるようだ。机の上には袋があって、ご丁寧にこの世界のコインも入っていた。


 ああ、そうだ、鏡を見よう。


「おお! 少し洋風にかっこ良くなっている! 二十代前半ぐらいかな? 

 それに顔色が凄くいい。体も軽いし、何より歩けるので最高だ!」


 これも、先ほどの神様(?)のお蔭かな?


「しばらくはこのあたりを調べるのと、生きるのに必要であろう魔法の訓練を

 しないとな」



 とにかく今日から人生を思いっきり楽しむぞ!



 しかし、健康な状態というのは本当に有難いな。体が自由に動くというのはそれだけで幸せだ。ここがどんな所かよく分からないけど、感謝と幸せの気持ちが大き過ぎて、不思議と不安が無い。



 なんだろう? この内側から湧き上がる活力は?



 以前、何もできない自分の無力感に(さいな)まれていたが、今は大抵のことができそうな気さえする。思えば僕は前の世界ではやりたいことが多すぎて、いつも空想していたっけ。それが障害を持ってからはさらに拍車がかかった。何もできない自分には空想だけが大きな楽しみだった。



 自分は空想の力だけは人に負けない!



 夢、イメージ、空想、前の世界ではあまり役に立たなかったけど、この世界で少しでも役に立てばいいな。今は楽しい気分でいっぱいだけど、この世界に来たんだから、この世界のことを一から学ばないとな。できることからやっていこう。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、ブックマーク、評価をして頂けると大変有難いです。

 ★書籍化作品情報サイトのリンクを下記に張りました。

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