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【受賞しました!】何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する  作者: やきいもほくほく
2章 侵食

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34.不満



ドアを閉めてから耳を澄ませてカーティスが去るのを待っていた。

カーティスの足音が遠のいていくのを聞き届けると重い溜息を吐いた。


ヨムドイトを思いきり睨みつける。



「ヨム……!」


「……」


「余計な事をしたらバレてしまうわよ?」


「……ふん」


「王太子であるカーティスに手を出すなんて…普通なら牢屋行きよ」


「そんなのは知らぬ。あのクソが我のサラに触れようとしたからだ。忌々しい豚共が…!」


「魔王様、抑えてください!」



プラインがヨムドイトを落ち着かせるように前に出る。

ヨムドイトは気が収まらないのか、苛々した様子を見せる。



「プライン、貴方のお陰よ……ありがとう」


「いえ、サラ様」



まだ作戦は始まったばかりだというのに、この調子だと作戦が上手く進むからすら危うい。

頭を抱えるサラとは逆でヨムドイトは、ひたすら文句を吐き出していた。

どうやら先程国王に頭を下げたことや、カーティスが近付いてきたことが気に食わないようだ。



「今すぐ全てを壊せばいいのだ…!」


「いい加減にして!邪魔するなら国に帰りなさいよ」


「我が国に帰れば困るのはお前の方だろう?」


「何ですって…?」


「ま、魔王様…!サラ様っ!今は喧嘩をしてる場合ではないはずです!!落ち着いて下さいっ」


「……」


「……」



プラインが必死にヨムドイトを抑えて、此方を見ながら訴えかける。

ヨムドイトは小さく舌打ちをして拗ねたように顔を背けた。

ギロリとヨムドイトを睨みつけた後、持ってきた荷物を開く。


(本当に面倒くさい…先が思いやられるわ)


ヨムドイトの戯言にいちいち付き合っていたら身がもたない。

自らを落ち着かせるように息を吐き出した。


我儘を上手く躱しながら作戦を進めていくしかないのだ。

ヨムドイトの言う通り、力を借りなければ"最後の仕上げ"が出来ない。


折角、思惑通りに上手くライナス王国に入り込めたのだ。

チャンスを無下にはしたくはない。

それに何だかんだ言っていても、闇の宝玉を取り戻すまでは大人しくしているだろう。



「着替えるわ」


「えっ…!?」


「部屋を一緒にしてもらったの。この方が動きやすいでしょう?」


「で、でも…!」


「私は気にならないから、貴方達も好きに過ごして」



すぐさま修道服を脱ごうと服に手を掛ける。

女神を崇拝するこの服を身に纏っている事が不快でならないのだ。


着替えている間、ヨムドイトの瞳を両手で塞ぎながら、プラインが顔を全力で背けていた。



「サラ様、終わったら声掛けてくださいね」


「……終わったわ」


「別に着替えを見るくらい問題ないだろう?サラも良いと言っている」


「だ、だめですよ…!」


「ふん、煩わしい」



そんな二人の会話を聞き流しながら考えていた。


(成功して良かった…)


まずは一安心といった所だろう。

どうにかしてヨムドイトをライナス王国の大結界の中に連れて来ることができた。


本当は一人でライナス王国に忍び込み、闇の宝玉を取り戻すつもりだった。

そして宝玉を取り出した後、ヨムドイトには外からライナス王国を崩してもらおうと。


けれどヨムドイトは話を聞いて首を横に振った。


万が一、闇の宝玉を取り出す事に失敗した場合は、ヨムドイトが自ら動けるようにしたいと。

魔族達やヨムドイトにとって今回を逃せばチャンスはない。

失敗は許されないのだという。

それに身動きが取れなくなった時などを危惧して、協力者がいた方が良いと言ったのだ。


確かにヨムドイトの言うことも一理あると、渋々頷いたのだった。

それからプラインに協力してもらいつつ、ヨムドイトをライナス王国に連れて行く方法をずっと考えていた。



「サラ、もうすぐ足りなくなりそうだ」


「思ったよりも消費が早いわね」


「大結界の中だからな。致し方ない」


「魔王様、薬の影響は如何ですか?」


「少し痺れるが問題ない。こんな窮屈な生活を大結界を張り直す時まで我慢せねばならぬとは…先が思いやられる」


「宝玉を確実に取り戻す為よ、我慢して」


「はいはい、分かっているから安心しろ」


「………」



羽織っていた黒い布を脱ぎ捨てると、子供の姿のヨムドイトが現れる。

プラインはその布を拾い上げて丁寧に畳む。


ヨムドイトの魔王としての力は極限まで抑えられており、初めて会った時のような子供の姿である。


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