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【受賞しました!】何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する  作者: やきいもほくほく
2章 侵食

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29.アンジェリカside


「こんな不味いもの、食べられないって言ってんのよ」


「…し、失礼致しました」


「違うものを用意して!今すぐよッ」


「それは…!」


「チッ…ならカーティスを呼んで頂戴!!!」


「アンジェリカ様、カーティス殿下はお忙しく……ッ」



ーーーガチャンッ!!



投げた食器が壁に当たり砕け散る。

侍女達が小さく悲鳴をあげた。

しかし、苛立ちは治らない。


(聖女なんて、もうまっぴらよ…!!聖女のための修行、勉強、お清め……馬鹿みたいな作業を毎日毎日下らないッ!!)


聖女としての役割は、ある程度果たしているはずなのに、最近は態度が悪い、我儘だと陰口まで叩かれる始末だ。


初めは耐えていたが、聖女の仕事は本当に面倒くさい作業ばかりだ。


人に親切にして、笑顔を絶やさずに、慈愛の心を持ち民に接する。

教会に挨拶へ行き、皆の前で女神に祈りを捧げる。

我慢していたが、最近はそんな作業が退屈で面倒で息が詰まりそうだった。


弱い者に手を差し伸べて、優しく声を掛けながら聖女の力で怪我や病を治す……聖女の力はそんな下民の為に使うものでは無い筈だ。


(何が聖女よ…ッ!!こんなの奴隷と一緒じゃない)



最近では、あんなに愛を囁いてくれていたはずのカーティスも顔を出さなくなった。


『大結界を張った後は私と結婚してくれ』

『アンジェリカを一生大切にする』

『アンジェリカはこの世界で一番美しい』


甘い言葉を毎日飽きるほど言っていたのに。


侍女も初めの頃より、半分以上も減ってしまった。

初めは喜んで奉仕していたくせに、最近では少し文句を言うだけで嫌な顔をする。

それでも許してあげていたのに、大半は自ら望んで去って行った。


(本当、頭悪い奴らばっかり!!純白の聖女の世話が出来るのに、何が不満なのよ)


残った侍女はライナス女神の信者であり、説教ばかりする口煩い侍女だけだった。


聖女はこうあるべき。

聖女たるものは。

国の為に、民のために、女神の為に。


もう、ウンザリだった。


(……苛々するッ!)


上手くいくはずだった城での生活は、知らず知らずのうちに形を変えて崩れていった。






イライラして眠れずに、気晴らしにでもなればと城の中を歩いていた。


すると扉の奥に光が見えて立ち止まった。

国王と宰相が酒を酌み交わしながら話している声が聞こえて、そっと耳を澄ませた。



「陛下…あれが本当に聖女なのですか?」


「分からぬ……あんな性根が捻じ曲がった聖女など初めて見たからな」


「どうされますか?」



(……なんですって!?)


文句を言おうと扉に手を掛けた時だった。



「異世界人の聖女が居ない今、ライナス王国の聖女を利用するしかないだろうな」


「次の異世界人を召喚出来るまでの繋ぎですか…?」


「……そうするしかあるまい」


「そうですな。それしかありませんな」


「はぁ…もう暫くの辛抱だ。皆にあの女の世話を頑張るように伝えてくれ」


「本当に扱い辛くて敵いませんな。何故、女神ライナスはあんな女を選んだのでしょうか」


「もう少し従順で素直な娘なら良かったものを……侯爵には不慮の事故とでも言って納得させればいい。あの我儘な馬鹿女には役に立って貰わねば困る」


「しかし大結界を張るのに、あの女一人で大丈夫ですか?」


「幸いに聖女の力には程々に恵まれているから大丈夫だろう。聖女の間に入れてしまえば全て丸く収まる」



(聖女の間……!大結界を張る聖女しか入れないという、あの部屋の事!?)



「次の異世界人の聖女がくるまで大結界を保てればいいからな」


「そうですね」


「さっさと済ませて、消えてほしいのぅ」


「……本当ですよ」



(まさか、わたくしを犠牲にして大結界を張るつもりなの!?)


掴んでいた扉の取っ手からゆっくりと手を離す。


震える足で静かに部屋に戻った。

ベッドに潜り込み、自分の体を抱きしめた。


(どうにかしなくちゃ…!どうにかして逃げなくちゃいけないッ!!お父様に助けを求めたいけれど手紙の内容も厳しくチェックされているし……っ、まさか!?)


国王達の行動を思い返してみると、確かに不自然な点も多い。

何故こんなに贅沢な暮らしをさせながら、王城に閉じ込めていくのか。

何故いつも周りには人が居るのか。


(……わたくしを儀式まで逃がさないようにするためよ!)


きっと儀式が迫った今は、言い訳をして逃げる事も不可能。

今まで我儘放題をしていた為に、味方は王城に一人もいない。


(他に身代わりも……っ、居るじゃない!)


身代わりが一人だけ存在するではないか。

異世界から召喚された日に行方不明になったサラも聖女だ。


(あの異世界から召喚された女!!サラさえいれば……わたくしは、わたくしは助かるかもしれない)


捜索隊を出して国中を探しても、一向にサラの情報は掴めない。

未だに何処にいるかは分からない。

もしかしたら、もう死んでいるかもしれない。

けれど、サラに賭けるしか生き残る道はない。


(意地でもサラを見つけなくちゃ…!大結界を張るまで、あと一か月しかないのに)


唇を噛み締める。


(……絶対に逃げきってみせる)


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