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【受賞しました!】何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する  作者: やきいもほくほく
2章 侵食

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43.崩落


自分を犠牲にして国が結界を張ろうとしている事を知り焦っていた所、サラが現れて立場を奪われ、味方も居らず、頼りのカーティスにも見放されて、自分の身代わりにすることも今のところ出来ていない。


鈍色の聖女としての記憶をなくして辺境の村のシスターとして振る舞っている為、成す術はない。

聖女である事すら否定しているのも大きいだろう。


これも念入りに何パターンも計画を考えておいたおかげだ。

純白の聖女としての下らないプライドにしがみついていたアンジェリカは簡単に罠に落ちた。


自分が下に見られる事が許せないのだろう。

貴族ではない為、一生理解出来そうにない。


不満が溢れ出して感情のコントロールを失ったアンジェリカの暴走は止まらない。

やはり徐々に居場所が無くなった事が功を奏したようだ。


面倒ではあったが、この最低な男に触れられなくて良かったと心から思っていた時だった。



ーーーーバキッ!



アンジェリカがカーティスを殴り飛ばす。


ここまで怒りを爆発させるアンジェリカに、さすがに驚いていた。


以前のアンジェリカは強かで蛇のように隙を狙っては懐の中に入り込んで食らっていくタイプだったのに、今では苛立ちとストレスからか、この国の王太子を殴り飛ばしている。


カーティスに対する暴言と暴力は止まらない。

まるで決壊したダムのように溢れていく。


(まさか……いや、今は力は使えない筈なのに)


自分の考えを消し去るように小さく首を振る。

けれど、こんな事が出来るのは知っている人物の中では、たった一人だけだ。


馬乗りになりながら怒りに身を任せて殴っているアンジェリカ。

「助けてくれ…!」という悲鳴を聞きながら、口元を押さえて怯えるふりをする。


こんな二人にずっと踊らされていたのだと思うと本当に嫌になる。

簡単に騙されて信じ込んで、疑う事すらしなかった。

こうなってしまった今では、もう過去を振り返ったところでどうにもならない。

昔の思い出や後悔など邪魔にしかならない。


(はっ………馬鹿馬鹿しい)


カーティスの顔が引っ掻き傷でボロボロになったことを確認する。

最高の景色を目に焼き付けながら、その場で助ける事はせずに人を呼びに行く。


カーティスの助けを求める声とアンジェリカの怒りに震える金切り声が廊下に響いていた。


スキップしたい気持ちを押さえつけて、瞳に涙を溜めて走り出す。

手のひらでクルクルと踊る人形のように楽しませてくれる。


(想像以上だわ…!まさか二人で揉み合う姿を見れるなんて)


そして焦ったような声を出して、近くにいた騎士に声を掛けた。



「誰か…っ!誰かいませんか!!」


「……サラ様!?」


「ーーッ助けて下さい!」


「っ、そんなに慌ててどうされたのですか!?」


「カーティス殿下と純白の聖女アンジェリカ様が揉みあっているのです…!私には止められませんでした!どうか助けてくださいっ」


「殿下はどちらに!?」


「その突き当たりの廊下を曲がった所です…!」



そう言うと、騎士は慌てた様子で駆け抜けていく。


(さてと……なるべく多くの人にこの事を伝えなくちゃ)


焦った表情を貼り付けながら城中を駆け回った。

その辺にいた侍女や侍従に声を掛けて、神官や国王、宰相の元にも報告するように頼む。


口論とビンタ程度を想像していたのに、まさかカーティスに問答無用で殴り掛かるとは思わなかった。


(一応、協力しているつもりなのかしら…)


多くの人がカーティスを殴るアンジェリカの姿を目撃した。

ライナス王国の騎士、数人によってやっとカーティスから引き剥がされた。


アンジェリカは何かを叫びながら騎士に連れて行かれてしまった。

この後の処遇がどうなるのか……それでまた動き方もまた変わるだろう。

暴れながら髪を振り乱すアンジェリカを見送っていた時だった。



「痛いっ、いたい……!」



カーティスは顔を押さえて涙を流している。

綺麗な顔がボコボコになっている。

その様子を冷めた目で見ていた。


(何て無様なの……ご自慢の顔が台無しね)


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